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SWANKY OCEAN ACOUSTIX、アコースティック界の“異端児”登場?「俺たちのフィルターを通すと、結局はパンクになる」

2016年05月04日 14:31  リアルサウンド

リアルサウンド

SWANKY OCEAN ACOUSTIX

 SWANKY DANKが別プロジェクトとしてスタートさせたアコースティックバンドSWANKY OCEAN ACOUSTIXが、初のアルバム『THE OCEAN』を完成させた。本作にはメロディアスなポップパンクを鳴らすSWANKY DANKとは一線を画す、ポップスやサーフミュージック、R&Bなどからの影響が強く感じられるオーガニックなサウンドと、伸びやかで心地よい歌声をたっぷり堪能することができる。なぜバンド名を変えてこのプロジェクトを始動させたのか。メンバーのKOHDY(Vo)、YUONE(G, Cho)、TACO(G, Ukulele)、ITI(Per)にその理由を聞いた。(西廣智一)


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■「酒を飲みつつ演奏して楽しむことの延長線上にあるもの」(YUONE)


──SWANKY DANKとして2015年にフルアルバム『Magna Carta』を1月に、シングル『One of a Kind』を7月にそれぞれリリースして、今とても勢いに乗っている印象を受けていたんです。そこで次の展開はどうなるんだろうと気にしていたら、いきなりこのプロジェクトが始まって「おやっ?」と。


4人:(笑)。


YUONE:「なんでやねん?」と(笑)。


──はい(笑)。なので、まずはこのSWANKY OCEAN ACOUSTIX結成のきっかけから聞かせていただけたらと思います。そもそもなぜSWANKY DANKではなく別名義で活動しようと思ったんですか?


KOHDY:俺たちはいつもアコースティックで曲作りをしていて、そこでいろんなタイプの曲ができるわけです。そうやって曲作りを続けていくと、SWANKY DANKでは表現できないような曲も生まれるわけで。そういった曲をSWANKY DANKではなく名前を変えて演奏してみるのも面白いんじゃないかってことで、だったらアコースティックで1枚作ってみようということになったんです。なので昔からこのプロジェクトがあったというわけではなくて、曲作りを続けていくうちにできていった形ですね。ちなみに、今回のアルバムでいうと4曲目「After」と5曲目「River」は10年前にYUONEが作った曲で、ずっとレコーディングせずに残していたんです。


YUONE:この2曲は10年ぐらい前、SWANKY DANKの前身バンドVOXPOPで作った曲で。SWANKY DANKになって一気に音楽性も変わったし、ちょっとこれは置いておこうかってことになったんですけど、今回SWANKY OCEAN ACOUSTIXをやることになったときに「SWANKY DANKとしてはやれない曲をやってもいいんじゃないか」ってことで、あの2曲はいい曲だったから引っ張り出してこようということでやってみました。


──なるほど。それをアコースティックスタイルでリアレンジして。


YUONE:そうです。このSWANKY OCEAN ACOUSTIXは俺たちSWANKY DANKが海辺とかでキャンプファイヤーをしながら、酒を飲みつつ演奏して楽しむことの延長線上にあるものだと思っていて。もともとのきっかけは、合宿に行ったときにみんなで酒を飲んで酔っ払って、ワチャワチャしながら歌い出したこと。それ以前からアコースティックでもライブをやっていたし、俺とKOHDYの2人だけのときもずっとアコースティックで活動していたから、OCEANとして活動することもすんなり受け入れられたんです。ちなみに今回のレコーディングでは事前にいろいろアレンジを考えてたんですけど、レコーディングちょい前ぐらいに全部まっさらに戻して。「一回スタジオに入って、そこで作ろう! あの合宿のノリでやってしまおう!」みたいなノリで作ったので、全員レコーディング初日はソワソワ感がハンパなかったんですよ(笑)。


KOHDY:(SWANKY OCEAN ACOUSTIXの頭文字を取って)SOA……「ソアソア感」ね(笑)。


4人:(笑)。


YUONE:で……今の「ソアソア感」で何を言おうとしてたか忘れたわ(笑)!


■「遊び心でやったのに、逆に周りが困惑してしまって」(KOHDY)


──(笑)。スタジオに入って4人で合わせたときの音が、このアルバムに生かされていると。


YUONE:そうなんです。しかも今回はみんな、自分のパートじゃない楽器にもいろいろトライしているんですよ。例えばボンゴだったりカホンだったり鉄琴だったり。中にはボツになった楽器もあって、特にITIが買ってきたものはかなりボツになりました(笑)。


──ITIさん、ちなみに何を買っていたんですか?


ITI:実は木魚や鈴を買いまして。


YUONE:「チャチャチャチャー」って歌ってるところに、いきなり「ポコ、ポコ、ポコ、ポコ」って木魚の音がするんですよ。なんかイライラしてきて、思わず「返品してこい!」って言っちゃって(笑)。


ITI:僕は良かれと思って用意したんですよ?


YUONE:さらに夏を意識して作った曲ばかりなのに、鈴が鳴ると一気に冬感が出るんです。


TACO:雪山感がね(笑)。


YUONE:そうやっていろいろ試しながら作ったアルバムなんです。


──SWANKY DANKが昼のビーチだとしたら、SWANKY OCEAN ACOUSTIXは夕暮れから日が落ちてのビーチという印象で。名前が違うものの、4人で集まって楽しみながら演奏するというところでは一本筋が通ってるんですね。


YUONE:そうですね。音楽の幅を広げる意味ではOCEANは非常に重要かなと。


──いろいろ納得できました。このプロジェクトが最初に発表されたとき、ちょっと覆面的な雰囲気でしたよね。皆さんの名前も変名ですし。


KOHDY:あれはちょっとした遊び心でやったんですけど、逆に周りのみんなが困惑してしまったという。「なんで? いや、誰だかわかるけど、なんで?」って(笑)。


──名前に「SWANKY」と入ってる時点で、みんな気づいていましたし(笑)。で、お披露目という形で『PUNKSPRING 2016』に出演しましたが、お客さんのリアクションはいかがでしたか?


KOHDY:すごく良かったと思います。それこそSWANKY DANKとしてはまだ出演したことのない『PUNKSPRING』に……。


YUONE:OCEANが先を越しましたからね。そういう点では、SWANKY DANKには申し訳ないなと(笑)。


■「コンセプトが違うぶんメロディや歌詞も自然と変わってくる」(KOHDY)


──アルバム『THE OCEAN』収録曲は先ほど話題に出た2曲以外の新曲は、今回新たに書き下ろしたものなんですか?


KOHDY:1曲目の「Silver lining」と2曲目の「Breeze」、6曲目の「水平線」は夏をイメージしながら作った新曲たちで、3曲目の「Mamorihosi」はSWANKY DANKの「守り星~The Treasure~」(2012年10月発売のミニアルバム『The Love Was Gone…』)をリアレンジしたものです。


──なるほど。SWANKY OCEAN ACOUSTIXとしての曲作りはSWANKY DANKで制作するときとは、違いはありましたか?


KOHDY:ちょっと違いましたね、歌詞も日本語が多いですし。あと、SWANKY DANKは俺たちが今カッコいいと思うことを表現するバンドで、OCEANは夏をテーマにしているので、コンセプトが違うぶんメロディや歌詞も自然と変わってくるんです。


──特に本作は夏の中でも晩夏というか、夏が終わりゆく切なさが感じられて。しかも歌詞の世界観やちょっとした言葉遣いにしても、絵が浮かびやすくて映画的。そこがSWANKY DANKとは違うなと。


KOHDY:それはすごく嬉しいですね。


YUONE:歌詞も夏のワチャワチャした感じというよりはシリアスなものが多くて。聴いてくれた人がただ楽しいだけじゃなくて、いろんなことを感じてくれることをイメージしながら日本語多めで歌詞を書いたんです。OCEANは芯の部分が真面目というか、肩の力を抜いて聴いてほしいですね。SWANKY DANKのほうはやっぱりテンションを上げたいときに聴いてほしいけど、OCEANのほうは何かをしながらBGM的に聴いてもらってもいいし。だから後で曲を聴いて「あのとき掃除してたな」とか「ごはん作ってたな」とか、日常の思い出に残るようなアルバムにしたいというか。


──メロディの節回しだったり、ちょっとした組み立て方もSWANY DANKとは異なりますよね。これは普段とは違う楽器によって引き出された部分もあるんでしょうか?


KOHDY:ありますね。それにOCEANの曲はノリが跳ねてる感じなんで、メロディもそれに付随していつもとはちょっと違う譜割になったり。


YUONE:あとは音数が少ないぶん、歌のニュアンスも伝わりやすいし。バンドだとタイトに歌わなきゃいけないところも、OCEANでは少しユルい感じにできるのも面白くて。


■「アイデアを出し合って、遊びながら作れた感じは強い」(TACO)


──同じメンバーで演奏しているので、ノリの部分は一貫してるのかなと思うんですが、楽器の編成や曲調によって変わってくるものなんですか?


YUONE:例えばドラムとボンゴでは叩き方もまったく違うし、ギターもエレキとアコギとでは違ってくる。そこにウクレレとか今まで使ったことのない楽器も入ってくるので、グルーヴ感はSWANKY DANKとは違った感じになると思いますよ。


──なるほど、楽器の組み合わせによって変わると。それにしてもウクレレが入るというのは、SWANKY DANKからしたら異色ですよね。


TACO:ですよね。テーマが夏だったので、ウクレレみたいに夏っぽい音を入れたいと思って。最初はレコーディングで使う予定はなかったんですけど、進めていくうちに「やっぱり入れたいね?」って話になったんです。でも俺、ウクレレはまったく弾けなかったんですけど、1日だけ超練習して臨んで。実際いいスパイスになったかなと思ってます。


──アコギと重なることで、今までになかったハーモニーが感じられますよね。


TACO:そうですね。それによってまた双方のフレーズも変わってくるし。


YUONE:そこで、お互いからインスパイアされるものも多かったですね。逆にこれはいらないねという、引き算的な考えもできるようになったし。


──リズムに関してはどうですか? 普段のパワーや勢いで表現するドラミングとは異なるわけじゃないですか。


ITI:今回はボンゴとかカホンとか使ったことのない楽器ばかりだったので、そういうところではちょっと苦労しましたね。


YUONE:手がパンパンに腫れてたもんね。


ITI:でも夏といったらボンゴの騒がしいイメージがあったので。で、その使いたい楽器を全部集めた結果、後で引き算することになっちゃったんです(笑)。


4人:(笑)。


KOHDY:でもカホンにペダルをくっ付けて、ペダルでバスドラ代わりに叩いて、こっちでボンゴを叩いたりして、面白いリズムになってるんじゃないかなと思いますよ。たぶんボンゴを極めてる人たちはこういう発想にはならないだろうし。


ITI:ど素人だからこそ生まれた組み合わせというか。ボンゴだけだとちょっとリズムに物足りなさがあって、そこにカホンのキックの音が入ることによってもっとずっしりするんです。


KOHDY:バンドっぽくなるよね。


ITI:うん。単なるアコースティックじゃなくて、バンドに寄せた感じというか。実際にライブで演奏することを踏まえてやっていたんで、そういう意味ではいろいろ機材を調べることも楽しかったです。


──音数を減らしつつも、バイオリンの音も入ってますしね。


ITI:みんな、レコーディングのときに聴き入っちゃったよね。


YUONE:バイオリニストの方から「これでいいですか?」って聞かれて、どう返事していいのかわからなくて。誰も「大丈夫です」以外言えないっていうね(笑)。


KOHDY:そういう意味でも楽しいレコーディングを通じて、いいアルバムが完成したなって気がします。


TACO:アイデアもたくさん出し合って、遊びながら作れた感じは強いです。


■「SWANKY DANKもOCEANも、やっぱりライブバンド」(YUONE)


──ボーカルのレコーディングも、SWANKY DANKのときとは異なるわけですよね?


KOHDY:そうですね。基本的に俺は歌のみだったんですけど、バンドサウンドだと聞こえないような歌の細かなところがどうしてもがっつり聞こえてくるから、感情の入れ方や歌詞の言い回し、発音の仕方にはすごくこだわりました。特にバラードではすごく気にしながら歌いましたね。


YUONE:歌の録り方もSWANKY DANKのときとはちょっと違っていて。ブレスだったりちょっとしたニュアンスが出るような録り方をしたので、そのへんは大きな違いですね。


──声を裸にされる感じがあると。


KOHDY:はい。アコースティックだとモロに出てきちゃうんで、声の出し方ひとつにしてもかなりこだわりました。


YUONE: SWANKY DANKだとサビでボーカルをダブルで録ったりしてインパクト重視にするんですけど、今回はどれもシングルなので1つひとつの音がキレイに聞こえるんじゃないかな。


──ギターはどうですか? アコギ中心というところでも、普段との違いは大きいわけですが。


TACO:デカいですね。ピッキングひとつにしても全部ダイレクトに出るんで、そこはすごく気を遣って弾きました。逆に今後、この経験がエレキにも活きてくるんじゃないかな。


YUONE:SWANKY DANKもOCEANもどちらにも共通しているのが、やっぱりライブバンドってこと。OCEANに関してもライブでできることを想定しながらいろんな楽器を入れていったことが、今回はすごく勉強になって。それこそ最初は打ち込みも入れようとしてたんですけど、やっぱりやめようと全部取っ払ってごまかしが効かないように、茨の道じゃないですけど自分たちから恥ずかしい道へ……グラビアを撮ったみたいな感じになりましたね。


4人:(笑)。


──それを10年近く活動しているバンドが今、このタイミングにこういう形で挑戦するという姿勢がすごいですよね。


YUONE:ですね。まあ若くはないですけど(笑)、いくつになっても挑戦、挑戦ですよ。


──そういえばアルバムの最後に、シークレットトラックが入ってますが……。


YUONE:(ITIに向かって)よかったね、触れてもらえて(笑)。


ITI:俺も忘れてたからね。


──あ、これはITIさんが歌っているんですね?


ITI:はい。これはふざけてじゃなくて、本気で歌いました。でも途中で喉が痛くなって、結果咳が出てしまったという。


──本気のわりに、歌詞があやふやじゃないですか(笑)。


ITI:その場でいきなり行け!って言われたんで、一発勝負だったんです。でも完全に素人ですよね(笑)。


──6曲終わって余韻に浸っていると、いきなりこれが始まるわけですから。


YUONE:「これいる?」ですよね(笑)。


──でも、このユルさを含めてのOCEANなのかなと。


YUONE:そうですね。ただ、歌詞は真面目ですよ。伝えたいことが強いぶん、SWANKY DANKとは違って日本語詞の比率が多いわけですから。


■「結局どこまでいっても、OCEANはパンク」(YUONE)


──ストリートミュージックという枠で考えると、OCEANのようなサーフミュージック的な音楽もパンクとも通ずる部分があると思うんです。


KOHDY:そうですね。ポップパンクをアコースティックにすると、結構こういう感じになるんじゃないかな。


YUONE:結局どこまでいっても、OCEANはパンクなんですよ。俺は基本的に、OCEANのことをアコースティックパンクだと思っているので。ポップスだったりサーフミュージックだったりR&Bだったり普段の生活の中でいろいろ聴く機会がある中で、それらを俺たちのフィルターを通してやったとしても、結局はパンクになるんだろうなと。ずっとこういうサーフミュージック的なものをやってきた人たちからすれば、俺たちがやってるこの音楽はサーフミュージックじゃないのかもしれない。でも俺たちはサーフミュージックのつもりでやってなくて、アコースティックパンクとしてやってるつもりなんです。


──なるほど。


YUONE:だからどういうジャンルなの? と言われたら、俺たちが新たに作ったジャンルなんだと。なので、サーフミュージックをやってる人たちからしたら「それは違う」と思われるようなことも平気でできちゃう。それは俺たちがロックでありパンクであるから、やってる音楽もその手法もそうなんだと思うんです。


KOHDY:そういう意味では、アコースティック界の異端児ですね。結果、どこにもない音楽を作ったなという気はしていて、サーフミュジックを改めて聴いてみても俺らの雰囲気とはどこかちょっと違うし。


──5月27日にはリリースパーティも控えてます。現状持ち曲は6曲ですが、ライブでは他にも演奏するわけですよね?


KOHDY:もうカバーしかないですよね。SWANKY DANKの曲をやるのもちょっと違いますしね。


YUONE:極力やらないほうが差別化はできるかなと。


──そこはフレキシブルに対応していくと。にしても、どんな曲をカバーするのか、とても気になりますね。


KOHDY:それはもう、ライブに来て確認してもらえると(笑)。


──ではOCEANは今後も、SWANKY DANKと並行して活動していくんでしょうか?


KOHDY:そこもユルく考えていこうかと。


YUONE:夏だけ活動するとか。


KOHDY:「そろそろ異端児の季節だね?」と(笑)。


TACO:もしくはオリンピックみたいに4年に1回とか(笑)。


KOHDY:まぁOCEANに合ういい曲ができたらやるかもしれませんし。SWANKY OCEAN ACOUSTIXをはじめたときと同じような感覚で、これからの活動もマイペースにできたらいいかなと思います。