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映画『テラフォーマーズ』三池崇史監督、伊藤英明インタビュー 「これまで培った経験が全く通用しない現場でした」

2016年04月28日 12:52  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

左)三池崇史監督、右)伊藤英明
三池崇史監督、中島かずき脚本の映画『テラフォーマーズ』が4月29日より全国公開される。
累計発行部数1600万部を突破した大ヒットマンガをもとにした同作は、火星が舞台。ある生物を駆除するため火星に送り込まれた15人の日本人は、予想外の方向に進化したその生物と対峙することになる。果たして駆除されるのは、人間か、テラフォーマーか。壮絶でスケールの大きな戦いは見逃せない。
また、武井咲、小栗旬、山下智久、山田孝之、菊池凛子、小池栄子、篠田麻里子など個性派キャストが多数出演していることも注目だ。
公開に先駆けて、小町小吉役の伊藤英明と三池監督に意気込みを聞いた。
[取材・構成:川俣綾加]

『テラフォーマーズ』
http://wwws.warnerbros.co.jp/terraformars/
4月29日全国ロードショー

■窮屈さを打破するパワーを持った作品

―まず最初に、原作を読んだ時の感想を教えてください。

伊藤英明(以下、伊藤)
なんて面白いマンガなんだろうと思いました。火星に行ってテラフォーマーを倒すこと、テラフォーマーに対峙するため人間に昆虫の能力を植えつけ戦うこと、どちらもすごい発想ですよね。子供の頃に虫を見てわくわくした時の感覚を思い出しました。

―三池監督はいかがでしたか?

三池崇史監督(以下、三池)
20代の若手俳優たちがこの作品に敏感に反応していて、それで僕も読んでみたんです。役者ってどこか普通であることを否定しているというか、ちょっと飛んでいるところもある人たち。その彼らが反応しているだけあるなと感じる作品でした。原作を読んでいると、彼らがいま演じている役とは異なる、強烈な個性をもつキャラクターが大勢登場して本音でぶつかっている。だからこの作品が彼らの間でも話題になったんだろうなと。「何だこれ?!」と見る人を驚かせるようなものを表現したり、窮屈さを打破したり、そういったパワーを感じる作品だと思いました。

伊藤
とにかく1巻がすごく強烈ですよね。

三池
こんな表現ができるマンガってやっぱり素晴らしい。加えて、それが世間にきちんと認められている。その力があって僕らが映画にできたということです。

―三池監督が伊藤さんを小町小吉役に起用した理由は何だったのでしょうか。

三池
原作だと小吉はヤンチャな青年。これまで一緒に仕事をしてきて一番ヤンチャだった役者は……? と考えた時、キャストを思案していた全員が伊藤英明だという答えになりました(笑)。単純に背格好が似ている似ていないではなく、まずはキャラクター性ありき。ただ問題は引き受けてくれるかどうかでした。まぁ、話を聞いてもらうための電話代くらいしかかからないし、とりあえず聞いてみようと(笑)

伊藤
監督に声をかけていただくのはやっぱり嬉しいです。一方で今回はアイスランドでのロケ、CGの要素も大きいこと、設定も大きく変わるとはいえ年齢もあるし僕で大丈夫なのかなと正直なところ不安はあって。でも参加してみると、他のキャストのみなさんも現状に満足していなくてもっと色々な芝居がしたいと貪欲な方ばかりだったので刺激的でした。僕ももっと頑張らないといけないと感じました。

三池
刺激的で面白かったよね。どこに進むかわからない船をみんなで移動して旅するような心地良さ。これまで培った経験が全く通用しない場を与えられたということも。火星をどう表現するかひとつとってもそうです。それは原作がそういう世界を描いてくれなければあり得なかったことですね。

伊藤
完成した映像をみた時に、色々起きるけれど実は行って帰ってくるだけの『マッドマックス』のような勢いで盛り上がってみれる映画が完成したと感じました。原作での昆虫の解説が映画だと池田秀一さんのナレーションでこんな風になるのか! とわくわくして。随所に原作リスペクトが感じられる作品になったと思います。



―小吉を演じる上で難しかったことは?

伊藤
苦労したのはアクションですね。まずはテラフォーマーがそこにいると見立ててスタンドインに近いかたちで相手がどう動くか、それに対して自分がどう動くかを覚えます。それから本番に入るのですが相手を殴る動作をひとりでやるのが難しくて。ちゃんと当てて殴っているように見せるにはどうすればいいかコツを掴むのに時間がかかりました。慣れてくると楽しかったんですけどね。

―あのスーツはどれくらいの重さがあるのでしょうか。

伊藤
正確に測ったわけではありませんが、体感としては20キロくらいあったように思います。衣装さんが頑張ってくれて軽量化してあるとはいえ強度も必要なので。アクションでいえば武藤仁役の山下(智久)君は僕以上に大変だったはずです。バッタなので下半身はCGで、上半身はそこに動きを合わせないといけない。監督の説明からイメージを掴むのに並々ならぬ苦労をしたのではないでしょうか。最後のほうの姿もきちんと山下君がやってるんですよ。


―この映画で驚いたのが、監督自らがテラフォーマーのモーションキャプチャーのアクターを担当していることです。

三池
本当はスーツアクターにお願いするほど時間をかけられなかったからです。外側から動きを見るともっとああしよう、こうしよう、と思って時間がかかってしまう。どう動いたかその場でチェックできるので、今回は客観性を省いて自分の中のイメージをダイレクトにデジタルデータに反映させることを重視しました。

伊藤
こっちもプロでアクションの訓練を色々としているのに、監督のほうが動きがいいんですよ(笑)

三池
アクションは自分と相手がいるからこそOKかどうかがわかる。でもひとりでアクションをしているとOKを出されても「本当に?」と思っちゃうんですよ。だから役者は本当に大変だったと思います。

―映画版『テラフォーマーズ』の見どころを教えてください。

伊藤
マンガで描かれていたものが、生身の人間が動いてアクションをしているという部分ですね。個人的には、ケイン・コスギさんが演じるゴッド・リーがハマり役だと思います。あの衣装でアクションをしていてすごくカッコイイんです。ケインさんはすごく真面目な人なので緊張していたらしく、監督がそれを取り払うために「ちょっと1回『いっぱーーつ!』って叫んでみようか」って……。

三池
1回でいいから生で見てみたいじゃないですか(笑)。みんなも爆笑してくれて、そのあといい芝居が撮れました。

伊藤
監督は現場で役者を孤独にしない。すごく気を配ってくれるので僕らも全力を出せるんです。自分のストレスは自分で解決して、現場でも絶対に怒らず何が起きてもぶつかっていく。穏やかで、同時に男らしい男だと思います。だから常に現場の雰囲気がいい。

三池
ああいう時って役者はすごく孤独なんですよ。本番では誰も助けてくれないし、やってみても本当にちゃんとできているのかわからない。役者をやっている人たちはその中で生きているというだけですごくリスペクトしています。だから僕も可能な限り全力を出してもらえるように。そんな風に、みんなで作っているのがフィルムからも感じられると思っています。