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『99.9 -刑事専門弁護士-』加奈子役の岸井ゆきの、“攻めの演技”で飛躍できるか?

2016年04月30日 09:01  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 松本潤主演のTBSドラマ、『99.9 -刑事専門弁護士-』(以下 :『99.9』)に出演中の岸井ゆきのは、これまで捻りのある役柄を次々とモノにしてきた、業界的にも注目される若手実力派女優のひとりだが、主演の映画・ドラマ作品はまだない。しかし、本作を期に大きく飛躍する可能性を秘めていると、筆者は見ている。


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 現在24歳の彼女は、2009年に『小公女セイラ』でデビュー以降、ドラマ、舞台、映画、CM、MVなど、他の若手と比べても多くの場数を踏んできた。しかし、『サナギネ』や『気づかいルーシー』といった舞台作品ではヒロインを務めた経験もある岸井だが、映像作品では名バイプレイヤーとの印象が強い。2015年以降は、佐藤快磨監督の『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』や、山内ケンジ監督の『友だちのパパが好き』など、物語に深く関わる重要な役どころを任された作品が公開された。特に、親友のマヤ(安藤輪子)に恋心を持たれる父親の娘・妙子役で出演した『友だちのパパが好き』では、その複雑な立場から徐々に混乱していくさまを上手く表現し、高い評価を得ている。


 また、テレビ方面でも徐々に露出する機会が増えている。そのなかでも一際印象的だったのは、去年テレビ東京で放送された『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』(以下 : 『SICKS』)で演じたつばめ役だ。つばめは中華料理店を営む店主の娘だが、一方でAV女優としても活動しているという、かなり強烈なキャラクターの持ち主。『SICKS』は、ドラマでありながらもコント色が強い作品で、それゆえオードリーやおぎやはぎなど、お笑い芸人も多数出演していた。しかし岸井は、普段の現場とは毛色が違うであろう場においても、遺憾なく実力を発揮。AV女優なのに処女だと言い張るつばめという役柄を見事に演じきった。劇中でも絡みが多かった若林正恭(オードリー)と対等に渡りあい、笑いのセンスを垣間見せるなど、新境地も見られた。元来の実力だけでなく、これまでの岸井に見られなかった側面が見れるという意味でも、ぜひ観てほしい作品だ。


 ここまで書いてきたように、岸井の実力は申し分ない。場数も十分に踏んできた。それでもなぜ、ドラマ・映画では主演作に恵まれないのか。これはおそらく、以前スポッテッドプロダクションの直井氏も言っていたように、どんな役でもやれてしまう高い演技力ゆえに助演で活躍してしまうタイプだからだろう(参考:岸井ゆきの、なぜ業界人から支持を集める? 『友だちのパパが好き』関係者に訊く)。事実、ここまで演じてきた役は、弱視の女性(映画『金星』)、14歳の少女(舞台『サナギネ』)、AV女優(ドラマ『SICKS』)など、非常に幅広いものだ。しかし、どんな役でもやれるといえば聞こえはいいが、それゆえに主人公にするには“濃すぎる”役柄を与えられがちである。もちろん名バイ・プレーヤーの道を行くのもアリだろう。だが、『気づかいルーシー』で観た岸井の“華”を知るひとりとしては、その“華”を大舞台でも見せてほしいと思う。


 岸井はいま、『99.9』で加奈子役を演じている。加奈子は深山大翔(松本潤)が下宿している小料理屋の常連客で、自称シンガーソングライターという設定だ。第2話でその姿を確認したが、どこかエキセントリックな性格が際立ち、表情豊かな人物に見えた。まだ出演時間は少ないが、ドラマをおおいに引っ掻きまわしてくれそうだ。岸井自身も、「視聴者の皆様の期待を裏切って攻めていこうと思います」と述べるなど、意気込みは強い(引用:『ヒカリグラフ』岸井ゆきのインタヴュー)。


 プライムタイムのドラマ、しかも『半沢直樹』などのヒット作を放ったTBSの日曜9時という枠は、これまで岸井のことを知らなかった人たちも注目する大舞台だ。きっと、彼女の個性あふれる演技の中に、“華”を見てとる視聴者も少なくないのではないだろうか。そんな大舞台で岸井が実力を遺憾なく披露できれば、ドラマ・映画作品での主演作増加にも繋がるはずだ。それを実現させる器が岸井にはある。(リアルサウンド編集部)