2016年05月10日 09:01 弁護士ドットコム
「旦那と息子の性格が壊滅的に合いません」。子育て情報サイト「mamasta」のBBSに、そんな悩みが投稿されました(実際に寄せられた投稿はこちら→http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=2560946)。
投稿した女性によると、息子は夫婦の性格を足して2で割ったような性格で、大雑把なところがありながらも、変なところで気を使う部分が父親譲り。まだ幼いながらも、機嫌の悪い夫に気遣いを見せるような大人びた一面もあるそうです。
しかし、夫は「あいつは母親の前で要領よく動いているだけだ」と言い張り、息子を全く可愛がりません。投稿者の女性の愛を全面に受け、自分が子供の頃よりも良い暮らしをしている息子に嫉妬もしている様子。「無理に仲良くさせるつもりはないのですが・・」と考えているものの、夫と子供の間で板挟みになってしまった女性は、二人の今後の付き合い方に頭を痛め、離婚を考えたこともあるそうです。
この投稿に対して「ご主人が大人になりきれてない」「旦那は一生の付き合いだけど、子供は成人すると他人のものになるよ」等様々な意見が寄せられています。
夫婦の相性が悪いという悩みは珍しくありませんが、子供と旦那の性格が合わないということを理由に離婚することは可能なのでしょうか? 田中 真由美弁護士に聞きました。
Q. 父子間の不和で、夫婦関係が破綻したかがカギ
離婚できるかどうかは、どのような手続きで離婚をするかによって違ってきます。
離婚の手続きとしては、大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3種類があります。
1つめの「協議離婚」は、夫婦が話し合いによって合意し、離婚届を役所に提出することで成立する離婚のことです。「協議離婚」では、離婚の原因は何であってもかまいません。戸籍上の手続きとして、離婚の届出をするという合意さえあれば、どのような理由であっても離婚はできます。
2つめの「調停離婚」は、家庭裁判所の調停による離婚です。夫婦の話し合いがこじれ「協議離婚」に合意できなかった場合に、「調停離婚」に進みます。この場合も、夫婦の話し合いの場が家庭裁判所になるというだけで、結論として離婚することに合意できれば、その離婚の原因が何であってもかまいません。
「協議離婚」と「調停離婚」と、3つめの「裁判離婚」の大きな違いとしては、「裁判離婚」では、法律によって離婚できる原因が限定されることです。民法770条には「不貞(浮気)」や「暴力」など、離婚が認められる「5つの規定」があります。
ご質問のようなケースは、父子間の不和が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると言えるかどうかが問題になります。通常、この規定は「夫婦関係が破綻している状況」を指すものと理解されています。
では、ご質問のケースでは、「夫婦関係が破綻している状況」と言えるのでしょうか? たしかに父子間の不和はあるようです。しかし、それだけで夫婦関係まで破綻しているとまでは言えないのではないでしょうか。
つまり、父子間の不和は、「その影響で夫婦関係まで冷え切ってしまった」など別の事情がなければ、「裁判離婚」では離婚の請求は認められない。つまり離婚できないことになります。
ただし、裁判手続きの途中で、「和解」により離婚することもあります。「和解」というのは、裁判手続きの途中で、原告と被告とが、裁判上の話し合いによって、判決に至る前に、紛争状態を解決するという手続きです。
「和解」による離婚であれば、離婚の原因は限定されません。協議離婚や調停離婚と同様に、裁判の当事者である夫婦が、和解により離婚することを合意すれば離婚できます。
【取材協力弁護士】
田中 真由美(たなか・まゆみ)弁護士
「親しみやすい町医者のような弁護士でありたい」がモットー。熊本県弁護士会所属。熊本県弁護士会両性の平等に関する委員会、子どもの人権委員会所属。得意分野は離婚、家事全般、債務、刑事事件、少年事件。
事務所名:あおば法律事務所
事務所URL:http://www.aoba-kumamoto.jp/