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NMB48が1位、Aqoursが3位ーービルボード複合チャートに見るCDセールスの重要性

2016年05月07日 21:11  リアルサウンド

リアルサウンド

NMB48『甘噛み姫(Type-C)』

 ゴールデンウィークも重なった今週のチャートですが、フタを開けてみるとNMB48『甘噛み姫』がチャートイン3回目にして前週89位から一気にランクアップしての1位。なぜこのような結果になったかと言いますと、CD等の販売枚数が1位、CDがPCに取り込まれた回数が3位、そしてTwitterでアーティスト名と曲名が共につぶやかれた回数が1位という結果を受けてのことのようです。


 しかし面白いことにこの曲、ラジオでのオンエア回数は134位でして、さらにYouTubeでのPV再生回数はゼロ、つまりまだアップロードされていないのですかね。にもかかわらずの1位。2位の西野カナ『あなたの好きなところ』なんかはオンエア数、販売数、CD取り込み数、Twitter、YouTubeのいずれでも安定したスコアを叩き出しているにもかかわらず、NMBさんがCD売りまくってしまえばぶっちぎりで1位を取れてしまうのです。ビルボードジャパンのチャートはこれらの指標を総合して順位が決まる複合チャートですから、CD等の販売数を唯一絶対の基準としているオリコンチャートなんかに比べて人気の指標として信頼性があることだなあとは不肖ワタクシ自身思います。しかしこの結果を見ると、CD等の販売数こそが、ここぞというところで力を持つというのは揺るぎない事実のようであります。


 さらに面白いのは、3位のAqours「恋になりたいAQUARIUM」もNMBさんと同様で、ラジオでのオンエア順位とPVの再生回数が集計結果に含まれていません。にもかかわらずの3位。別に西野カナさんだけがスゴいと言いたいわけではないですが、実際今回の西野カナさんの曲はスゴい曲であります。タイトル通り「あなたの好きなところ」を延々と50個以上も挙げていく歌詞になっておりまして、聴いているうちにその愛情の途方もない重さを感じて少し震えが走る、というところであります。


 この路線は言うまでもなく、前作シングル『トリセツ』の歌詞で自分自身をカノジョとして取扱う上で注意すべき点を蕩々と読み上げてみせたのに続く、なんかちょっと怖い女性の情念ソングの第二弾と言うべきでしょう。こうした楽曲が人気を博するというのは昭和を感じるというか、日本も不況が続いて懐かしいモードに突入しているのだろうかというか、いやこうなったら西野さんはこの路線を極めていってはどうか、というところであります。日本では古来から竹内まりや『けんかをやめて』、中島みゆき『うらみ・ます』など、女性の情念を色濃く感じさせる楽曲が多々ありました。西野さんももう国民的なベテラン歌手と言っていいキャリアになってきましたから、さらに日本歌謡史にガッチリと傷跡を残すためにですね、カレシが「うわあ待ってちょっと待って」とか言いたくなる、背筋がゾクゾクするような情念歌の時代を復古させていただきたい。目指すは、山崎ハコ『呪い』ですよ。ダメですかね。


 しかし返す返す、そんな情念派な西野さんを1位と3位で挟んでいるのがCD等の販売数の権勢にまかせて優位を気取る、資本主義の尖兵たる2作品であることは面白いなあというところであります。3位のAqoursは、アニメなんかで人気の女子アイドルコンテンツ『ラブライブ!』シリーズの連動モノでありまして、昨年までに爆発的な人気を誇りつつ第一線を退いたμ'sに続くグループとなっております。アニメとか見ない人には何のこっちゃというというところでしょうが、制作サイドであるサンライズ・ランティス連合としてはですね、今が重要なタイミングなんですよ。というのも制作側としてはですね、μ'sからAqoursへの世代交代を成功させることによってファンに「μ'sじゃないグループも応援したい。つまり『ラブライブ!』というコンテンツ全体を応援したい」と思っていただき、ゆくゆくは次々に派生グループを登場させて『ラブライブ!』を10年戦えるシリーズに成長させたいという希望があるわけです。今回の順位を見る限り、Aqoursへの王権委譲は無事に成功したようですね。劇場用アニメで主役キャラクターに「ラブライブは大きく広がっていきます。みんなの、スクールアイドルの素晴らしさをこれからも続いていく輝きを、多くの人に届けたい」と所信表明を語らせただけのことはあります。しばらくはこの『ラブライブ!』政権も安泰というところでありましょうか。(さやわか)