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The Winking Owl、バンドの個性を生み出すものとは?「Luizaが歌うことでサウンドが完成する」

2016年05月10日 22:01  リアルサウンド

リアルサウンド

The Winking Owl

 2015年11月にシングル『Open Up My Heart』でメジャーデビューを果たした男女4人組バンド、The Winking Owlがメジャー1stアルバム『BLOOMING』を完成させた。ルーマニアと日本のハーフという紅一点ボーカリストLuizaと、『Warped Tour』出演などアメリカでの音楽活動経験を持つギタリストYomaを中心に結成された彼らは、欧米のエモ/ポストハードコアの影響下にある洗練されたサウンドと、英詞と日本語詞を織り交ぜた親しみやすいボーカルが魅力で、昨年から急速に知名度を高めている。そんななか放たれる今作はそのタイトル通り、現在進行形で進化を続けるバンドの「今」が凝縮された、名刺代わりの1枚に仕上がった。リアルサウンド初登場となる今回のインタビューではバンド結成から「いちファンからメンバー」へと転身したユニークな経歴、このバンドならではの個性、そしてアルバム『BLOOMING』に込めた思いまで、じっくり話を聞いた。(西廣智一)


(関連:女性Vo.エモーショナル・ロックの新機軸 The Winking Owlの音楽的個性と可能性を読む


■「出会いはエヴァネッセンスのコピーバンド」(Luiza)


──まず最初にThe Winking Owlはどのようにして結成され、現在のメンバーへとたどり着いたのか、教えていただけますか?


Luiza(Vo):もともとYomaさんと私は地元が一緒(群馬県高崎市)で、高校も一緒だったんです。で、高校時代にYomaさんが部長をやっていた軽音部に私が入って。年が2つ離れてるので、一緒だったのは本当に短い期間だったんですけど、そこでお互いに好きだったエヴァネッセンスのコピーバンドにYomaさんから誘ってもらって、それをきっかけに意気投合しました。


Yoma(G):当時僕は洋楽ロックが好きだったから、海外で本場のロックを学びたいと思うようになって。高校卒業から1年後にアメリカ留学したんです。アメリカでは、ハリウッドにある音楽学校で3年間勉強したりバンド活動をしたりしてたんですけど、帰国してからも現地でやっていたような女性ボーカルのエモ系バンドをやりたいなと思って。最初はネットを通じてメンバー募集してみたんですけど、そういえば身近にLuizaといういいボーカルがいたなと思い出して、高校卒業後は特に連絡は取ってなかったんですけど、ぜひ誘ってみようと思って声をかけました。


Luiza:私も高校卒業後、音楽の専門学校に行ったんですけど、「自分は歌に向いてないんじゃないか?」と挫折して半年で辞めてしまったんです。その後しばらく仕事をしてたんですけど、それでも「やっぱり歌の道を諦めきれない」と思ってもう一度東京の学校に進学して。ちょうどその頃にYomaさんが声をかけてくれて、「やってみようかな?」という軽い気持ちで引き受けたんです(笑)。それまで軽音部でコピーバンドの経験はあったけど、オリジナル曲による本格的なバンド活動は実はThe Winking Owlが初めてだったんですよ。


──そうだったんですね。Ranmaluさんはどういう経緯でバンドに加わったんですか?


Ranmalu(B):僕の地元は群馬寄りの埼玉で、学生時代は地元のライブハウスでバンド活動をしていて。The Winking Owlのことはいちファンとして観てたんです。で、たまたまThe Winking Owlの前任ベーシストが抜けることになったとき、自分がやってたバンドも解散してしまって。もともと僕はギタリストだったんですけど、ちょうど遊びでやってたバンドでベースを弾き始めた頃で、そのタイミングでYomaさんから「サポートでベース弾いてみない?」って声をかけてもらったのがきっかけです。


──そして最後にKenTさんが加わると。


KenT(Dr):僕は中学、高校といろんなバンドでサポートとしてドラムを叩いていて、パーマネントで参加するバンドはなかったんです。僕もThe Winking Owlはただのファンとしてライブを観ていて、中3ぐらいの頃にLuizaさんやYomaさんに話しかけたことがあったんですけど、Luizaさんは覚えてないみたいで(笑)。


Luiza:まったく覚えてない(笑)。


KenT:そんな縁もあって、昨年9月に正式加入させてもらって。初めてガッツリやれるバンドができた感じです。


──YomaさんとLuizaさんの出会いがThe Winking Owl結成のきっかけになるわけですが、RanmaluさんやKenTさんといったバンドのファンが後にメンバーとして加わるのはとてもユニークですよね。


Ranmalu:確かにそうですよね(笑)。僕もKenTももともとバンド活動をやっていたのが大きいとは思うけど……カッコ良く言うと、やっぱりThe Winking Owlの音楽に引き寄せられたのが一番大きいですよね。


KenT:逆にファンすぎて「次の新曲、どんなのだろう?」とか、まだファンからメンバーへのモードが切り替えきれてないこともたまにあって。そういうときは、スタッフから「もうちょっとメンバーとして責任感を持ってください!」って言われます(笑)。


──ちなみに皆さん、どういった音楽に影響を受けているんですか?


Luiza:私は小さい頃から家でいろんな流れていたのをきっかけに、洋楽のポップスに興味を持つようになって。中学時代はバックストリート・ボーイズやブリトニー・スピアーズが好きだったんですけど、同時に宇多田ヒカルさんやゲームの『ファイナルファンタジー』シリーズのサウンドトラックもよく聴いてました。


Yoma:僕は小6のときに父親の影響でギターを弾き始めて、その頃はディープ・パープルとかレッド・ツェッペリンとか70年代のロックをコピーしてました。中学に入るとより激しい音楽を求めるようになって、メタリカとか海外のヘヴィメタルを聴き漁って。高校の頃になるとロスト・プロフェッツとかラウド、エモ系のバンドも好きになりました。


Ranmalu:うちも父親がロカビリーのバンドをやっていたので、よくギターを弾かせてもらっていて。小学生の頃は父親に地元のライブハウスや『SUMMER SONIC』のような野外フェスにも連れていってもらいました。あと、母親が車の中でよくロッド・スチュアートとかバックストリート・ボーイズとかを聴いてたので、そのへんは記憶に残ってます。その後、父親のカセットコレクションから引っ張り出したザ・クラッシュやセックス・ピストルズを聴いて衝撃を受けて。それからはレッチリとか当時流行っていた洋楽バンドをよく聴いてました。


KenT:僕は物心つく前から、親が聴いてたSNAIL RAMPやMONGOL800、ミスフィッツが好きだったみたいです(笑)。で、小学校の頃にダンスを習い始めたんですけど、両親に連れていってもらったライブを観てドラムに興味を持って。それが小4の後半ぐらいで、その頃はTOTALFATやGOOD4NOTHINGみたいなメロディックパンクをよく聴いてました。で、小学校高学年のときにスリップノットと出会ってしまって(笑)。「これは悪い音楽だな」とすごくゾクゾクして、ハマっちゃったんです。そこからは高校までずっとラウドな音楽にドップリでした。


■「一緒に活動していて自慢のボーカル」(Ranmalu)


──もともとThe Winking OwlのファンだったRanmaluさん、KenTさんの目にはLuizaさんというボーカリストはどう映りますか?


Ranmalu:最初に聴いたときは、「わっ、新しい!」と思いました。The Winking Owlは初期から楽器隊の演奏が個性的でインパクトが強かったんだけど、それでもボーカルが全然負けてなくて。逆に、派手な演奏にLuizaさんのボーカルが乗ることで、相乗効果でさらにすごいところまで行ってるというのが、最初にThe Winking Owlを観たときの印象です。だから唯一無二の存在というか、一緒に活動していて自慢のボーカルですね(笑)。


Luiza:ふふふ(笑)。


KenT:確かに。「何か持ってる」んですよね。


Ranmalu:そうそう、その「何か」に引き寄せられるというか。


KenT:それが何なのかは、たぶんLuizaさん本人もわかってないだろうけど(笑)、他の人にはないものを持ってるのは確実で、ライブを観てもらったらその「何か」を感じ取ってもらえると思うんです。メロディの良さとLuizaさん自身から出るパワーが重なることでフロントマンとしての存在感がハンパなく増すし、バンドにとっては要的存在ですね。


Yoma:僕は彼女のことを高校のときから知ってますけど、ハーフということもあってか他の日本人ボーカリストとは違った響きを感じるんです。普通に日本語で歌っても他のボーカリストとはちょっと違うし、声質も個性的だし。そういうところが、今のThe Winking Owlにとって武器になってると思います。実際、どんな曲調でもLuizaが歌えばThe Winking Owlとして成立するし、一度聴けばそれがLuizaの声だってわかるという。その個性は本当にすごいと思います。


Luiza:……初めて言われましたけど、照れますね(笑)。


■「原点となるバンドと共演できたことはすごい誇り」(Yoma)


──昨年はONE OK ROCKのサポートアクトとして大阪城ホールでライブをしたり、『Ozzfest Japan 2015』でオープニングアクトを務めたりと、大舞台での演奏が続きました。どちらもメジャーデビュー前の出来事なんですよね。


Yoma:『Ozzfest』はメジャーデビュー1週間前でしたけど、ONE OK ROCKと共演したときはまだインディーズバンドとしてがっつり活動してた頃でしたし。どちらもまさか自分たちが出演できるとは思ってなかったのでビックリしました。


Luiza:本当に貴重な経験でしたね。


Yoma:そもそも1万人規模の会場でライブをする経験がまったくなかったので、始まる前は「どうなるんだろう?」って不安や緊張しかなかったんですけど、いざ始まってみたらすごく楽しくて。


Ranmalu:一言目にまず「すごかった! 楽しかった!」というシンプルな言葉が出てきちゃうぐらい、気持ちよかったです。


──しかも『Ozzfest』では、憧れのエヴァネッセンスと同じ舞台に立ったわけですもんね。


Yoma:高校のときに僕とLuizaが知り合うきっかけになった存在なので、その原点となるバンドと共演できたことはすごい誇りですね。


■「日本で生まれ育ったのでJPOPからは逃れられない」(Yoma)


──そして昨年11月にシングル『Open Up My Heart』でメジャーデビュー。僕はこのシングルで初めてThe Winking Owlのサウンドに触れたんですが、海外バンドからの影響が強いエモサウンドに、どこか日本人らしさが感じられるメロディが乗っていて、そこがすごく独特だなと感じました。


Yoma:サウンド面で影響を受けたのはほとんど洋楽のロックですけど、確かに歌に関してはJPOPからの影響はあると思う。僕たち4人は日本で生まれ育ったのでJPOPからは逃れられないと思うし、だったらその影響はうまく融合するべきだと思うんです。


──そんな楽曲だからこそ、英詞と日本語詞が混ざり合っても違和感なく聴けるのかもしれないですね。


Luiza:実は Winking Owlを始めた頃、「The Winking Owlはサウンドも洋楽的だし、英詞じゃなくちゃダメなのかな?」と思ってたんです。実際、英詞の曲も存在していたので余計に。でも日本で活動していくにあたって日本語詞もないとダメかなと思って、全部日本語詞にしようとか、サビだけ英詞にしようとかいろいろ試すようになって。シングル『Open Up My Heart』に関してはサウンドやメロデイを聴いて、どっちが合うのかを判断して書きました。そこをうまく使いこなせるのはThe Winking Owlにとって武器になってるのかもしれないと、最近気づき始めたところです。


──また、シングルやアルバムにはfadeのruiさんがサウンドプロデュースという形で携わってます。ruiさんが関わるようになったインディーズ時代後期からサウンドがかなり洗練され、バンドとしての個性も強まったという気がしますが?


Yoma:ruiさんとご一緒するようになって、得たものは多いですね。例えば、よりお客さんに伝わりやすいような曲の聴かせ方とか、起承転結を考えたアレンジでのメリハリの付け方とか、シンセのような4人以外の楽器を効果的に使った曲の引き立て方とか。あとはメロディを大事にした曲作りも強く意識するようになりました。僕はギタリストなので、以前はギターリフから作ることが多かったんですけど、ruiさんとご一緒するようになってからはまずメロディを作ることが多くなりましたね。それに歌を前に出しつつも、ちゃんと楽器隊のカッコ良さも生かすバランスも大事にするようになりました。


■「進化していく過程を描いているのかな」(Luiza)


──いよいよメジャー1stフルアルバム『BLOOMING』がリリースされます。このアルバムを作るにあたって、皆さんの中で事前に思い描いていたものはありましたか?


Luiza:作る前には特にテーマとか考えず、とにかくガムシャラに曲作りをして、そこからどれがいいのかをみんなで吟味した感じです。でも、曲がほぼ揃ったときに「そうか、こういうことを伝えたかったのか」と後から気づくことがあって。私は作詞を担当してるんですけど、自分が書いた歌詞を読んだときに「探す」というワードがよく出てくることに気づいたんです。ちょうどその頃、私は「The Winking Owlってどういうバンドなんだろう?」っていうことが自分の中ではっきりと表現できていなくて、周りから質問されてもしっかり伝えられてなかったんです。でも、その「探す」というワードに気づいてから、「The Winking Owlはインディーズからメジャーに上がって進化している途中なんだ、どんなバンドなのかを模索している途中なんだ」と解釈できるようになって。だからこの『BLOOMING』という作品は進化していく過程を描いているのかなと、個人的には思いました。


Yoma:サウンド面ではこうしようということは考えてなくて、今の自分たちにできる最高のものにしたいなということを思ってたぐらいで。メジャーデビュー作の『Open Up My Heart』は3曲のみだったので、サウンドのバリエーションをもっと出せたらいいなと考えながら曲作りをしました。


──メジャーでの名刺代わりになる1枚にしようと。


Yoma:まさにその通りです。


──Ranmaluさんには、今回のアルバムはどう映りますか?


Ranmalu:曲を作ってるのはYomaさんとLuizaさんなんですけど、一番近くでその姿を見ている第三者としては1曲1曲がよりタフになったと感じていて。ストレートな曲はひたすらストレートで、音の塊が猛スピードで飛んでくるような印象がある。あとThe Winking Owlの曲ってメロディはキャッチーだけど、その裏で楽器隊が難しいことをやってたりして、そういうところがバンドの味になってると思うんです。今回はそれがさらに強調されてるし、以前よりも進化してる印象を受けました。


──KenTさんにとっては、バンドに加入して初のアルバムにあたりますよね。


KenT:はい。レコーディングのときは、僕が楽曲に寄り添ったり僕の色を出したりすることで全体のクオリティを上げられたらなと。そんなクオリティの高い作品を作って、The Winking Owlのことを知らない人にも届けるお手伝いじゃないけど、そういう意識はレコーディング中ずっとありました。これは後で聞いた話なんですけど、レコーディングエンジニアの方やドラムテックの方たちのテーマとしては「2016年ナンバー1の音を作るぞ」というテーマがあったらしくて。このアルバムをいろんなミュージシャンが聴いて「やっぱりCDってこうじゃなくちゃいけないんだな」と思うような作品にしたいと言っていたんです。事実その方たちが言うように抜群に音はいいので、そこも自信を持ってオススメできるポイントですね。


■「自分たちは『自ら花開く力』を持っている」(Luiza)


──『BLOOMING』というアルバムタイトルには、どういう思いが込められているんでしょうか?


Luiza:最初は「進化していく過程を描いている」というところから「Evolution」というタイトルを考えたんですけど、ありきたりだしちょっと違うかなと。そこから「進化」に関連する単語を探していたときに「Bloom(開花)」という言葉に気づいて。「進化」には前に突き進んでいる印象があるんですけど、「開花」だと自ら花開いているところがいいなと思っていて、自分たちはそういう「自ら花開く力」を持っているというところにつながるなと思ったんです。そこに「Bloom」という動詞や名詞で終わるのではなく、今もその過程だという意味で進行形の「~ing」を付けて、いつまでも開花し続けていくんだという意思を示しました。ここから先に進むという意味においては、ピッタリなタイトルかなと思ってます。


──なるほど。アルバムには「Bloom」という楽曲も収録されていますが、これはアルバムタイトルが決まってから作った曲なんですか?


Luiza:「Bloom」の原曲はその時点からあって、まだ歌詞もないしタイトルも決まってなかったんです。でもアルバムタイトルが決まったときに、私のルーツ……10代の頃に一度挫折したことをテーマに歌詞を書こうと決めて。今思うと、あの経験がなかったら自分はThe Winking Owlというバンドで活動していなかったかもしれない。挫折はしたけどそこで終わりではなくて、次につながるステップを自分で掴めた、ここで開花したんだと。そこがアルバムタイトルにリンクしていると思って、楽曲のほうには「Bloom」というタイトルを付けたんです。


──アルバム発売直後には、バンド史上最長となる全国ツアー『BLOOMING TOUR 2016』も控えてますね。


Yoma:音源は本当にすごいものができたと確信しているので、その魅力をしっかりライブで伝えられるように頑張りたいですし、最終的にはメジャーに行く前に立った大阪城ホールや幕張メッセのような大きなステージに、今度は自分たちの力で立てるようになりたいと思います。