いまや私たちの生活に欠かせないスマートフォン。しかしあまりにも没頭することで、日常生活に支障をきたす「スマホ依存」も問題視されています。とくに若者の場合、勉強時間の不足やコミュニケーション能力の低下などが懸念されるところです。
そんな中、5月2日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で、スマホ依存を防ぐ試みとして、スマホなしの旅行に大学生が参加する様子が紹介されました。「スマホ断ちで2日間」、学生たちは耐えられるのでしょうか?(文:篠原みつき)
「ググりたい」と言いながらオリエンテーリング楽しむ
日本大学生産工学部(千葉県・習志野市)の南澤宏明教授は、学生たちの様子から「直接話さず、近くにいるのにLINEなどを使ってしまう学生もいる。コミュニケーションが苦手な学生が増えている」と危機感を語ります。
そこで大学は対策として先月16日、マネンジメント工学科の新入生200人を対象に1泊2日で「携帯OFFの旅」を実施しました。JTBが提案する「圏外旅行」という新商品の実験も兼ねた、初の取り組みとのこと。
参加したアキラさん(18歳)は、「(スマホは)朝起きてから寝るまでずっと触っている」と語り、事前に行った調査で依存度が「重度」の次の「中等症」だと診断されていました。普段から常にツイッターなどをチェックしており、この診断も当然と納得しています。
そんな彼がスマホの電源オフのまま、マザー牧場でのオリエンテーリングに挑戦しました。5人1組で紙の地図をにらみながら、初対面同士が協力しあいます。学生たちは「ググりたい」と本音をこぼしながら、和気あいあいと目的地を目指しました。夕食の時間には近くに座る者同士で会話を楽しんでいる様子です。
旅の終わりには、皆待ちかねたように一斉に携帯の電源を入れていましたが、アキラさんは「人との会話が増えたのが一番(大きい)。コミュニケーションって大事だし、携帯を使う機会を減らして、これから人との会話を増やしていこうと思いました」と感想を話します。
1人だけ「自分は使わない」では済まない難しさ
ちょっと優等生的な答えという印象はありましたが、目の前の相手との会話の大切さに気付いてくれたなら、大学側の意図はある程度達せられたといえるでしょう。
若者たちのスマホとの向き合い方について、兵庫県立大学環境人間学部の竹内和雄准教授は「賢く使って、正しく怖がる」と提言していました。
「これからの社会をスマホなしで生きていくのは、子どもたちも無理だし、大人も無理。利活用と危険の両方の側面を言っていかなくてはいけない」
スマホは便利な道具であると共に、コミュニケーションツールでもあるので、一部の若者だけに「止めろ」と言っても意味がないという難しさがあります。今回は、1人きりになる隙もない団体旅行で「皆が一斉に使わない」状態がポイントだったのかもしれません。
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