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驚異の粘り腰興行『ちはやふる』 今週末に「上の句」と「下の句」を続けてみることは可能か?

2016年04月27日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (c)末次由紀/講談社

 先週末の動員ランキングは、2週連続で『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』が1位。土日2日間で動員52万2023人、興収6億7920万6300円と相変わらず絶好調で累計興収は25億円を突破。ゴールデンウィークが始まる前にして、もはや2016年のゴールデンウィーク興行を制してしまったと言ってもいいだろう。


参考:マンガ原作映画の新たな金字塔! 『ちはやふる』はどうしてこんなに「最高!」なのか?


 初登場2位につけたのは『ズートピア』。ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品としては『ベイマックス』以来、約1年4ヶ月ぶりの公開作となる本作。土日2日間で動員32万9513人、興収4億4580万4900円というのは十分に大ヒットと呼べる数字だが、既に公開されている本国アメリカをはじめ世界各国で、『アナと雪の女王』や『ベイマックス』を超える爆発的な初動記録を打ち立ててきたことを踏まえると、日本においては少々ギャップが生じていると指摘せざるを得ない。作品への評価は非常に高いので、『ベイマックス』の時のような粘り腰の興行を期待したい。


 「粘り腰」とは、相撲用語を由来とする日本特有のロングヒット作品を称する言い回しだが、その観点から先週末のランキングで光っているのは『ちはやふる -上の句-』だ。ゴールデンウィーク興行が本格的にスタートした先週末、上位10作品の中だけでも5作品が初登場となったわけだが、先々週末6位だった『ちはやふる -上の句-』は、公開6週目の先週末もトップ10内の9位をキープ。なんと春休み興行の覇者『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』よりも上位となってしまった。この状況に、思わず小泉徳宏監督も「信じられん」と今週に入ってツイートするほど。


 実際、新作ラッシュに追いやられて先週末の時点で公開館や上映回数が減ってしまっていた『ちはやふる -上の句-』は、満席やほぼ満席に近い回が続出していたと各地で報告されている。こうなってくると、今週金曜日29日公開の『ちはやふる -下の句-』の興行にも俄然注目が集まる。同日公開の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』『テラフォーマーズ』といった強力な新作群、そして好調を維持している『コナン』『ズートピア』『クレヨンしんちゃん』の中にあって、『ちはやふる -下の句-』がどれだけ健闘するか?


 今週末の各劇場の上映スケジュールを調べていて個人的に気になったのは、29日の『ちはやふる -下の句-』の公開と同時に、全国ほとんどの劇場で「上の句」の上映が1日1回(しかも早朝の時間帯が多い)となってしまっていること。「下の句」の公開を機に前・後編の2本を続けて観たいというニーズ、あるいは「上の句」を一度は観ているけれど「下の句」を観る前にもう一度リピートしておきたいというニーズも、潜在的にかなりあるはず。現状、「『ちはやふる』の前・後編を続けて観ることは可能か?」という質問には、「可能ではあるけれど、劇場や時間帯がかなり限定される」と答えるしかない。通常の前・後編作品ではそれでもいいのかもしれないが、異例の広がり方をしている『ちはやふる』のような作品の場合、ちょっともったいないような気がするのだが……。(宇野維正)