来季の世界ラリー選手権(WRC)には、新たな車両規則に従った新型マシンが登場するため、現行のWRカーは現役を退くこととなる。しかし、関係者からは第1線を離れるWRカーを有効活用するべきとの声も挙がっており、FIAは今月中にもマシンの扱いについて結論を出すようだ。
エンジン出力の引き上げとワイドボディ化、センターディファレンシャルの復活などにより、17年型WRカーは現行型と比べて圧倒的な速さを発揮するとみられている。
しかし、来季も現行型マシンのホモロゲートは有効となっており、ルール上は選手権に参戦することが可能だ。
マニュファクチャラーとプライベーターは、この現行型WRカーがどう扱われるかについて強い関心を示しているが、WRCマネージャーのヤルモ・マホネンは性能差の大きいマシンを混走させることに懸念を示している。
また、WRカーの直下にはWRC2で多数を占めているR5規定マシンが存在することを挙げ、マホネンは「R5と17年型WRカーの間を埋めるクラスが必要だろうか」と疑問を呈している。
「R5規定マシンと16年型マシンを混走させるのも間違いだろう。特にR5規定マシンの市場は拡大していて、選択肢も豊富な状況だ」
「旧型マシンをどう扱うか、マニュファクチャラーと協議を進めている。いくつか意見のフィードバックを求めており、今月末までにはなんらかの提案ができるはずだ」
また、マホネンは「我々がすでに(16年型マシンを)選手権から除外すると決断したとの噂を耳にした。これは間違った情報だ」と、決定が下されていないことを強調している。
「シトロエンは数台のDS3 WRCをPHスポールへ売却している。またヒュンダイ、そしてもちろんMスポーツも、現行規定のマシンを数台売却している。しかし、彼らはR5規定のマシンも製造しているチームだよ」
現在、WRCの最上位クラスへエントリーしているプライベーターは、R5規定マシンへ乗り換えることには否定的だ。しかし、17年型WRカーを製造するマニュファクチャラーの生産能力を考慮すると、17年前半にプライベーターへ17年型WRカーを供給することは難しいとみられている。
Mスポーツ代表のマルコム・ウィルソンはR5規定マシンと17年型WRカーのギャップを埋めるには、現行型WRカーがふさわしいとの考えを示した。
「(R5規定マシンと17年型WRカーの性能には)大きな溝がある」とウィルソン。
「R5規定マシンで17年型WRカーのスピードに追いつくのは、かなり難しいはずだ。このギャップを埋めるために、現行型WRカーを中心とした新たなクラスを作るべき、というのが私の考えだよ」
「ただ、現行のWRカーの寿命はあまり長くない。あくまで1年か2年の暫定的な措置とするべきだろうね。各チームは来季への開発へ集中するために、現行マシンの製造を終了している。何年も戦えるだけの“在庫”がないんだ」
加えて、ウィルソンは商業的、スポーツ的観点からもカスタマーチームを選手権から除外するという考えは間違っていると指摘している。
「FIAが新型マシンを操るドライバーを制限したいと望んでいることは理解できる。ただ、まだ戦える状態のマシンがあるにもかかわらず、新たな参加者を受け入れないというのは恥ずべきことだ」