2016年05月06日 07:31 弁護士ドットコム
夫の考えた子どもの名前が「ヤンキーマンガ」に出てきそうなもので困っているーー。生まれてくる子どもの命名に悩んでいる妻の投稿が、ネットの掲示板で話題となった。
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投稿者の家庭では、もうすぐ第二子が誕生する予定。性別が男とわかってから、夫婦でお互いに名前の候補を出し合ったところ、ヤンキーだったわけではないのに、夫の出す案が「デコトラとかヤンキーバイクに書いてそうな漢字ばかり」なのだという。
夫は自分の案を一歩も譲らない姿勢を見せているようだが、投稿者は夫が提案した名前は避けたいと考えている。夫が提案した名前を命名することを阻止できるのだろうか。子の命名について、法的ルールはどうなっているのか、濵門俊也弁護士に聞いた。
「子どもに名をつける権利(命名権)が誰にあるのかということについては、民法はもちろん、戸籍法にも明確な規定はありません。
ただし、戸籍法52条1項は、子どもが生まれた際、出生の届出をする義務がある者を父母と定めています。
このことから、父母が共同で命名して、出生の届出を行うことを当然の前提としていると考えられています」
濵門弁護士はこのように指摘する。夫が勝手に命名することを、妻は阻止できるのか。
「夫が勝手に子どもの名前をつけることはできませんので、投稿者は、夫が勝手に名前をつけることを止めることができます。
ただ、その裏返しとして、妻も単独で子どもの名前をつけることはできません。
結局のところ、夫婦でよく話し合って決める必要があるといえるでしょう」
もし、夫に押し切られて、夫の提案する名前に折れてしまった場合、後で後悔しても遅いのだろうか。
「どうしても納得できない場合は、出生届が出された後でも、改名を申し立てることができます。
『正当な事由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない』(戸籍法107条の2)とされています。
『正当な事由』としては、いろいろな要素が考えられますが、今回のケースでいえば、夫のつけた名前が、いじめや差別を助長する、珍奇で社会生活上支障をきたすといった主張が考えられるでしょう」
そもそも、子どもの名前自体に制限はないのか。
「人の名に関する法的な規制は、戸籍法50条1項が、『子の名には、常用平易な文字を用いなければならない』と規定しています。
また、戸籍法施行規則60条は、常用漢字、人名用漢字、変体仮名を除く平仮名又は片仮名の使用に限定し、一定の制限を設けています。
こうした制限を除けば、親(父母)は、原則として自由に子どもの名前をつけることができます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://hamakado-law.jp