レッドブルのコックピット保護デバイス「エアロスクリーン」について、ルイス・ハミルトンは「警察が暴徒鎮圧に使う盾のように見える」と評し、むしろジェット戦闘機タイプのキャノピーの開発を考えたほうがいいと述べた。
現F1ワールドチャンピオンのハミルトンは、プレシーズンテストでフェラーリが試した「ハロ」に対して特に批判的だったドライバーのひとりだ。彼はレッドブルがロシアGPの金曜のプラクティスでテストするスクリーンについても、あまり気に入ってはいないようだ。
「これをやるなら、ジェット戦闘機みたいに完全に閉じたコックピットにすべきだ」と、ハミルトンは言う。
「中途半端なことはやめたほうがいい。完全なオープンか、さもなければ完全なクローズドだよ。あのスクリーンはカッコ悪すぎる。警察が暴徒の鎮圧に使う透明な盾みたいに見えるよ。これほどクールでエレガントで未来的なF1カーを作っておきながら、その上に警官の盾を付けるなんてバカげている」
「もうひとつのカーボンファイバー製のやつ(ハロ)のほうが、まだ良かったよね。ただ、もしあれがあったら、フェルナンド(アロンソ)はメルボルンでクラッシュしたときに、自力でクルマから降りられなかったかもしれない」
「FIAが安全性の問題に真剣に取り組んでいるのはいいことだ。絶えず研究と努力を続ける必要がある課題だからね。ただし、F1の美観、スタイル、クールさを損なわない限りにおいてだ」
FIAは2017年から何らかの形でコックピット保護システムを導入することを明言しているが、ハミルトンはオープンコックピットを「現状のまま」維持することを望んでいる。安全性の進歩は「驚異的」であることを認めながらも、彼は危険もF1の魅力のひとつと考えているからだ。
「レーシングカーに乗り込むとき、僕はそこに危険が存在することを承知している。それはカートのレースを始めた8歳のときからずっと変わっていない。僕は進んでそのリスクを取ろうと思うし、レースカーに乗ったことのあるドライバーなら誰でも同じだろう」
「子供のころ、初めてF1を見たときには、誰もが『あの人たち、絶対アタマがおかしいんだ、いつ死んでもおかしくない!』と思ったはずだ。そして、F1を見始めたばかりの人に会うと、必ず『よくあんな危険なことを……』と言われる。世間の人がレーシングドライバーに畏敬の念を抱く理由の大部分は、そこにあるんだ。そういう要素を全部取り除いてしまうのは間違いだと思う」
フォース・インディアのニコ・ヒュルケンベルグも、ハロへの反対意見を述べたドライバーのひとりだ。ただ、彼はその方向へ進むことが不可避なのであれば、もはやコックピット保護システムに反対しても意味がなく、ハロと比べればこのエアロスクリーンのほうがまだいいと考えているようだ。
ソチのピットでレッドブルのシステムが公開される以前の段階で、ヒュルケンベルグはこう語っている。「インターネットでイラストを見ただけだが、こっちのほうがまだカッコいいし、僕の好みにも近い。いずれにしても、この手のデバイスの導入は避けられないようだから、どちらかと言われればこれ(エアロスクリーン)を選ぶよ」