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マーベルはいかに日本で浸透したか? 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の興行を読み解く

2016年05月05日 08:41  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)2016 Marvel.

 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』、『ちはやふる -下の句-』、『テラフォーマーズ』といった期待作の公開日が重なったゴールデンウィーク初日の4月29日(本動員ランキングの対象日は週末の4月30日と5月1日)。先週末は、正月や夏休みの繁忙期を上回るほど多くの観客が日本全国のシネコンに押し寄せた。そんな中、ワン・ツー・フィニッシュを決めたのはゴールデンウィーク興行において先行ダッシュしていた日米を代表するアニメ作品だった。


参考:驚異の粘り腰興行『ちはやふる』 今週末に「上の句」と「下の句」を続けてみることは可能か?


 3週連続1位となったのは『名探偵コナン 純黒の悪夢〈ナイトメア〉』。土日2日間で動員49万261人、興収5億6225万2800円。動員前週比94%とその勢いにもいまだまったく陰りがなく、累計興収は36億円を突破した。


 もっと驚かされるのは2週連続2位の『ズートピア』。土日2日間で動員44万3249人、興収5億969万9700円と、実は興収では『コナン』を超えて1位。動員においても前週比は135%というすさまじい数字を記録していて、この勢いだと次週は3週目にして1位奪取もあり得る展開。ディズニー・アニメの底力を示したかたちだ。


 さて、本国アメリカに先駆けて欧州や中南米やアジアの一部の国で公開されて、各国で今年最大級となる圧倒的なヒットを記録中の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』。それでも日本では初登場3位という結果に、物足りなさを覚えるマーベル・ファンも少なくないのではないだろうか? しかし、注目すべきは順位ではなく動員と興収の数字だ。土日2日間の動員は32万2943人、興収は4億4880万9900円。初日29日も含めると動員51万5131人、興収7億4708万3100円と、なんとたった3日間で前作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の累計興収を一気に超えてしまったことになる。ちなみに5月1日が映画サービスデイ(ファーストデイ)であったことを踏まえると、潜在的にはさらに興収が上積みされていたに違いない。


 もっとも、単独作としてはディズニー・マーベル最強の興収実績を持つアイアンマンや、本作でディズニー・マーベルには初登場となるアメコミヒーロー知名度ナンバーワンのスパイダーマンまで登場する『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を、単純に『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の続編とすべきではないという声もあるだろう。ならば、比較対象を広げてみよう。2013年、同じくゴールデンウィーク公開、そして同じく本国に先駆けて公開、さらには同じく単独3作目にしてシリーズ最高の累計興収25.7億を記録した『アイアンマン3』の初週の週末2日間の成績は動員27万3776人、興収4億1467万5650円。また、ちょうどその翌年となる2014年のゴールデンウィークにはソニーの配給で、スパイダーマン単独作としては現在のところ最新作である『アメイジング・スパイダーマン2』が公開されている。こちらの初週の週末2日間の成績は動員27万2709人、興収4億2029万7900円。つまり、いずれの作品に対しても、動員、興収ともに『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』がしっかり上回っているのだ。


 ハルクとソー以外のほぼすべてのマーベル・ヒーローが総結集している今回の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』は、実質的には『アベンジャーズ2.5』と呼んでも差し支えのないゴージャスな内容で、作品の完成度もピカイチ。さすがに昨年の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のオープニング2日間の記録(動員50万5521人、興収7億9390万8800円)には及ばなかったものの、同作の最終興収32.1億円にどこまで迫ることができるか、その推移を見守っていきたい。(宇野維正)