マクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は第4戦ロシアGPを、ふたつの視点でジャッジ。
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フェルナンド・アロンソがマクラーレン・ホンダとして、今シーズン最高位となる6位に入賞した。チームメートのバトンも10位に入り、自身今シーズン初入賞。昨年のハンガリーGP以来のダブル入賞を果たし、9点を加点したマクラーレン・ホンダはコンストラクターズ選手権でもフォース・インディアを抜いて8位から7位に浮上した。
結果がすべてのプロスポーツの世界では、ロシアGPの成績がマクラーレン・ホンダのスタッフを勇気付けたことは間違いない。今シーズンのF1は相変わらず、メルセデスAMGが頭抜けており、これをフェラーリ、レッドブル、ウイリアムズが追って表彰台争いを演じている。この第2集団に続いているのが、ハース、トロロッソ、マクラーレン、フォース・インディア、ルノーの巨大な中団グループで、予選ではQ3争いを、レースではポイント県内をかけて熾烈な戦いを繰り広げている。
開幕3戦のマクラーレン・ホンダはこの集団の後方に位置していたため、第2戦バーレーンGPでストフェル・バンドーンが10位に入賞するにとどまっていた。ところが、4戦目のロシアGPでは2台そろって安定したペースを刻み、中団の前方でレースすることができた。しかも、コースはマクラーレン・ホンダにとって決して得意ではないパワーユニットのソチ・オートドロームで達成したことは、2台そろって入賞したという事実よりも、力強い結果となった。
レース終盤にはアロンソがマシンのポテンシャルを図るべく、個人の判断でパフォーマンスランを行い、レース中のファステストラップで5位となるタイムをマーク。ルノー勢4台よりも速く、昨年型のフェラーリのパワーユニットを積むトロロッソよりも1.7秒速いことを考えると、現時点でホンダのパワーユニットはメルセデス、フェラーリに次ぐパフォーマンスを発揮していると考えていいだろう。
しかし、ホンダは開幕以来、トークンは使用していない。なぜ、ホンダはロシアGPで性能を向上させることができたのだろうか。それは、信頼性にある程度の目処がついたからである。信頼性に苦しんだ昨年のホンダは、レース中に予選モードで走行することが限られていた。そのため、スタートでポジションアップしてもすぐにオーバーテイクされていた。ところが、ロシアGPではホンダのスタッフがミーティングを行い、長谷川祐介総責任者は「レースでも予選モードをできるだけ長く使って走らせる決断をした」と語っている。
「予選モードを使用できる時間は、耐久テストでだいたい決まっていますが、それを超えたらすぐにブローするわけではありません。それをやるかやらないかで、その差がコンマ2秒あれば、10周で2秒、50周で10秒稼げるわけですから、大きい。もちろん、その差がレース結果に反映しにくいサーキットもあるので、やれば必ず結果につながるわけではないし、やるからにはリスクも負わなければなりませんが、ソチ・オートドロームのようなパワーサーキットでは、それを試してみる価値はあると考えて、われわれは議論した結果、レースでも予選モードでできるだけ長く走らせる決断をしました」
その効果はアロンソが中団グルーブから完全に抜け出して6位入賞したことが証明している。また10位に終わったバトンが、レース後半にケビン・マグヌッセン(ルノー)、ロマン・グロージャン(ハース)、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)、カルロス・サインツJr.(トロロッソ)を追走できたのも、フルパワーで走り続けることができたためである。
そして、このフルパワーで走り続けたレースというのは、今シーズン長谷川総責任者体制になったホンダとして、初めてのチャレンジだった。その事実は、アロンソの6位よりも、ダブル入賞よりも、大きな収穫だった。
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