2016年05月01日 09:51 弁護士ドットコム
性病などの感染を予防するためにも、妊娠を望まない男女が性行為をする際には、コンドームなどの避妊具を付けるのが一般的です。ところが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、「知らない間に相手がコンドームに穴を開けていた」という驚愕の事態に見舞われた男女から、相談が寄せられています。
【男性編】「妊娠した元カノが『シングルマザーになっても産む』」
「こっそりコンドームに穴を開けられ、元彼女が妊娠してしまいました。別れた後も会ってセックスをしていた僕にも非はありますが、結婚の意思もない人に対してそのような行為をする彼女を許せず、結婚はできない、できることなら堕ろして欲しいと伝えたものの、彼女は聞く耳を持たず、シングルマザーになったとしても産むの一点張りです。
このような場合、僕は認知や養育費の支払いを拒否することはできるのでしょうか?」
【女性編】「膣からゴム片が出てきました」
「膣からゴム片が出てきました。ちぎられたのでゎなく、ハサミか何かで切られたようなものです。もしこれで妊娠していたら相手に慰謝料等請求できますか?」
相手に黙ってコンドームに穴を開けて性行為をすることには、法的にどんな問題があるのでしょうか? 足立敬太弁護士に聞きました。
●元カノにはめられた...子どもの「認知」を拒否できる?
まずは男性編から考えてみましょう。そもそも「認知」とは、結婚していないカップルの間に生まれた子を、血のつながった父母が、自分の子であると認めることです。つまり、認知において重要なのは「子と親との間に血縁上の関係があるか」です。
その上で、女性がコンドームに穴を開けたことを男性に隠して行為に及び、その結果として女性が妊娠したというケースを考えてみます。
これは、男性にしてみれば大変納得いかない結果でしょう。しかし、判断基準は「血縁上の関係の有無」です。したがって、DNA鑑定などにより血縁関係があると判断されれば、男性がどんなに認知を拒んでも、最終的には裁判で認知させられる可能性が大きいです。
認知後は、男性に子の養育費の支払義務が生じますし、男性が死亡したとき、子は相続人になります。
ただし、認知は自動的に行われるものではなく、母・子の請求があって行われます(父からの請求も可能です)。したがって、今回のケースでは、まずは当事者間で、認知についてお互いの考え方を話し合うことが重要です。
●穴開きコンドームでの性行為は「犯罪ではない」
では次に、女性編を考えてみましょう。男性がわざとコンドームに穴を開けて性行為をしたり、男性が快楽を得るために、コンドームをつけたフリをして性行為の最中に外すようなことは、何らかの罪に問われるのでしょうか?
女性の性的自由を害する犯罪としては強姦罪・準強姦罪や強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪が成立するかどうかが問題となりえます。
ただ、強姦罪は相手方の抵抗を難しくさせる程度の暴行・脅迫が必要ですが、コンドームに穴を開けたりコンドームをつけたフリをすることはこれに該当しません。また準強姦罪は女性の心神喪失や抗拒不能(抵抗が困難)の状態を利用して、又は女性を心神喪失・抗拒不能にさせて、姦淫することが必要です。しかし、穴開きコンドームやコンドームをつけたフリはこれにもあたらないでしょう。
強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪も暴行・脅迫や女性の心神喪失・抗拒不能を必要としますが、いずれも該当しないので成立しません。したがって、コンドームに穴を開けたり、つけたフリをすることは、基本的に犯罪とは考えられないでしょう。
もっとも、女性がコンドームで避妊することを前提に性交渉を受け入れたのに、意に反して避妊を徹底されないまま性交渉がなされたのであれば、女性にとっては精神的苦痛が生じていると言えます。このような場合は、女性の自己決定権が侵害されているといえ、相手に対して慰謝料を請求できると思います。
【編集後記】知らぬ間に穴を開けられるってにわかには信じがたいですが、当事者としては恐怖ですよね。弁護士ドットコムライフ編集部では、あなたのトラブル体験談をお待ちしています。今回のような男女の驚きのトラブルから、日常のあるある話までなんでも大歓迎です。投稿フォームはこちら(https://www.bengo4.com/life/experience/contact/submit/)。
【取材協力弁護士】
足立 敬太(あだち・けいた)弁護士
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に複数の分野を取り扱う。「常に相談者・依頼者様の視点に立ち、分かりやすい説明を心がけています」
事務所名:富良野・凛と法律事務所
事務所URL:http://www.furano-rinto.com/