2016年05月07日 10:01 弁護士ドットコム
トヨタ自動車が今年秋までに、一定の勤続年数を経た総合職の全社員を対象として、終日、在宅勤務できる制度を導入する方針を固めたと報じられた。
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報道によると、トヨタは今年4月から施行された「女性活躍推進法」にもとづいて、現在約130人の女性管理職を2020年までに約300人に増やす目標を立てているが、社内結婚が多いこともあり、女性社員のキャリアアップのためには、男性社員の育児参加が課題になっていた。
トヨタはこれまでも一部で在宅勤務制度を取り入れていたが、今回、一定の勤続年数を経た総合職の全社員に拡大することで、さらに男性社員の育児参加をうながす狙いがあるという。このような制度導入の評価について、鈴木謙吾弁護士に聞いた。
「トヨタが総合職の社員に在宅勤務制度を導入するというニュースは、女性の活躍をあと押しする社会をつくるという意味で、歓迎されるべきことだといえます」
鈴木弁護士はこのように述べる。問題点はないのだろうか。
「『総合職以外の者(一般職・非正規雇用労働者)には、在宅勤務が認められていないのか』という点に、引っ掛かりを感じる人もいるかもしれません。
しかし、そもそも総合職と一般職の社員は、労働の態様、待遇などの面で異なる取り扱いを受けています。そして、会社に応募する人も、総合職・一般職という区分に応じて、応募する運用が定着しています。
したがって、入社を希望する時点で、総合職・一般職と異なる取り扱いを承諾したうえで、入社していると考えられます。在宅勤務について異なる取り扱いをすることも、一般的には問題はないと思います」
報道によると、今回のトヨタの在宅勤務制度は「女性活躍推進法」にもとづいて導入された制度のようだ。どんな法律なのだろうか。
「女性活躍推進法とは、女性が職業生活において、その希望に応じて十分に能力を発揮し活躍できる環境を整備するという理念のもと、制定された法律です。
近年の男女雇用機会均等法の改正なども、女性の社会進出や女性にとって快適な職場づくりという共通の理念を推し進める運動の一環であるといえます。
この法律によって、従業員301名以上の大企業は、自社の女性社員の活躍状況の把握・分析、行動計画の策定、女性の活躍に関する情報の公表が新たに義務付けられることになりました。
トヨタのような大企業では、このような行政上の義務の履行状況が、会社の社会的な評価を左右することも多いでしょう。トヨタが在宅勤務制度を導入したことによって、ほかの大企業でも、同じような制度の導入が広がるなど、プラスの好循環が始まってほしいと思います」
鈴木弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
鈴木 謙吾(すずき・けんご)弁護士
慶應義塾大学法科大学院教員。東京弁護士会所属。
事務所名:鈴木謙吾法律事務所
事務所URL:http://www.kengosuzuki.com