F1ロシアGP、予選後の最大の関心事は、やはり2戦連続でパワーユニットにトラブルが発生したルイス・ハミルトンだ。メルセデス・チームの記者会見は他チームが終わってから最後に予定されており、多くのメディアが出席。会見でトト・ウォルフは「メルセデス製のパワーユニットを積むマシンが8台いて、そのうち7台はまったく問題が起きていないのに、なぜか1台だけが2回もトラブルを抱えたことは我々の理解を超えている」と頭を抱えた。
さらにウォルフは「ルイスのドライビングとは関係ないので、レースでも、これまで同様に走ってもらう」と語った。
気になるのは、レースに向けての交換作業だ。ウォルフは「トラブルが発生したMGU-Hを交換するのはもちろんだが、現在、他に何を交換すべきかを確認している」と明言を避けたが、チーム関係者によれば、パワーユニットそのものを全交換することになるようだ。
ただし、現時点でハミルトンは予選10位なので、ピットレーンスタートになることを避け、マシンのセッティングはいじらず、10番手からスタートさせるつもりだという。
また、ハミルトンのトラブル原因がわかっていない以上、チームメイトのニコ・ロズベルグに対して、パワーユニットの使い方に関して安易に変更を与えることもしないという。
会見場に姿を見せたハミルトンは、さすがに元気がなく、うつむき加減のまま話はじめた。
「テストでは1日800kmも走って何の問題もなかったのに、突然2回も続けて起きるなんて……しかも、同じ場所が……」
ただし質疑応答を繰り返していくうちに、いつものように強い精神力を見せた。
「もっと悪い日々もあった。こんなの、まだマシなほう。僕は23年間もレースをしていて、いいときもあれば、悪いときも何度も経験している。それが3度のワールドチャンピオンになれた要因でもある。だから、この苦難を乗り越えて、4度目にたどりつきたい」
気になる決勝のタイヤ戦略だが、今回は過去3戦のように戦略が分かれることはなさそうだ。レースではミディアムを使用するドライバーはおらず、ソフトとスーパーソフトがメインとなるからだ。しかもピレリのシミュレーションによれば、スーパーソフトでスタートしても、ソフトでスタートしても、どちらも1回ストップとなり、ゴールまでのタイムもほとんど変わらないという。したがってタイヤを自由に選択できる11番手以下のドライバーに、ピット戦略によるアドバンテージもほとんどないと考えられる。
ちなみにスーパーソフトでスタートした場合のピットストップは18~20周。ソフトでスタートした場合は、33~35周と予測されている。
そうなると唯一、レースで波乱要素となるのはセーフティカーだ。もし20周より前のタイミングでセーフティカーが導入されれば、スーパーソフトでスタートしたドライバーが有利となる。逆に35周目以降の適切なタイミングでセーフティカーが入れば、前車との距離が縮まったところで、強いグリップのスーパーソフトタイヤに交換できるドライバーたちが有利となるだろう。