メルセデスのF1活動を率いるトト・ウォルフによると、最近のレースでの技術的なトラブルは、ライバルであるフェラーリの脅威が本格化しているために起きたものだという。
過去2年間の世界選手権を制覇してきたメルセデスは、今年のプレシーズンテストで驚異的な信頼性を示した。ところが、開幕後のレースの週末には、特にルイス・ハミルトンのクルマにいくつものトラブルが発生している。
ロシアGPの予選では、ハミルトンが中国で起きたのと同じパワーユニットの問題に見舞われ、土曜の夜に必要なパーツを緊急空輸しなければならなかった。さらにレースでも、ルイスは冷却水の問題でチームメイトのニコ・ロズベルグへの追撃をあきらめることになり、ロズベルグもMGU-Kに異常が生じたため終盤にペースダウンを余儀なくされた。
ウォルフはメルセデスのYouTubeチャンネルで、次のように語っている。
「レギュレーションが安定している時期には、誰もがエンジンのポテンシャルを余すところなく発揮させようとするので、どんどん難しさが増していく。私たちが限界を攻めることを強いられているのは、フェラーリが冬の間に大幅な進歩を実現してきたからだ。その過程で時には許容限度を超えてしまうが、それは本当の限界を知るためには避けられないことだ。私たちは現在そういった状況にある」
またウォルフはロシアで起きた、ふたつのトラブル原因は明らかになっておらず、根本原因を探るために、それぞれの作業部会を設けたと述べた。
「そうして限界を攻めた結果として、ニコのクルマではMGU-Kのトラブルが起きた。具体的にはオーバートルクの状態になったのだが、これはシステムの機能停止につながる可能性がある憂慮すべき兆候だ。現在の規則では、そうした状況をドライバーに伝えることができないので、どうすればリタイアを避けられるか、とても難しい問題になった」
「ルイスのクルマに関しては、あるカーボンファイバー製のパイプに亀裂が生じていた。これはパイプそのものの製造品質の問題のように思えるが、くわしい調査が必要だ。現在、解析を通じて根本原因を探ろうと試みているところで、まだ確かなことはわかっていない。かなり複雑なことが起きているようだ」
「それぞれの問題について、発生しうるトラブルをひとつずつ検討していくプロジェクトチームを立ち上げた。これらの問題が克服されて、さらに理解が深まるものと私は確信している」
メルセデスは、5月4日にファンに向けた公開書簡を発表した。これはチームが故意にハミルトンの足を引っぱり、ロズベルグを勝たせようとしているのではないかというソーシャルメディアでの議論に応えたものだった。
「あれはメルセデスの本当のファンに向けた手紙だった」と、ウォルフは言う。
「ソーシャルメディアを見ればわかるのは、このチームを応援し、チームとともに心を痛めている人々がいるということだ」
「彼らはトラブルの原因について議論を戦わせている。私たちは、何が起きているのかについての真相を提供し、彼らの応援に、どれほど感謝しているかを示したいと感じた」
「私たちはコミュニケーションの透明性を保ちたいと思っている。隠していることなど何もない。あの公開書簡も、そんな姿勢を示すひとつの例であり、こちらの気持ちをファンと共有し、ファンの応援に感謝する良い方法だと考えている」