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31号車プリウス、GT第2戦はピットトラブルに泣く。嵯峨「2戦でチャンピオンを諦めるつもりはない」

2016年05月10日 14:11  AUTOSPORT web

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31号車TOYOTA PRIUS apr GT
AUTOBACS SUPER GT ROUND 2
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km

5月3日(予選)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:35,700人

5月4日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:50,100人

表彰台は確実に見えていたが、トラブルに泣く
 スーパーGTシリーズの第2戦が、ゴールデンウィーク真っ只中の富士スピードウェイで開催された。豊富な車種のバラエティと激しいバトルが魅力のGT300クラスに挑むaprは、今年から2台の新型ZVW50プリウスを投入。31号車を昨年に続いて、嵯峨宏紀選手と中山雄一選手に託すこととなった。タイヤも引き続きブリヂストンが使用される。

 岡山国際サーキットで行われた開幕戦で、嵯峨選手と中山選手の駆る「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、性能調整によって1ランク昨年よりもリストリクタ―が絞られてしまい、かつルーフ上からボディサイドに吸気口を移設しなくてはならなくなった影響は、予選以上に決勝で表れることとなった。中山選手が5番手でQ1を突破し、Q2で嵯峨選手が順位は落としたとはいえども11番手につけて、決勝でじわじわ順位を上げていくはずが、ストレートパフォーマンスに優れるFIA-GT3に、テクニカルコースの岡山ですら抵抗を許されず。12位と屈辱の結果に終わっていたからだ。

 となれば、高速コースの富士ではより苦戦は必至……。とはいえ、開幕前に行われた公式テストでは、高速コーナーの続くセクター2との相性の良さは確認されており、峠道のようなセクター3も苦にしないことから、トータルのラップタイムで渡り合える上に、500kmの長丁場とあって2回のピットストップが義務づけられているため、自慢の好燃費を持ってすれば、十分勝負権ありというのが戦前の予想だった。

公式練習 5月3日(火・祝)9:00~10:35
 今回の公式練習は、中山選手から走り始めることとなった。路面状態が整うのを待って、10分経過後にコースイン。1時間経過直前まで走り続けた中山選手だったが、その間のイン~アウトは一度のみ。連続周回をこなしているのは、持ち込みのセットがマッチしていたからに他ならない。ピットでセット変更が行われる間に赤旗中断があったが、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」の走行中でなかったのは何より。せっかくのリズムを崩さずに済んだからだ。その中山選手のベストタイムは1分37秒406

 再開後には嵯峨選手が走行。中山選手同様、連続周回がこなされていく。終了間際に再び赤旗が出されるも、その頃にはもうピットの中。その直前に記した1分38秒992が、嵯峨選手のベストタイムとなった。この後に行われたサーキットサファリでも、嵯峨選手は走行して最終チェックを完了した。このセッションの最終的な順位は3番手と、まずは上々の滑り出しとなった。

公式予選 Q1 14:30~14:45
 今回のQ1担当は嵯峨選手。計測開始と同時に「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はコースイン、15分間を有効に活用しようという算段だ。決勝当日の気温が高くなることが予想されていたため、比較的硬めのタイヤを選んでいたことから、ウォームアップは入念に、さらにポジショニングも整えるため3周走行した後にアタックを開始。まずは1分37秒620をマークし、次の周には37秒107へ。さらに2周走行するも、37秒814、37秒316とベストタイムを更新することはできなかった。それでも11番手で、難なくQ1突破かと思われたものの、走路外走行、すなわち四輪脱輪と判定されて、ベストタイムを削除されてしまったのだ。万事休す……と思われたのも束の間、セカンドベストタイムでもギリギリ14番手に踏み留まり、無事Q2で待ち構える中山選手にバトンを託すこととなった。

公式予選 Q2 15:15~15:27
 続いて行われたQ2でも、中山選手は計測開始とともにピットを離れ、やはり3周走った後のアタックとなった。GT500クラスが走行して、しっかりと路面にラバーを乗せてくれたおかげで「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」の旋回速度も、より高まっているのが目にも明らか。いきなり中山選手は1分36秒036をマークし、さらにタイムを詰めようと力走を見せるも、1分36秒290と逆にダウン。従来のレコードタイムを上回ったものの、今回は上にはまた上が……。35秒台に乗せた車両が2台もいたため、3番手とはなったものの、確実に優勝を狙えるポジションを得ることとなった。

嵯峨宏紀選手
「比較的いいアタックができたとは思うのですが、FIA-GT3勢のスピードは我々が想像していた以上で、なかなか苦しい状況になっています。それでも、雄一がすごくいい走りを見せてくれたので、予想していたより上のポジションからスタートできますし、決勝に向けて硬めのタイヤを選んでいることもあり、行けるんじゃないかと我ながら期待しています」
中山雄一選手
「いいアタックができたと思ってはいるんですが、セクターのベストを全部まとめていたら、もうちょっといいタイムが出たはずなので、それが残念でもあり、また課題だと思っています。決勝はまだ天候がどうなるか分からなくて、雨がらみの展開にもなりそうですから臨機応変に対応して、また長いスティントでタイムが落ちないようなタイヤを、今日のフリー走行時にチョイスできたと思うので、それがいい方向に行けばいいなと思っています」

金曽裕人監督
「Q2で中山選手がプリウスの性能を、きっちり出し切ってくれました。そしてブリヂストンタイヤが非常に良くて、グリップもバランスも優れていて、しっかりアシストしてくれました。2人のドライバーがプリウスをストレートが不利な富士で、コーナーで逆に稼いできてくれたというのは、我々としても冥利に尽きます! 実際、これ以上の予選はないので、明日の決勝は最低でもこのポジションをキープして、レースを終わらせたいと思っています」

決勝日・フリー走行 5月4日(水・祝)8:30~9:00
 決勝当日の午前中は暴風雨に見舞われる……という物騒な天気予報もあったものの、多くの観客が集まってきたことで、大気にも動きがあったのかも。実際に雨は降ったものの、早朝にはやんでいて、一時はウェットタイヤを装着することも覚悟のはずが、強い日差しに照らされた路面は瞬く間に乾いていき、フリー走行が始まる頃には限りなくドライコンディションに。

 ここでも中山選手からの走行となり、決勝セットの確認が行われていく。そして1分39秒081をマークした後、嵯峨選手に交代し、1分39秒575を記録する。それぞれ8周を走行し、上々の手応えを得ることとなった。なお、このセッションにおける「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」の順位は7番手に。

決勝レース(110周)14:00~
 12時50分からスタート進行が開始され、併せて行われる8分間のウォームアップで、今回のスタートを担当する中山選手は1分42秒006をマーク。早々に走行を切り上げてピットに戻った後、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、実に5万人以上もの大観衆の見守るスターティンググリッドに並べられることとなった。

そ の後のセレモニーでは、国歌斉唱の前に黙祷が行われた。これは4月14日に発生した熊本地震の犠牲者に対するもの。この地震による影響は、次回のレースの舞台となるはずだったオートポリスにも少なくはなく、施設やコースにも損傷が発生。そして何より周辺環境を考慮し、この日レースの中止が正式に発表された。誰もが複雑な心境だったはずだ。

 だが、いったんエンジンに火が入れられてからは、そういった思いも勝負モードにリセット。1周のローリングラップの後、グリーンシグナルの点灯とともにバトルが開始された。右足に渾身の力を込めた中山選手は、1コーナーでのオーバーテイクこそかなわなかったが、コカコーラコーナーではしっかりと1台をパスして2番手に浮上。だが、2周目にはツインターボが唸りを上げたBMW M6 GT3にストレートで迫られ、逆転を許すことに。だが、背後にGT-R GT3を置いたまま食らいついて離れず、しばらくは三つ巴の3番手争いを繰り広げていた。そして、9周目にはBMWを抜き返すこととなる。

 そして、30周目には2番手のままピットに戻り、スタッフは素早く嵯峨選手をコースに送り出したのだが……。その直後に、なんと嵯峨選手は1コーナーでコースアウト! ピット作業でブレーキを傷めてしまい、三輪が利いただけの状態でクラッシュにまで至らなかったのは、まさに不幸中の幸いだったともいえるだろう。そのため、次の周にはピットに戻って修復が行われたものの、大きな遅れを取ってしまい、もはや勝負権は存在せず。

 58周目に嵯峨選手から、再び中山選手にステアリングが託されたものの、ふたりとも淡々と走り続けるだけのレースは屈辱的ですらあったかもしれない。しかし、完走できなくては、より悔しい思いが残るだけ。そこには意地も含められていた。結局、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は20位でゴール。貴重なチームポイントの1ポイントは得ることはできた。

 前述のとおり、オートポリスのレースは中止になってしまったため、次回のレースは2か月以上のインターバルを挟んだ、スポーツランドSUGOでの開催となる。テクニカルコースとの相性の良さは過去にも証明されているだけに、視点を変えればウエイトハンデに苦しんでいないレースである、大逆襲の期待が込められることともなった。

嵯峨宏紀選手
「全体的にペースは悪くなく、雄一も頑張ってくれたんですが、残念ながらピットで少しトラブルがあって、もう一回入らざるを得ない状況になってしまいました。最悪の状態は避けられたのは良かったんですが、やはり残念です。だけど、これもレースだと思いますし、次に向けてまだまだやらなきゃいけないことはたくさんあることも改めて分かりました。もちろん僕たちは、たった2戦でチャンピオンを諦めるつもりはないので、次のSUGOに向けてできることをチームとしても、ドライバーとしてもやっていくだけです」

中山雄一選手
「悪いペースじゃなかったんです。序盤のうちに2番手まで上がれたので、スタート直後にも1台抜いて。ただ2周目になったら、BMWは圧倒的にストレートが速かったので抜かれてしまったんですけど、落ち着いたらペースはそう悪くはなかったと思います。その後、BMWを抜き返して2番手になって最初のスティントを終えたんですが、ピットでのトラブルがあったので……。最後のスティントは淡々と走るだけのレースになってしまいましたが、最後まで走りきって完走することができたので、それは今後に向けてのいい収穫だと思っています」

金曽裕人監督
「ピット作業でブレーキを傷めて、嵯峨選手だけでなく、チームを応援していただいている皆さんにもヒヤッとさせてしまい、大変申し訳なく思います。それでクルマを再びピットに戻すこととなり、勝負権を失ってしまいました。今回は優勝を狙えるようなペースで確実に走れていただけに、非常に残念です。ある意味これがレースの面白さでもありますが、僕らの弱さでもありますから、次に向けて確実に改善します。……と、いつまでも悠長なことは言っていられませんから、次こそ狙いに行きます!次戦のSUGOは得意なサーキットですから、クルマもドライバーも。非常に大きいものは落としたけれど、大きいものもまた得られたので、次こそは大きい結果が出るんじゃないかと思っています」