人が踏み込めない場所にプロペラを回しながら飛んでいく「ドローン」が、流通革命を起こすといわれている。日本でも被災地の調査などに使われているが、墜落のリスクもあって普及には様々な壁が立ちはだかっているようだ。
そこで注目されているのが、エストニアのスターシップテクノロジーズ社が開発した、空を飛ばずに道を走る「地上ドローン(グラウンドドローン)」だ。5月5日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、この新しい技術の可能性を紹介していた。(ライター:okei)
重さ10キロまで運搬。目的地まで自動運転
番組は、英ロンドンで行われた地上ドローンの運行実験の様子を紹介。スターシップテクノロジーズ社は、スカイプの創業者が立ち上げた会社だという。COOのアラン・マーティソン氏は、6つの車輪がついた巨大炊飯器のような機械と街を歩きながら、こう紹介した。
「地上ドローンは、いわば配達ロボットだ。買い物袋や小包、食べ物など、2~3キロの距離なら何でも運べる」
重さ10キロまで運搬可能で、買い物袋が2つくらい入りそうな大きさだ。送りたい人はフタを開けて荷物を中に入れるだけ。登録された目的地まで自動で運んでくれる。受取人はロックを解除して取り出すだけ。配達が終わると再び自動的に帰還するというわけだ。
開発者は、NASAの火星探査車両から発想を得た。街の声も好評で、ある若い女性は「良いアイデアだと思う。家からなかなか動けない高齢者には便利。将来は家庭でも所有するようになるかもしれない」と評価した。
ただし最高速度は、大人の小走り程度の時速6キロ。走る姿は、どこかユーモラスで可愛らしさもある。視聴者からはツイッターに「けなげ」という感想とともに、盗難や安全性への心配が多数上がっていた。
「簡単に襲われそうだけど大丈夫なんかな。反撃機能とかあんのかな」
「盗まれて終わりだろw」「大阪やったらオバハンのチャリでバーンやで」
ロボットにとって代わられる危機感が現実に
確かに屈強な人が抱えていけそうな大きさだが、もちろん対策は取られている。前後に設置された9個のカメラで周囲の映像を常に録画、遠隔操作で監視する。GPS内蔵なので機械ごと盗まれても所在が分かりやすいし、ロックの解除は本人でなければできない。
歩行者の安全を守るため、センサーが感知して急な飛び出しにも自動停止。200メートル先から走ってくる車も検知でき、横断歩道前できちんと止まっていた。マーティソンCOOは、自信満々でこう語る。
「空を飛ぶドローンよりもはるかに安全です。地上を走るので墜落の可能性もなく、荷物を落として誰かを傷つけることもない」
動力は電気で輸送コストは1回あたり100~200円程度。実用化できれば物流会社にとっては大きなコスト削減になる。まずは欧米の物流会社とリース契約を結び、年内に輸送サービス始める予定だ。番組では予想通り「物流革命になるかもしれない」と紹介していた。
日本への展開の予定はまだないが、もしやるとしてもやはり人の多い都会は難しそうだ。しかし地域によっては、高齢者の買い物代行などに有効活用できるのではないか。便利ではあるが、働く人たちの仕事がロボットにとって代わられる危機感が、また一歩現実になったようにも感じた。
あわせてよみたい:父(65歳)の城を燃やしてください!