2016年05月03日 10:21 弁護士ドットコム
年収1200万円の夫が、生活費6万円しか渡してくれない。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある女性から相談が寄せられました。
女性は0歳の子どもと夫と3人暮らし。夫の年収は約1200万円(月収換算で100万円)ですが、生活費を月に6万円しか渡してくれないそうです。女性は6万円から自分の保険代や携帯代を支払い、さらに、食費や日用品、子どもの物を買うとお金はほとんど残りません。「病気などで病院に行ったりするお金がありませんし生活以外自由になるお金がありません」と嘆いています。足りない生活費は自分の貯金を崩して、捻出しているそうです。
夫に生活費が足りないと告げても「6万で生活できないなんておかしい!」と言われるだけで、増額の見込みはなさそうです。女性は、「改善されない場合は保険等の解約と、働くしかないと思っていますが婚姻費用分担という物があることを知りました。上記のような場合も適用されるのでしょうか」と質問しています。妻は夫に対して、生活費を増やしてほしいと求めることができるのでしょうか。依藤祐介弁護士に聞きました。
● 婚姻費用は20万~22万円が基準
民法760条は「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生じる費用を分担する」と定めています。これが婚姻費用分担です。要するに、夫婦の生活費を収入などに応じて負担する義務があるということです。これは最低限の生活費を意味するのではなく、収入に応じた生活費を負担する義務があることを意味します。
裁判所が公表している養育費・婚姻費用算定表によれば、夫が給与所得者であり、妻に収入がない場合、婚姻費用は20万円から22万円が基準となります。なお、算定表はあくまでも参考資料であり、裁判所の判断が算定表の基準と必ずしも一致するものではありません。
婚姻費用分担請求を行う事例は別居しているケースが多く、算定表も別居を前提に作成されています。しかし、同居中であっても、婚姻費用分担義務を負っていることに変わりはありません。
日常の生活費用を月額6万円でやりくりするということは、夫の1200万円という年収を考慮すると、夫は収入に応じた婚姻費用分担義務を果たしているとは言いがたいでしょう。ただし、同居していることで、妻に住居費を負担する必要がない場合、算定表の基準よりも低い金額になることが想定されます。
婚姻費用分担請求は、家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てて請求できます。調停で話がまとまらない場合、裁判所が審判という形で、婚姻費用額を決定することになります。調停が成立した場合や審判で婚姻費用額が決定された場合、夫はこれに従う義務があります。
【取材協力弁護士】
依藤 祐介(よりふじ・ゆうすけ)弁護士
立命館大学文学部を卒業後,平成19年弁護士登録。交通事故,労働事件,家事事件,企業法務等様々な案件に取り組んでいる。
事務所名:明尾寛法律事務所