チーム首脳などが出席するFIA金曜会見に、ロシアGPでは小松礼雄チーフエンジニアが初登壇。ハースの実質的な技術トップであり、FIAからお呼びがかかる存在になったということです。
チーム立ち上げからハースを引っ張ってきた小松エンジニアは「スタッフの数も少なくて従来のチームとは、まったく異なる状況でのチーム立ち上げで新たなチャレンジでしたが、その一員になれたことをうれしく思い、とても楽しんでいます」と、堂々たる語りっぷり。
印象的だったのは、開幕から2戦連続入賞という快挙を果たしたものの「miles to go(まだまだ先は長い)」と繰り返し述べていたこと。
「あらゆる部分を改善していかなければならない。2台完走という目標を、ようやく中国GPで果たせたばかり。それを今週も目指して、できれば、もう少し良いパフォーマンスを発揮したい」
「中国GPではタイヤをうまく機能させられず、バランスと安定性に苦労したが、すでに問題は究明しつつあり解決に向かっている。そうやって我々は少しずつ学んでいます。何より大切なのはチーム全員が一丸となって同じベクトルで努力していること」
目の前の結果に浮かれることなく、開幕前のテストから一貫して語ってきたとおり「ステップ・バイ・ステップで前へ進んでいかなければならない」という地に足のついた考え方を持ち続けているのが小松エンジニアらしく感じられました。
日本のメディアにとって、ロシアGP金曜会見の主役は小松さんだったわけですが、他の出席者はフォース・インディア、トロロッソ、ザウバー、マノーといった“中小チームの首脳陣”が集合。上位チームの首脳陣やパワーユニットメーカーが勢ぞろいといった回に較べれば、なんとも地味です。それゆえにメディアの出席率も低く、会見場は3割程度の埋まり具合。それも大半は地元メディアが占めていました。
トロロッソのジェームズ・キー(テクニカルディレクター)やフォース・インディアのオットマー・サウナウアー(チーフオペレーティングオフィサー)、マノーのジョン・マッキリアム(チーフデザイナー)には、策定作業が佳境を迎えていた2017年レギュレーションについての質問が寄せられ、ザウバーのベアト・ツェンダー(チームマネージャー)には「ネガティブな話ばかりで申し訳ないが」と言いながら、チームの財政難に関する質問が。ピレリのポール・ヘンベリーには、2017年用タイヤの話題が投げかけられました。
そんな金曜会見の主役は、実は登壇者だけではありません。“影の主役”は、ディーター・レンケン記者です。
英AUTOSPORTなどにも寄稿しているレンケン氏は「レースには興味ない。私が知りたいのは政治だ」と言い切る名物記者で、チーム代表や関係者に政治的な話題を徹底的に取材することで有名な人物。南アフリカ出身で、前回の中国GPは欠席していたのですが、フェラーリのマウリツィオ・アリバベーネ代表がレース後の取材終わりに「南アフリカの友人はどこだ!? またストラテジー・ミーティングに関する質問をされると思っていたのに!」とジョークにするほどの存在感なのです。
いつも質問する人が少ない金曜会見で、何度も何度も手を上げて、ねちっこく質問を繰り返す。そんなレンケン氏が引き出した、2017年のレギュレーションに関する回答の数々はすでに各方面で記事になっています。英文の記事を読むときには、“影の主役”である彼の名前を探してみては、いかがでしょうか。