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映画「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」原作・音楽/HoneyWorksインタビュー「大事に描いてくださいました」

2016年04月27日 18:22  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

映画「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」原作・音楽/HoneyWorksインタビュー「大事に描いてくださいました」
動画総再生数1億回以上。破格のクリエイターユニット・HoneyWorksが生み出した恋愛青春群像劇がいよいよ劇場アニメとして登場。告白実行委員会~恋愛シリーズ~の第1弾映画『ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~』が4月23日(土)より全国公開をスタートした。
告白実行委員会とは、ニコニコ動画にアップされたPV『告白予行練習』や『ヤキモチの答え』などから生まれた物語世界だ。PVに登場する人物たちは楽曲の垣根を越えて共演し、心を交わらせていく。
世界を作り出しているのはコンポーザーのGom(ゴム)、shito(シト)、イラストレーターのヤマコという3人からなるクリエイターユニット・HoneyWorks。ボーカロイド曲として発表された曲たちを、豪華声優陣が新たに命を吹き込んだ2ndアルバムのスマッシュヒットも記憶に新しい。
キュンキュン系と呼ばれ、10代を中心に絶大な支持を受けるHoneyWorksはどのような集団なのか。劇場版への思いなどを3人にうかがった。
またニコニコ動画では曲の終盤になると「(イニシャル)、好きだよ~!」といった告白コメントの弾幕が流れる光景が他の作品にはない大きな見どころともなっている。
[取材・構成:細川洋平]

『ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~』
http://www.honeyworks-movie.jp/

■ ワンシーンごとに大事に描いた映画

ーみなさんはいち早く試写をご覧になったということですが、完成された映画の感想をうかがえますか?

ヤマコ 
すごくドキドキしました。どんな展開かもわかってるのにすごく身構えて見ちゃって(笑)。

shito 
やっぱりちょっと照れますね(笑)。ニヤニヤを手で隠しながら見ちゃいました。こういう感情をみんなにも抱いて欲しいなと思いました。

Gom 
映画って、誰かが死ぬとか、劇的でスケールの大きなものというイメージがあったので、自分たちがやっているような小さなコミュニティーでの恋愛は「映画の題材にふさわしいのかな」と不安になっていたんです。でも「ずっと前から好きでした。」という言葉とキャラクターたちの恋を、スタッフさん含めてみんなが掘り下げてワンシーンワンシーン大事に描いてくださっていたので、すごく安心しました。


ーHoneyWorks結成のきっかけを教えていただけますか?

Gom 
元々はニコニコ動画でボーカロイドの曲をカバーしたり、バンドアレンジしてライブ出演したりしていた僕とshitoが、「オリジナルをやりたい」と思ったのがきっかけです。当時ニコニコ動画ではボーカロイドシーンが流行っていたので「ボカロ曲を作ろう」となりました。自分がメインの音作り、shitoにも作りたいテーマがあれば作ってもらって、あとはイラストレーターがいれば成立すると思ったので、3人で行こうと考えました。

ーヤマコさんはいつ頃どのようにして加入したのでしょうか。

Gom 
Twitterに絵の上手い子がいる、とヤマコを見つけて「動画を作るので描いていただけませんか?」と声をかけました。

ヤマコ 
たしか2010年5月あたりでしたね。私はその前からニコニコユーザーとしてGomさんの歌を動画で知っていたので「すごい、どうしよう!」と驚きました。shitoさんも私がよく見ていたベース動画のプレイヤーだったことが分かって、一気に繋がりました。

ーGomさんとshitoさんにとって、ヤマコさんのどのようなところが決め手になったのでしょうか。

Gom 
決め手は描ける枚数ですね。動画にするには枚数が必要なので、僕らはヤマコがpixivに上げる更新の日付を見てたりしたんですよ。この子は早いぞ、って。(笑)

shito 
しかも、うまい。

ヤマコ 
ちょうどその頃、絵を描くのがすごく楽しい時期で2~3日に一枚のペースでイラストをアップしてたんです。それを見て「この人ならPVでもイラストの枚数をたくさん使える」と思ってくれたみたいで。ちょうどピッタリ合った、という感じですね。

Gom 
いずれは即売会イベント等に出たいという目標もあって、じゃあチーム名を決めないとね、と言うことで「HoneyWorks」に。

ー「HoneyWorks」という名前の由来を教えていただけますか?

Gom 
ヤマコから「かわいいものにしたい」と、僕が「略称にできるものがいい」と提案して考えました。すぐに「Honey」という言葉が出て、それからチーム感のある言葉として「Works」にまとまりました。で、「Honey」と「Works」で「ハニワ」……略せるじゃん! と。

ヤマコ 
蜂のマスコットキャラクターも考えていたんですけど、もはや「ハニワ」というキャラができあがってしまいました(笑)。



■ HoneyWorksはサウンドチームじゃなくて、動画も含めた作品制作チーム

ー作詞はGomさんとshitoさんの共作、作曲は曲ごとにどちらかが担当されています。このスタイルは結成当初から一貫したものですか?

Gom 
そうですね、特に詞が共作というのはひとつの武器ですし、面白いところだと思っています。

shito 
僕はそれまでDTMをやったことがなかったんですけど、HoneyWorksをはじめるに当たってGomにイチから教えてもらいました。編曲も最初はGomに頼っていたんですけど、だんだん作れるようになって、今では曲は編曲までそれぞれがやっています。

Gom 
DTMというのはツールがあって使い方を覚えれば誰でもできるようになるんですけど、編曲は“絶対”がないので教えられないんです。shitoにどう教えたらいいのか悩んでいた時に、supercellのryoさんに「編曲の秘訣って何ですか?」って聞いたんです。そうしたら「根性だよ」って返ってきて(笑)。
それが僕の中ですごく刺さったんですよ。まさにshitoがそうだったんですね。僕が「編曲は根性だから、やるしかない」って伝えたら自分でどんどん成長して。

ー作曲家が2人いることで音楽の方向性がブレるかも、といった危機感はなかったのでしょうか。

shito 
曲のテイストが違っても、歌詞は全て共作だし、イラストもあるので世界観はHoneyWorksになるんですよね。HoneyWorksはサウンドチームじゃなくて、動画も含めた作品を制作しているチームなので、不安はありませんでした。

ー作品作りはどういう流れで行っているのでしょうか。

shito 
まず曲を作ります。そうしたら、2人が見られるようにGoogleドライブでリアルタイムに歌詞を書いていくんです。同時に、PVのラフな字コンテも歌詞の隣に書く。できたらヤマコに説明して、ヤマコが字コンテをブラッシュアップして絵コンテにする、という流れです。

ーヤマコさんとしてはそのやり方をどう感じていらっしゃるのでしょうか。

ヤマコ 
元にあるものを膨らませる作業は個人的に好きなので楽しいです。曲は毎回一般視聴者と同じようにワクワクしながら待ってます。イメージがメンバー間で一致した時の達成感はすごく大きいですね。

Gom 
曲作りはヤマコの絵に引っ張ってもらう部分も大きいんです。HoneyWorksは歌詞だけじゃなくて絵があって完成するので、その分奥行きも出る。絵があるから歌詞ではあえて言わないとか、特殊な作り方ができるのも特徴と思います。


ーHoneyWorksを結成して曲をネットにアップした時、ユーザーの反応も大きかったと思いますが、どう受け止められたのでしょうか。

Gom 
楽しかったですね。自分たちで考えた演出にみんなが反応してくれるとやっぱりうれしくて、「じゃあ次はこういう感じで」って考えたり。

shito 
これだけ反応してもらえるんだったら「そう来るか!」と思わせたいなという気持ちも出るし、制作の励みになりました。

■『告白予行練習』と『ヤキモチの答え』が揃った時に世界が広がった

ー「告白実行委員会」が、これで行けると思えたタイミングはどの辺りだったのでしょうか。

shito 
『告白予行練習』と『ヤキモチの答え』という2曲が揃った時ですね。少女漫画の世界観で「恋愛」をテーマに行こう、と最初から思っていました。大人になってから少女漫画を読んだらすごく面白くて、当時あまり少女漫画タッチの絵を描いていなかったヤマコにもオススメしたんです。

ヤマコ 
その時に、実は私も少女漫画を描くのが好きだったという話をしたら、「少女漫画風のイラストでやろうか」という流れに自然となって。

shito 
最初に『告白予行練習』と『ヤキモチの答え』をそれぞれ主人公2人の物語で作ったんです。作詞をしながら、「前のPVに出た高校生キャラクターをこっちのPVで絡めたら面白いかも」って思いついて。それぞれ曲は独立してるけど、動画の中で絡めてみたところ、ニコニコ動画ですごく反応があったんです。前の曲にもそれを踏まえたコメントが増えたりして。そうしたらヤマコが「名前を付けたい」と。


ーそれまでは匿名だったキャラクターに名前を付けることにしたんですね。

ヤマコ 
やっぱり描いているとどんどんイメージができてくるので、血液型とか誕生日、家族構成まで2人にプレゼンして名前を決めました。

Gom 
告白予行練習以前から「初恋の絵本」のPVで黒板に相合い傘が描かれて茶化されているシーンがあって、それが(合田)美桜と(芹沢)春輝でした。春の曲だったので春にちなんだ名前になっていて、それでしばらくしたらヤマコが今度は名字を付けてきて。

ヤマコ 
勝手に付けました(笑)。

shito 
6人のキャラクターを一気に付けてきたよね(笑)。

ヤマコ 
PVのコメントでみんながキャラクターの名前を読んでくれるのがすごくうれしかったので考えちゃうんです。それ以降は新しいキャラクターが出る時には名前も一緒に付けるようになりました。

ー当初はボーカロイドが歌っていましたが、2ndアルバム『僕じゃダメですか?』ではキャラクターを声優さんが担当するようになりました。

Gom 
豪華ですよね……(笑)。ここまで揃ったのは音響監督さんのおかげです。

ー音響監督は長崎行男さんですね?

Gom 
長崎さんがすごく意気込んで声優さんにオファーしてくださったみたいで。

ヤマコ 
全員主役級ですよね。声優さんにもアフレコのたびに「絶対アニメになるから!」って言ってくださったらしいです。

ー声優さんが決まったことでみなさんのキャラクターへ対する思いや創作方法などは変わりましたか?

shito 
まずキャラクターが固まりましたね。例えば榎本夏樹は「元気でちょっとバカっぽい」という方向性が見えてきました。だから今度の歌詞ではそれまでに使ってなかった言葉をつかってみよう、こんなことを言わせてみようと。

Gom 
今はキャストの声を思い浮かべながら作ってます。



■ 最初は大事件が起こる「修学旅行編」みたいなものを想像してました

ー映画化のお話が来た時はどう思われましたか。

shito 
うれしさはもちろんですけど、同時にメンバーの中ではシナリオどうする? 曲どうする? 劇伴もかなあ、という風に悩んでましたね。

Gom 
最初は映画ということで舞い上がって「修学旅行編」みたいなスペシャル感というか、いろんな大事件が起こる感じを想像してたんです。

ー実際の本編とはまた違った形ですね。

Gom 
はい、その後、プロデューサーさんたちと話をして「まずは多くの人にハニワを知ってもらおう」と。1st、2ndアルバムのDVDになった映像部分を中心にHoneyWorksが作ってきたものを改めてをしっかり描こうということになりました。

ー制作にはどのような形で関わられたのでしょうか。

Gom 
上がってきたシナリオを読ませてもらって、こちらの希望を出して、というのを繰り返して完成まで持って行ったという感じです。

ーシナリオは完全にお墨付きなんですね。

Gom 
はい。でも組み立てはさすがだなあと思いましたね。僕たちが断片的に作っていたものをうまく重ねてくださってます。


ー映画化でこだわったところはありますか?

shito 
新しいものを入れることですね。HoneyWorksを追いかけてくれている人たちにとっても初めて見るシーンは絶対に入れてください、とお願いしました。映画にはライブシーンがあるんですけど、小説にもない完全オリジナルです。自分たちにとっては一番大切な部分になっています。

ー本作では音楽も担当されていますが、既存曲だけではないんですよね。

shito 
新しく挿入歌を2曲作りました。既存曲はライブシーンやインストトラック用にも録り直した音源もたくさんあるので、その辺りもぜひ聞いてもらいたいです。

ーヤマコさんはオープニングの絵コンテを担当されています。

ヤマコ 
自分も何かで参加したいと思って。構成を3人で話し合いながら決めて絵コンテにしました。おしゃれなオープニング映像ではなくて、いつものハニワらしくひとつの物語にしようと。榎本夏樹と瀬戸口優がケンカして離ればなれになるけど、すぐに他のキャラクターたちに声をかけながらお互いを探す、というストーリーになっています。

ーご自身がデザインされたキャラクターがスクリーンで動くのをどのようなお気持ちでご覧になったでしょうか。

ヤマコ 
もう親の心ですね。自分の頭の中でもいろんな場面でアニメーションのイメージはあるものの、自分が静止画しか描けないもどかしさを感じていたんです。映画では自分のイメージそのままだったので、すごくうれしかったです。

ーすでに第2弾『好きになるその瞬間を。~告白実行委員会~』が夏に公開になることが決まっています。3rdアルバムと同タイトルですが、こちらはどんな作品になるのでしょうか。

shito 
映画「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」エンディングからの続きで、すこし登場人物も変わって、恋愛だったり友情も描いた作品になります。

ーこちらもたのしみです。最後に読者へメッセージをお願いします。

ヤマコ 
ハニワを知っていてくれている方には新しい発見もありつつ、PVと照らし合わせて楽しめる部分もあると思います。これをきっかけに新しく知ってくれた方にも超絶キュンキュンを与えられるんじゃないかなと思うので、楽しんで見てもらえるとうれしいです。

shito 
リアル高校生世代の背中を推せる作品になったんじゃないかなと思いますし、大人のみなさんも、ちょっと昔の自分と照らし合わせてキュンキュンしてもらえたらうれしいです。ぜひご覧ください。

Gom 
恥ずかしくて照れちゃうような感情が詰まった映画になったと思います。ハニワを知っている人も知らない人も、この映画を見てぜひ、恥ずかしさで思わず出ちゃう汗をかいたり、ニヤッとしてもらえたらうれしいです。