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THE SLUT BANKSの大攻勢! 結成20年の心意気明かす「古いロックの焼き直しにはしたくない」

2016年04月30日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

THE SLUT BANKS

 THE SLUT BANKSが結成20周年となる今年2016年に待望のメジャー復帰を果たした。1996年結成、2000年に解散。そして、2007年の復活以降、精力的に活動しており、まさに大いなる逆襲のはじまりでもある。(参考記事:「“死霊軍団”を名乗る異形のバンド・THE SLUT BANKS  紆余曲折の活動史を紐解く」)TUSK(Vo)に所縁のあるキングレコードからのリリース、ということにおいても感慨深く思っているファンも多いのではないだろうか。ニューアルバム『ROXY BABY』は、そんな死霊軍団の華々しいメジャー返り咲きにふさわしい快作であり、グロテスクでセクシーな怪作だ。20年を迎えても決して守りに入らず、更に攻撃性を研ぎ澄まし、容赦なく襲いかかってくる。


 今作は、あえてガツンとイキきらない楽曲構成がゾクゾクする「デコレーションBABY」にみられるようなクラシック・ロックをTHE SLUT BANKS流に昇華させた趣のあるザラついた音像と、これまで以上にバンド感溢れる仕上がりだ。スラット節が炸裂する「I WAIT」、豪快な“がなり”っぷりが気持ちよい「戦場のシンデレラ」をはじめ、ありそうでなかった暴走ナンバー「キラーマン」、艶めかしい歌い出しのTUSKの歌声に思わず、“あの頃”を思い出してしまう「煙の中で」など、これまで以上の振り幅をみせる。DUCK-LEE(Ba / 戸城憲夫)の卓越したメロディセンスとTUSKの独創的な詞世界が重なり、爆音轟音を撒き散らしながら人を喰ったような歌で聴くものを捩じ伏せていく。あらゆるタイプの楽曲でも己のものとして飲み込んで吐き出す、これぞ、THE SLUT BANKSである。


 カネタク(Dr)は、1人20代ながらも百戦錬磨の猛者たちを操るように、捲し立てるようにリズムを司っていく。軽やかでキレのあるドラミングは、今やバンドの要であり、躍るようなベースラインとの相性も抜群。そしてやはり注目すべきは、今作が初参加となったACE DRIVER(Gt / 坂下丈朋)だ。戸城とはThe DUST’N’BONEZなどで活動をともにしてきた旧知の間柄ではあるが、これまでとは毛色の違う音楽性を持つTHE SLUT BANKSへの参加は、バンドの新たな側面を引き出す。ノイジーな歪みで掻き鳴らすパンキッシュなプレイは「ROCK BABY」「GAIN AGAIN」といったあらためて録り直された楽曲の凶暴性を増幅させる。「ノイローゼ」のような70’sロックテイストのナンバーは戸城の十八番であるものの、それをあらためてTHE SLUT BANKSにもたらしたのは、ロックンロールのキケンな香りがプンプンする丈朋のギターなくして生まれなかったものだろう。そして、DIE(Key)や高樹リオ(Backing Vo / ロッカ★フランケンシュタイン)といった盟友がTHE SLUT BANKSの狂騒サウンドに華を添えている。


 さて、死霊軍団は今何を考え、どこに向かおうとしているのか、メンバーに話を訊いた。(冬将軍)


・「やってること自体は変えるつもりもない」(DUCK-LEE)


ーー結成20周年を迎えてのメジャー復帰ですが、心境をお聞かせください。


DUCK-LEE:素直に嬉しいな。正直、こうなるとは思ってなかったんでね、歳も歳だしさ。バンドブームの頃と違って、今は「ロックバンドで……」という時代でもないでしょ。だから、CDこしらえて、こうやって出してもらえるのはありがてぇな。幸せだよね。かといって、やってること自体は変えるつもりもないし、変えようもないし、変えられないんだけど。 
 
TUSK:どちらかといえば、メジャーとか、そういうものはもう完全に疑って掛かってたんですよ。だからどうなるわけではないと思ってたんですけどね。でも、実際レコーディング前からキング(レコード)のスタッフチームが関わってくれて、結果的にすごく良かったなと思ってる。みんな一丸となってやれてるんで、非常に良い状態ですね。


ACE DRIVER:THE SLUT BANKSは20周年だけど、僕は初参加なんで(笑)。


ーー丈朋さんは、これまでも戸城さんと一緒にバンド活動をしてきましたが、あらためてTHE SLUT BANKSへ参加するにあたって、意識したことはありますか?


ACE DRIVER:今までと変わらずやってるだけですね。でも、まさかTHE SLUT BANKSで一緒にやるとは思ってなかったんで、やれてよかったです。20周年に参加できて光栄です。


DUCK-LEE:まぁ、20周年といっても、実働はそんなにやってないんだけど(笑)。「TUSKとの付き合いも20年超えるのかぁ~」なんて、そっちのほうが思うところはあるなぁ。あっという間だよね。『○○ゾンビ化計画』なんてやってた頃から20年。


ACE DRIVER:90年代の話だもんね。その頃、カネタクは何やってた?


カネタク:僕、1987年生まれですから、まだ小学生です。


ーーカネタクさんは、世代もキャリアも異なるメンバーと、20周年を迎えるバンドでともに活動していることをどう感じていますか?


カネタク:みなさん、90年代を代表するロックスターですからね。だけど、正直、結成20年の重みというのは全く感じてないんです(笑)。はじめてTHE SLUT BANKSを聴いたとき、 “今のバンドの音”として聴けたんですよ。だから、こうして一緒にやれてます。年齢の差もとくに感じてないですね。そういうことを感じさせない人柄によるところが大きいと思うんですけど。同世代のパンキッシュなヤツらと一緒にバンドやってる感覚です。戸城さんも、もちろん歳相応な部分もあるけど、最近のバンドもいろいろ聴くし、若いなとも思います。両方の感覚が共存してるんです。それをちゃんと吸収して、バランス取りつつ、アウトプットしているから、すごいなと思うし。


ACE DRIVER:僕からカネタクと戸城さんを見ていても、親子くらいの年齢差があるなんて感じない。すごく良いことだと思いますね。


DUCK-LEE:でも、音楽やバンドに関してはそうだけど、考え方そのものは「コイツ、“ゆとり”だなぁ~」と思うけどね。機材車のレンタカーをぶつけても平然と「修理費は授業料ッスよ」って言っちゃう責任感のなさ(笑)。


(一同爆笑)


・「今の若い世代の人たちに、新鮮に感じてもらえれば」(ACE DRIVER)


ーー今作『ROXY BABY』ですが、今までと変わらない形で制作されたのでしょうか?


TUSK:歌詞で不適切な表現がないように気をつけたことくらいですね(笑)。


ーー再録された曲もありますが、中でも「雨に打たれたとでも思へ」(『極SHOCK』2009年 初収録)は大幅にアレンジが変わりましたね。


TUSK:カネタクと丈朋くんが入って、甦ったニューアレンジだね。


DUCK-LEE:アレンジ困ってたんだよね。「ホテル・カリフォルニア」みたいにしたらどうかな?とか、自分の脳内ではいろいろあったんだけど。最終的にレゲエチックにしてみたらすごくよくて。


ACE DRIVER:最初、特典用で考えてたんだっけ?


DUCK-LEE:そうそう、当初12曲入りアルバムの予定で。1曲、予約特典にしようと思って、この「雨に打たれたとでも思へ」をそれ用に考えてたんだけど、良く録れたので、もったいないからアルバムに入れることになって。それで「夢中よ甦れ」を特典にしようってことになったんだけど、これも意外に良くできちゃったんで、アルバムに入れることになって(笑)。最終的に14曲になった。


ーーギタリストが代わったことで、楽曲やバンドへの変化は大きかったですか?


DUCK-LEE:さすがに『METALLIC JUNK』みたいにはならないけどね。でも、俺自体、メタルより今回のようなロックのほうが得意だから。丈朋のギターはそういうのにはうってつけだし。自分の思い描いていたサウンドになってよかった。


ーーサウンドコンセプトはどのようなものをイメージしていたのでしょうか?


DUCK-LEE:子供の頃に憧れたロックバンドみたいなことをやりたいな、というのがあったね。「デコレーションBABY」「ノイローゼ」あたりの。やっぱり、『It’s Only Rock'n Roll』(1974年)の頃の(ローリング・)ストーンズが大好物だから、ああいう雰囲気が出せればいいなと。かといって、古いロックの焼き直しみたいなものにはしたくない。70年代の機材を使って、アナログレコーディングして、というバンドもいっぱいいるけど、俺らはそういうバンドではないし、そういう風にするつもりもないから。逆にドラムの足をちょっと多めにしたり、当時では考えられないようなアレンジを施すことによって、オリジナリティが生まれるわけ。


ーークラシック・ロックが土台にありつつも、ちゃんと今の時代の音ですよね。それに、THE SLUT BANKS自体が、元来ロックの持つ不良性やアブなさを感じさせるバンドだと思いますし、それがちゃんと音に表れているアルバムだと思いました。


DUCK-LEE:ロック本来のチャラチャラした感じね。「女にモテたいからロックやるぜ、バンドやるぜ」みたいな音だと思うんだよ、楽曲も演奏スタイルも。今は昔と違って「ロックバンドやろう」という子たちも少ないだろうし、楽器が演奏できなくても音楽を作れる時代でしょ。だから、バンドっぽく「せーの」で録った雰囲気を出したかった。ポップやキャッチーな楽曲もあるけど、いかにも作られた感じではなくて、昔っぽい自然な感じでやりたかったから。このご時世、そういうのって中々ないじゃん? だからそれができればいいなと。っていうか、それしかできないというのもあるんだけどね(笑)。


ACE DRIVER:それが逆に今の若い世代の人たちに、新鮮に感じてもらえればいいな。


ーーシンプルな「ロックバンドのカッコよさ」ですね。それこそ、丈朋さんのストラップの長さだったり。


DUCK-LEE:それ、大事。


ACE DRIVER:チェック入りますからね。弾きやすくしようと思って、ちょっとだけ上げようものなら、「今日、ちょっと違うんじゃない?」と言われちゃう(笑)。


DUCK-LEE:俺もレコーディングはジャズベース使うけど、ステージではサンダーバードだしね。低く構えたいから。やっぱりそういうことは大事だと思うよ。


・「未だに前ノリ、勢いを重視している」(カネタク)


ーーこのアルバムを引っ提げて『ザ・スラットバンクス結成20周年メジャー返り咲きツアー2016』が始まりましたが、どんなツアーになりそうですか?


DUCK-LEE:ライブでやり足りていないまま、レコーディングした新曲もあるから、ツアーが終わる頃にはテンポが1.5倍くらいになってる曲もあるだろうし。


カネタク:ライブだと音源より速いんですよ。テンポを速くすることが、アレンジのひとつとしてあったりするんです。普通であれば、レイドバックしていくことだったり、タメを効かせる方向にいくであろう歳なのに……。未だに前ノリ、勢いを重視している。アグレッシヴですよね。


DUCK-LEE:逆にアコースティック(死霊半去勢 Ver.)でやることもあるから。その時々でアレンジは「どうやろう?」と考える。


TUSK:今回の曲をもっともっとやりたいと思っているし、まだまだ、やり足りてないね。20年前に作った曲も未だにそうだしさ。ライブで「この曲やらなきゃ」なんて、これっぽっちも思ってない。どの曲も常に「もっと良く、もっと良く」と思ってやってる。


DUCK-LEE:だから、アルバムが完成しても「もっとああしておけばよかった、こうしておけばよかった」とか、毎回そんなんばっかりです(笑)。


ACE DRIVER:作ってるときは、アレンジとかサウンドとか何度も聴き直して考えるんだけど、完成するとあんまり聴かなくなるんだよね。後悔するから(笑)。


TUSK:完璧なんてないもんね。


ーーこういったインタビューにおける「すべてを出し尽くした最高傑作ですので聴いてください」みたいな言葉は……。


DUCK-LEE:よくあるよね~(笑)。ウチらは、ないないないないない(笑)。


ーーいち作品として完結するのではなく、あくまでライブでやるためのアルバムであり、楽曲はライブで常に進化し続ける……、ライブバンドらしい姿勢ですね。


DUCK-LEE:ライブを重ねるごとにどんどん変化していくから。アルバム聴いて、ツアーで成長する曲を観に来てください。


・「新しいものを作ろうとする気力がなければ、バンドは続かない」(TUSK)


ーー20年を越えたこの先、バンドとしての野望はありますか?


TUSK:野望?! そういうのは、この20年間、持ったことないです(笑)。常に全力、今やるべきことをやるだけです。


DUCK-LEE:元気に長くできればいいかなぁ。ライブやって全国を廻れたら、それだけで幸せ。それで気がついたら「やっべぇ、ファン増えちゃった」となれば、ラッキー(笑)。


ACE DRIVER:その辺は意外とみんな現実的で、ちゃんと地に足ついてるから。逆に、それだから今までずっとやれてこられたんだと思うよね。変に夢を見るのではなく、現実をしっかり受け止めながら活動しているという。


TUSK:今回、20周年というのが出てますけど、いつもだったら「大体、18年くらいじゃね?」とかそんな感じでやってるんで。実際、本当に20年なのか、あやしかったりもするし(笑)。


(一同笑)


TUSK:でも、新しいものを作ろうとする気力がなければ、バンドは続かないわけで。やっぱり、運とタイミングと出会いですから。THE SLUT BANKSとして今もやれてるのはホント、ラッキーだしね。だからといって、無理してやっているわけでも、そこだけにしがみついてるわけでもないし。


DUCK-LEE:しがみつくほどのヒット曲もねぇし!


(一同爆笑)


カネタク:今、若いバンドも50代のバンドも武道館でやったりしてますから。だから年齢なんて関係ないんだなと思います。THE SLUT BANKSは、歳相応の枯れたロックではないわけで、50代でアップテンポの激しいロックをやってること自体、珍しいと思いますし、そういうところで目立てればと思いますね。大御所気取りになるわけでもなく、このままエネルギッシュに10代、20代のバンドと同等に盛り上がっていけばいいなと思います。


DUCK-LEE:渋っちいことやってるわけではないから、若い子も聴いてくれると嬉しいな。そういう世代がファンになってくれるように頑張りたい。だから、20周年なんて出さないほうがよかったかな? その時点で、おじさんバンド丸出しだから(笑)。
(取材・文=冬将軍)