5月3~4日、富士スピードウェイでスーパーGT第2戦が開催されたが、この場で4月1日付けでニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(ニスモ)の社長に就任した、片桐隆夫新社長がメディア向けに記者会見を行った。
日産自動車副社長を経て、4月からニスモ、そしてオーテックジャパンの社長に就任した片桐新社長は、メディアに向けて「私は長く営業でマーケティング系の仕事をやってきました。アメリカに2年、ヨーロッパで9年半くらい駐在してきましたが、そのなかで特にヨーロッパのモータースポーツが、一般のお客様や自動車のマーケティングに染み込んでいるのを目の当たりにしてきました」とまずは自己紹介をした。
「とくにヨーロッパに駐在した最後の4年弱はドイツでしたが、DTMをはじめWRCなどが非常に盛んで、それらが自動車のビジネスに役立っていることを目の当たりにしてきました。こういうことをニスモやニッサンの中でやっていきたいと思っています」
●ニスモブランドの確立に向けて。ロードカーを世界でも
ニスモは近年、ニッサンのモータースポーツ活動を担うだけでなく、例えばメルセデスベンツにおけるAMGや、BMWのMブランドなどと同様に、ニスモの名を冠したコンプリートカーやパフォーマンスパーツなど、ブランドとして世界的にその存在感を増している。片桐新社長は、「ニスモをニッサンのパフォーマンスブランドとしてきちんと確立していきたい」と今後もブランド発展を目指すと語った。
「ヨーロッパの会社はそれぞれパフォーマンスブランドをもっていて、ロードカーの販売を含めて非常にいいイメージを作っていることを、とてもうらやましく思っています。ニッサンでも、ニスモというブランドをしっかりと育て、世界的にも確立していきたい」
「そのためにいま、注力しているのがニスモブランドのロードカー販売です。日本では6車種が出ていますが、これを世界でも実現していきたいと思っています。ただ、今はひとつひとつ苦労しながらゲリラ的に出している状況なので、それをもっとシステマチックにしたいと思っています」
●「やはりニスモは強くなければいけない」
ただ、ニスモブランドの知名度向上には、ニッサン/ニスモがモータースポーツで強さを発揮することが必要だ。片桐新社長が例に挙げるヨーロッパのパフォーマンスブランドは、いずれもモータースポーツの長き歴史のなかで伝説を築き、ファンへの購買意識を向上させている。
片桐新社長もその重要さを認識しているようで、「そのための柱として、やはりニスモは強くなければいけない。レースで結果を出し続けていかなければならないと考えています」と語っている。
ファンとして気になるのは、そのためにどのレースで活動するかだ。日本ではスーパーGTを中心とした活動がメインだが、気になるのは世界での活動。「レースの戦略についてもニスモだけで決めるのではなく、ニッサンとともにモータースポーツの計画を策定・実現し、ニスモブランドに転化することで、実際にそうしたバージョンのクルマをお客様が購入できるという、いいサイクルを作っていきたいと思っています」と片桐新社長。
「私自身もそうですが、ニッサンファンのモータースポーツ、およびニスモへの期待は非常に高いと思っています。そうしたお客様の期待に応えるためにも、ニスモブランドのさらなる拡大、またその根幹となるモータースポーツでの好成績を日本はもちろん、世界でも実現していきたいと思っています」
ちなみに、今後のニッサン/ニスモのモータースポーツ活動について、より具体的な内容はないか? という質問に対しては「中期計画はこれから作るところですが、すべての可能性を探ろうと調べているところです。レース、ラリー、その他各国または世界戦まで聖域を設けず洗い出して、どれがニッサンにとっていいのかを判断したいと思っていますが、それはこれからです」と語っている。
●モータースポーツ参加の経験も。片桐新社長の手腕に期待
昨今の世界中のモータースポーツでは、クルマの開発と市販車へのフィードバックという面はまだ重要な存在意義ではあるものの、プロモーションへの活用という意味合いが非常に重要なポイントになっている。その点では、マーケティングを長年担当してきた片桐新社長の手腕は大いに期待したいところ。
また、片桐新社長は自身もかつて、イギリスでラリーに挑戦したり、ジム・ラッセル・レーシングスクールに参加するなど、「学生時代に自動車部でモータースポーツを経験していて、その後も趣味でアマチュアのモータースポーツに関わってきました。どちらかといえばラリーの方が好きですが、そういう意味では、ユーザーさんの気持ちを多少は理解していると思っています」とモータースポーツへの熱意もある。
まずは新社長就任後、MOTUL AUTECH GT-Rが開幕2連勝を飾るなど、ニスモは好発進をみせている。今後のニスモがどう発展していくのか、片桐新社長の手腕に注目したいところだ。