2016年04月29日 08:02 弁護士ドットコム
「綺麗に咲いている菜の花を踏みにじって何も感じないのでしょうか?」。敷地に入って、菜の花を踏み荒らし、電車を撮影していた鉄道ファンに向けて、真岡鉄道(もおかてつどう・本社:栃木県真岡市)が異例の呼びかけをおこない、大きな話題になった。
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真岡鉄道の沿線は、鉄道ファン、特に「撮り鉄」と呼ばれるカメラマンの撮影スポットとして知られている。だが、線路近くで撮影している「撮り鉄」のほとんどが、真岡鉄道の敷地内に侵入しているという。
同社は4月11日、公式フェイスブックページに、踏み荒らされた菜の花の写真を掲載した。さらに、「はっきり言って違法だと思う」「今後はそのような事を絶対にしないでください」「関係ない、今まで通り好き勝手やる、そう思った方はもう来ないで下さい」と記した。
ネット上では、一部の「撮り鉄」のモラル欠如が指摘されている。これから行楽シーズンに入るが、トラブルに発展しないために、鉄道ファンはどういうことに気をつければいいのだろうか。また、今回のケースは「違法」なのだろうか。自身も鉄道ファンである前島憲司弁護士に聞いた。
「『良い写真を撮りたい』という気持ちは、自分だけではありません。モラルの欠如した1人のために、みんなが写真を撮れなくなるということがおこりえます。小さいことでも、十分注意していただきたいと思います」
前島弁護士はこのように警鐘を鳴らす。今回のケースでいえば、法的にも「違法」になるのだろうか。
「鉄道会社の敷地内にみだりに立ち入ることは『違法』です。
鉄道営業法違反で1万円の科料、あるいは軽犯罪法違反で拘留(最長で29日の身柄拘束拘留)または科料という罰則を受けます。
もっとも、ただ『立ち入った』というだけでは、罰則を受けることはありません」
では、どのような場合に罰則を受けるのだろうか。
「さまざまな事情が考慮されます。たとえば、敷地の所有者・管理者である鉄道会社が、立入りを承諾しているのであれば、犯罪は成立しません。
明確な承諾がなくても、『これくらいなら良いのではないか』と思って立ち入った場合、そう思うことが常識的に仕方がない状況であれば、犯罪が不成立という結論を導くこともできます。
また、刑罰を与えるほどの危険性や悪質性がないと判断されれば、立入り行為があったとしても、犯罪不成立ということになりえます。
そもそも、そのような場合、捜査機関が犯罪として立件しないということもあります」
実際に立件されるようなケースはあるのだろうか。
「そのようなケースは少ないとは思います。しかし、今後、悪質な立入りが増えるようなことがあれば、鉄道会社が『立入り禁止』の意向を明確に示すようになります。そうなってしまったら、あとの祭りです。
もし、明確に立入りを制限しているにもかかわらず、鉄道会社の敷地に立ち入って撮影したような場合、鉄道営業法違反または軽犯罪法違反で、実際に処罰を下されるような事態が出てくることがありえます。
くり返しになりますが、鉄道撮影の際は十分にマナーを守ってほしいと思います」
前島弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
前島 憲司(まえじま・けんじ)弁護士
横浜弁護士会・就業問題対策委員会委員。横浜家庭裁判所・家事調停委員。弁護士になる前に裁判所書記官として10年以上勤務した経験がある。ロータリークラブにも所属。鉄道模型や鉄道に乗る「乗り鉄」など鉄道趣味のほか、日本史や神社の歴史をたどるのも好き。
事務所名:弁護士法人前島綜合法律事務所
事務所URL:http://www.law-maeken.jp