若手起業家向け「Foundrマガジン」の発行人であるナタン・チャン氏は、これまで2年半にわたって65人の億万長者に「成功する起業」についてインタビューしてきました。
そのことを通じ、彼らが「これまで常識と思われていたこと」と反する行動を取っていることを発見し、それを「7つの法則」にまとめてEntrepreneurs誌に寄稿しています。すでに事業を起こしている人にとっても、思い違いを正す参考になるかもしれません。(文:夢野響子)
1.自分が従業員より知っていると考えるのはやめよう
米大統領候補者のトランプ氏のような強力な指導者は、自分が従業員よりあらゆることをよく知っていると信じており、自分に決定権を集めようとします。しかしヴァージングループ会長のリチャード・ブランソン氏は、これとは違ったアプローチを取っていたそうです。
「私はすべての従業員に耳を傾け、彼らに信頼をおき、尊重して、決定権を与えています。自分が彼らよりよく知っていると思ったことはありません」
これは、ブランソン氏をトップに押し上げた理由の一つと言えそうです。
2.小さなことから、今できることを始めよう
起業に当たっては「ビッグに行くか、さもなければ挑戦するな」と言われています。大志を抱くつもりがないのであれば、挑戦する意味がないというもので、水に飛び込んで背後のボートは焼き捨ててしまえ(背水の陣を敷け)という勧めです。
しかしマーケティングの大家でベストセラー作家のセス・ゴーディン氏は、これは新しい起業家には適さないと言います。大物を狙うのではなく「小さなことから、今できることを始めること」を彼は勧めます。
3.顧客は常に正しいとは限らない
「顧客は常に正しい」というのが多くの起業家の考え方ですが、ニューヨークタイムズのベストセラー作家ティム・フェリス氏は、「顧客は常に正しくはない」と言い切ります。価値のない顧客に虐待されてまで、よいサービスを与える必要はない。むずかしい顧客を手放すことで、他の顧客とよりよい関係を結ぶ時間が得られ、長期的には収入も上がるのだそうです。
4.賢くなくても成功できる
「成功するには賢くないといけない」と思われているため、自分は頭がよくないと感じる多くの起業家を夢の実現から遠ざけています。しかし顧客分析プラットフォームKissmetricsの創設者ニール・パテル氏は「成功するためには賢くなくてもいい。賢い人々を雇えばいいのだから」と言います。
5.他人ではなく「自分の問題」の解決に焦点を当てよ
成功した起業家は、他人の問題を解決するビジネスをしていると思われがちです。クラウドファンディングIndiegogoの創設者ダナ・リンゲルマン氏は、自分の問題を解決することに焦点を当てよと説きます。
リンゲルマン氏は20代である問題に直面し、それが他人にも同じように影響を与えていることに気づきました。その問題とは「資本へのアクセスの困難さ」でした。
「毎日生まれようとするアイデアが生まれずに終わっているのは、財布のひもを握っている人へのアクセスの欠如のためです。あなたが困難に思っていることは、他人も困難を感じているのです。それが成功するビジネスのアイデアになります」
6.裏庭(なじみのある市場)に投資すべし
起業家は新しい分野のトレンドをいち早く察知し、素早く追いかけて行動することが必要だと思われています。しかしバーバラ・コーコラン氏は、自分にとってなじみのない新市場を追いかけることは、失敗への近道になると説きます。
「私より賢い人たちが、私が儲けたのと同じ額のお金を失うのを見てきました。彼らは自分の裏庭(よく知っている分野)に投資することを忘れていたからです」
7.お金ばかり追いかける起業家は失敗する
多くの人はお金のために事業を始めます。しかし、それが唯一の理由でないことが望ましいです。Marie TV とB-Schoolの創設者マリー・フォーレオ氏は「最も成功している人を動かしているのは、お金よりも深い何か。純粋にお金だけを追いかけている起業家は崩れ去ります」と述べています。
(参照)7 Surprising Lessons About Success Learned From Interviewing More Than 65 Millionaires (Entrepreneur)
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