独身を貫いていると「老後は誰が面倒見てくれるの?」などといわれたものだ。自分の生活を支えさせるために、子どもを作るようなことをいう人までいる。しかしそれもいまや逆転し、子どもの存在が「老後のリスク」になる時代が到来しているようだ。
4月28日の「5時に夢中!」(TOKYO MX)が取り上げたケースには、「子どもがいるから老後は安心」はもはや幻想で、「現役世代の失業・非正規雇用」「親の介護」「生活保護ハードル」という現代社会の「行き詰まり」が凝縮されていた。(文:みゆくらけん)
80歳の自分の脳梗塞が、45歳の息子の失業と重なる
番組が紹介したのは、45歳の息子と同居している80歳の男性の話。この男性が息子と同居したきっかけは、男性の病気(脳梗塞)と息子の失業が重なったことだった。
息子は介護の仕事をしながら日給7500円の日雇いの仕事をするが、収入は安定しない。親子の生活費のほとんどは男性の年金収入で賄うが、家賃・光熱費・保険料を支払うと、残りはわずかである。
男性には高血圧など医者にかかる必要のある持病もあり、一人で住んでいた頃には生活保護も受けていた。しかし息子と住み始めたことで、「働ける子どもと同居している」と判断され、以来保護は打ち切られてしまった。
その他のケースでも「年金暮らしの親が、引きこもりの子どもと過酷な暮らしをしている」「非正規社員の子どもに一人暮らしする経済力がなく、仕方なく親にパラサイトしている」など、親子がいつ共倒れしてもおかしくない状況が目立っているという。
記事を受け、コメンテーターの新潮社・中瀬ゆかりは「今、本当に『子どもリスク』とか『兄弟リスク』みたいなことが叫ばれている」とコメントし、こう続けた。
「(親が)自分ひとりならまだよかったんだけど、『この年金でなんとか夫婦でやっていこう』とするところに、子どもが帰ってきて大変になる。あと、兄弟が働かなくて、それを面倒みないといけなくなるとか。昔だったら『兄弟や子どもがいて良かった』というところが、今は真逆のケースが問題になってきているのは確か」
「家族という責任」に疲れきってきる人も多い
中瀬が指摘するように、今や老後の親子破産は想像以上に深刻化している。少ない年金受給額で、一人暮らしや夫婦2人でも「やっと」という状態で暮らす親にとって、本来支えてほしいはずの子どものパラサイトは相当にキツい。
また、人数が多ければ多いほどプラスに助け合えるはずの兄弟が、逆に負担となることもある。ついに4割という数字を突破した非正規雇用の現実があることからも、「兄弟の誰か」が経済的に自立できない場合が出てくるためだ。
たとえ自分の身にこのような苦労が降りかかっていなくても、親戚や知り合いの誰かに必ずありそうな老後親子破産や兄弟破産。本来、家族は共に助け合うとても温かいものだが、その「助け合い」の負担が今、あまりにも大きい。
自分の肩に重くのしかかる「家族という責任」に、疲れきってきる人も多いかもしれない。2015年に事実婚の夫を亡くした中瀬は、最後にこう言っていた。
「わたしはひとりだから、苦労してる話を聞くと、(家族が)いなくてよかったと思う反面、孫とかに囲まれて幸せにやっているおばあちゃんとかを見たら、あんな風になることは絶対ないので(うらやましいな、いいなと思う気持ちもある)。両方の気持ちがありますね」
家族がいない、少ない方が負担が少なくて、ラクで良い。そう言い切らざるをえない時代になってしまうのは、あまりにも悲しい。
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