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辻真先×水島精二「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」ゲストライター超人対談企画 第2回

2016年05月01日 20:02  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

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現実の日本とは異なる歴史を歩んだ「もうひとつの日本」を舞台に、多彩な“超人”たちによる饗宴を描く『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』。4月より放送スタートした第2期では、豪華ゲストライターの参加で大きな話題を集めている。虚淵玄、辻真先、中島かずきと、どれも“超人クラス”だ。
そこでアニメ!アニメ!では、『コンレボ』制作陣と、ゲストライター陣との連続インタビューを企画。第2弾となる今回は、5月1日放送の第17話「デビラとデビロ」を担当した辻真先氏と、水島精二監督との対談を届ける。第9話「果てしなき家族の果て」では、永遠を生きる「不死の家族」を描いた辻氏だが、今回はどんな物語を見せてくれるのか? そこに込めたものとは?
[聞き手:数土直志 取材・構成:沖本茂義]

『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~ THE LAST SONG』
http://concreterevolutio.com/
TOKYO MX毎週日曜23:00より/サンテレビ毎週日曜24:30より/KBS京都毎週日曜23:00より
BS11毎週火曜24:30より

■ 第2期で描くのは「空間の拡張」

――まずは、第2期に突入した『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~THE LAST SONG』全体について、水島監督にお聞きしたいです。第1期と比べて違うポイントは?

水島精二監督(以下、水島)
連続した物語なので大きな違いはないですが、第1期は「爾朗が超人課を離反するまで」を主軸に描いていたのに対し、2期はその後の「爾朗が超人課とどう対立しているの?」という話がメインとなります。過去に遡ったりすることも少なくなっているので、構成としては分かりやすくなっていると思います。

――辻さんは第1期の第9話「果てしなき家族の果て」でも脚本を書かれましたが、今回あらためて意識されたことは?

辻真先氏(以下、辻)
「似たようなものを書いてるな」と思われたら困るので、変化をつけようと。1期では、「不死の家族」を題材として「時間軸の拡張」を描きました。第2期は「空間の拡張」を描こうと。それで地底から宇宙空間まで描いています。

――それはどういった着想で生まれたんですか?


昭和30年代の終わり頃だと思いますけど、『S-Fマガジン』に掲載された一枚のイラストがとても印象に残っていて。宇宙空間にパリの下水道のようなトンネルがあって、そこからどんどん水が滴り落ちている……。理屈を考えれば、重力がないので水なんか落ちるわけないんですが(笑)、とにかくその絵だけは鮮明に覚えていて。それをお話にできないかなと。ただ、『コンレボ』は地球の超人の話だから「難しいかな」と思っていたんですが、相談してみたら快諾いただきまして。それで書かせてもらいました。

水島 
アイデアとしてとても面白かったです。第1期では「不死の家族」であるサナエさん一家のお話を書いてもらいましたが、スケールが広がっていく感覚がとても新鮮でした。「今のライターだとこういう広げ方はしないよね」と。ラストに人間の小ささを実感させられるあたりも「自分たちに触れられない何かがあるんじゃないか」とすごくロマンがあって。“超人”の枠にとどまらないスゴいものを書いて下さったので、ぜひもう一本お願いしたいなと、第2期でも参加をお願いしました。


――水島監督は今回シナリオを読まれたご感想はどうでしたか?

水島
辻さんのお言葉にもありましたけれど、前回は「時間の拡張」でした。で、今回読んでみたら「話デカイ!」とこれまた衝撃を受けて(笑)。地底からはじまり、地上に出たかと思ったら、最後は……そのあたりにセンス・オブ・ワンダーを感じて、すごく面白くなりそうだなと。
ただ、スケールが大き過ぎるがゆえに画づくりでは工夫が必要となるなと。そこで細かい設定にとらわれるよりも、気持ちの良い画をつくっていこうと考えました。マンガっぽい画づくりができる方ということで、芦野芳晴さんに絵コンテをお願いしました。芦野さんには僕が監督した『はなまる幼稚園』で「キグルミ惑星」という歌のエンディング(第2話)を担当してもらって、その回はマンガ絵な感じでスペースオペラをやってもらったんです。今回も「あのノリで」とお願いして描いてもらいました。
辻さんのシナリオの話に戻りますけど、とにかく刺激を受けました。大ベテランの先生がこんなに若い本を書くんだと。


『名探偵コナン』も書いてますからね。

水島 
それに僕よりもいろんなフィルムを観てらっしゃって、すごくお若い先生だなと。今回も一緒に仕事できて嬉しかったです。

辻 
ありがとうございます。この次やるんだったら異次元、パラレルワールドの世界でも描こうかなと。

水島 
それは面白そうですね(笑)。


今、講談社ノベルスで書いている「未来S高校航時部レポート」がそうなんです。土方歳三をパラレルワールドに持ってきて、量子力学の要素も取り入れている。アニメというのは実写と違って何でもできるはずですが、今のアニメを観ていると、まだやってないことも多い気がしていて。そのなかで「永遠」や「無限」など自分が書きたいものを書いていきたい。若いときにそういうのをやろうとすると叱られるんですけど、これだけ歳を取ってしまったら大威張りで書けるんじゃないかと(笑)。



■ 「昭和」をポップなビジュアルで描く意味は?

――「昭和」をテーマとした作品ですが、辻先生はシナリオではあまりそこに触れていない気がします。ただ、新宿の描写が印象的でした。


新宿駅西口の地下一帯は、当初は広場としてみんなで集まってフォークを歌ったり、詩を売ったりしていたんです。けれど、みるみるうちに「通路なんだから立ち止まってはいかん」と騒ぎになったんです。そのころ僕は『少年キング』で、新宿西口で詩を売っている女の子を主役とした物語も書いていたぐらいで。だから、あれはほとんど実体験とも言えますね。

――水島監督は作品全体として「昭和」をどのように描こうと?

水島
僕は昭和41年生まれなので、作中のモデルになっている昭和40年代のときは子供で、当時のことはよく覚えていないわけです。だから当初は、子どもの頃の原体験の総括として、当時のヒーロー番組などを題材にメタフィクションとして描こうと。ところがもっと前の時代からはじまったので「全然知らないよ!」と(笑)。リサーチャーに入ってもらい時代考証もしっかりしないといけない。そのうえであえてウソをついたりしているので、ものすごく労力がかかっています。
最初はひと目見て「昭和だ」と分かるような画づくりも考えていたんです。ただそれだと、若い子に「自分たちの話じゃない」と思われてしまうかもしれない。それで現在のようにモダンアートっぽいビジュアルを採用したんです。

辻 
では、最初はリアルな昭和を描こうとされていたと?

水島 
ええ。結果的に、ポップな方向に転換してよかったと思います。『コンレボ』は『アベンジャーズ』と同じでヒーローをクロスオーバーさせた世界観なんだけれど、日本が舞台なのでリアルにやってしまうと絵的に地味になっていたかもしれない。実際に出来上がったストーリーもものすごく昭和っぽいですし。


あのデザインでちょうどいいぐらいですよ。延々と「木造の瓦葺きで」とやられたんじゃ、わたしも小津安二郎やるつもりないですからね(笑)。ただ、最初はあんなポップな感じというのはまったく考えてなかったので、アニメの絵を見せられて目をパチクリで。これは面白くなるんじゃないかと。

水島
もともと「昭和」がモデルということで、設定などディテールに視聴者の気持ちがいってしまうのを危惧していたんです。ああいうポップな絵柄にしたことで、おおらかなウソがつけるようになったのも良かったです。時代考証をリアルを突き詰めても、それが自慢になるだけで面白くなるわけではないので。もちろんきちんと調べたうえで、ですけど。


辻 
以前、水島監督と會川さんでつくられた『大江戸ロケット』は時代考証が徹底されていて素晴らしかったです。時代小説書いてくる人たちに「『大江戸ロケット』見なさい」とよく薦めているぐらいで。映画の江戸のセットを見たって、元禄だろうと文政だろうと、明治維新も全部同じセットになりがちですから。そこへくると、『大江戸ロケット』は当時の長屋がきちんと描かれていました。

水島
あれは會川さんの「時代劇」のなせるわざで。會川さんが当時の長屋や井戸なんかを口頭で説明したのを僕らが聞いて、記念館に調査しに行ったりと徹底して調べたんです。実は『コンレボ』と『大江戸ロケット』はすごく密接していて。今回、美術監修として参加してもらっている松本浩樹さんも『大江戸ロケット』からのつながりなんです。

辻 
そうだったんですか。

水島 
『大江戸ロケット』のとき美術をアウトライン化してイラストチックにしたんです。それで手応えを感じたので、『コンレボ』でも同じ方法論でやってみようと。近年はフォトリアルに寄せた美術が多くなっていますけれども、アニメなんだからもっと自由でいいと思っているんです。
ただ、最初のころはアニメーターから「距離感が掴みづらくてレイアウト切りにくい」という声も多くて(笑)。演出を工夫したり、数をこなしているうちにそれはなくなってきましたけど。


■ 説明し過ぎないことで生まれる面白さ

――作品から少し話題が逸れますが、辻さんはテレビアニメ草創期から活躍されている脚本家ということで、昔と今でアニメの違いはありますか? 物語面でいかがでしょう。


それは変わってないと思いますよ。

水島
僕もそう思います。物語は普遍的なことだと思うので。辻先生の本を読んで古いとはまったく思わなかったし。面白い物語の構造というのは変わらなくて、世相を反映したりと肉付けの仕方に個性が出てくる。そういう意味では、「物語が消費尽くされてもう何もない」というのはないと思います。

――あらためて今回の第17話の見どころを教えてください。

水島
ゲスト超人としてデビラとデビロという姉弟が登場します。本編であえて語られないところがあって、「行間を読む」楽しさがあると思います。とくに昨今は説明過多な傾向にあるので、こういう夢のあるお話というのは本当にありがたいですね。


「夢」というのは、説明が少ないからこそ夢になるんです。全部言ってしまうと「歴史」になってしまうから。

水島 
そういう意味でいうと、『コンレボ』はどのお話も良いバランスになっているんじゃないかなと。ひと昔前はとにかく説明を語るみたいな作品が流行り、現在はキャラクター中心主義なところがある。若い子は会話のなかでキャラ同士の関係性が見えるものが好きですよね。でも『コンレボ』はそういった作品とは違っていて、「世界を描く」ということをすごく意識しています。そういうなかでも第17話は夢のあるお話で僕は大好きです。


――水島監督にお聞きしたいのですが、今後『コンレボ』はどういう結末に向かって進んでいくのでしょうか?

水島
正義というものの多様性や、超人と呼ばれる特殊な力を持った存在が社会においてどのような結末を迎えるのか、そのあたり第1期から振っているネタはきちんと回収していきます。ドラマにもきちんとリンクしているので、「最終的に人吉爾朗はどういう決断を下すのか」など楽しみにしていただきたいです。僕としても、すごく納得のいくお話に仕上がりました。


僕は先の物語を全然知りませんから、言わないでくださいね。たねを知ってから手品を観ても面白くないですから(笑)。

水島
あはは(笑)。


會川さんはそういった伏線を抜け目なく回収されると思うんですよね。『大江戸ロケット』でも「こう持ってくるのか!」とものすごく興奮したんですが、論理や理詰めできちんと物語を積んでくる。『コンレボ』でも物語が進むにつれてヒートアップしてますからね。それを受け止める水島監督は大変でしょうけど(笑)。

水島
でもやっぱり情感がガーッと立ち上がってくるものがないといけない。説明に終始しちゃうと面白くないですからね。會川さんの本はそのあたりのバランスが絶妙で、そこが魅力だと思います。一緒に仕事をしている最中は「しんどいな……」なんて思うんですけど(笑)、やり切ったあとは「また一緒につくりたいな」という気持ちになるんですよね。

――最後に辻先生、『コンレボ』全体の見どころをお願いします。


“ごった煮”なところでしょうか。それも弱火でトロトロと煮るのではなく、一度下味をグッとつけておいてから高熱で一気に煮立てる感じ。それぐらい手間をかけてつくっているのがひしひしと伝わります。だから観ている人には、骨までしゃぶりつくすように観てほしい。そうでないと損ですから。

――視聴者もつくり手に応えるように観てほしいと。本日はありがとうございました。




『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』Blu-ray第5巻
発売日:2016年4月27日(金)