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TWEEDEESが自主企画ライブで見せた“第2章”の胎動 POLLYANNAを迎えた一夜をレポート

2016年04月26日 19:31  リアルサウンド

リアルサウンド

『TWEEDEES Premium Show vol.2』の様子。(写真=吉田進吾)

 TWEEDEESが4月23日、東京・TSUTAYA O-WESTで自主企画『TWEEDEES Premium Show vol.2』を行なった。


 同イベントは、TWEEDEESが1年2カ月ぶりに行なった自主企画イベント。前回は1stアルバム発売前に初ライブ兼新曲お披露目の場として設けられたが、今回もTWEEDEESは新曲を数多くパフォーマンス。MCでは7月20日に2ndアルバムのリリースを発表するなど、トピックの多いライブとなった。


 この日、オープニングアクトとして出演したのはPOLLYANNA。TWEEDEESの沖井礼二・清浦夏実とも親交のある若手バンドで、“最新型渋谷系ポップバンド”と謳い、アニソン的な速度感を持つ楽曲や、四つ打ちの踊れるポップスなど、様々なジャンルを横断した一作『CIRCLE』を1月にリリースしたばかりの5人組だ(参考:“最新型渋谷系バンド”POLLYANNAの考える、これからのポップス「専門家になり過ぎないことが大事」http://realsound.jp/2016/01/post-5852.html)。


 POLLYANNAは、アルバムのオープニングトラックである「TAKE ME WITH OVERLAND」からライブをスタート。同曲は飯島快雪(Key.)によるイントロの鍵盤から、ハッピーナッティ西山(Dr.)の性急なドラム、メロディーに対するカウンターのように配置されたベースラインを弾く斎藤モトキ(Ba.)など、楽曲の構成に“Cymbalsチルドレン”らしさを感じさせながらも、弾きっぷりのいいqurosawa(Gt.)のギターや、フレッシュながら少し憂いのある深澤希実(Vo.)によるボーカルなど、彼らなりのアップデートが加わることで“らしさ”を生み出している楽曲だ。


 その後、ファンキーな「HIT SPIKE」、深澤によるピアニカの音色と疾走感のあるバンドサウンドが絡み合う「LONG SPELL OF RAINY WEATHER」を披露し、続けてPOLLYANNAは「YUMEMITERU」を演奏。同曲は斎藤が「昔の渋谷系の流れみたいな、オシャレポップをやっているだけでいいのだろうか」という葛藤から生み出したという、シンセサイザーを導入したダンサブルなポップスだ。このあたりのアップデートは、かつて宗像明将氏がShiggy Jr.を「穏健なようでいてラディカルな音楽性」と評したことに通ずるものを感じさせてくれた(参考:http://realsound.jp/2014/11/post-1838.html)。


 最後にPOLLYANNAは「WANDERING ON THE SATELLITE」をパフォーマンス。この日をもって深澤と西山がバンドを脱退することが発表済だったが、その物悲しさをステージ上には持ち込まず、オープニングアクトとして場を盛り上げることに徹していた。バンドは活動に一時的なブレーキを掛けた形になるが、次の新体制では、TWEEDEESのオープニングアクトではなく2マンライブの対バン相手として会場を沸かせる姿を心待ちにしたい。


 続けて登場したTWEEDEESは、沖井と清浦に加え、ギター・山之内俊夫、ドラム・原“gen”秀樹、キーボード/コーラス・末永華子、キーボード/オルガン・坂和也という馴染みの編成だ。


 この日は『LINE LIVE』を使い、冒頭数分で新曲披露の模様を配信すると事前にアナウンスされており、ステージへ上がるといきなり新曲「速度と力」「STRIKERS」を披露。前者はこれまでにないほどセッション感の強い楽曲で、バンドのアンサンブルを最大限に活かしつつ、清浦がベルリラを演奏するという初めての試みも見られたロックナンバー。後者は沖井が激しい掛け声で観客を煽るなど、いずれもTWEEDEESの“ロックな一面”を垣間見ることのできた楽曲群だった。


 MCでは沖井がLINE LIVEでの中継に触れ「みなさんの後ろから全世界が見ています」とつぶやき観客の笑いを誘うと、清浦はこの日から発売開始され、瞬く間に完売した新グッズ「手旗」が振られている光景を見て「素敵ー!」とコメント。また、同イベントで取り組んでいる「学割」対象の学生たちに対し、清浦が笑いながら「勉強しろー!」と叫ぶなど、相変わらず面白い2人のやり取りが繰り広げられたのち、既存曲を演奏するパートへ。


 以前、沖井はインタビューで「『こういう跳躍をすればこういう開放感と泣きが出る』という、自分なりに筆の運び方がある」や、「馴染みのラーメン屋でいつものラーメンを食べるみたいに安定したクオリティーを提供したい」と自身の楽曲について語っている(参考:http://realsound.jp/2015/10/post-4938.html)。しかし、あらためて「祝福の鉄橋」や「月の女王と眠たいテーブルクロス」、「ブリキの思い出」などを聴くと、これまでリスナーが彼のバンドや提供曲から感じてきた“沖井らしさ”と、これらの楽曲に備わっている“TWEEDEESらしさ”に違いがあることに気付く。もちろん清浦の艶っぽさと少年性の同居したような声質を考慮したものなのだろうが、ミュージカル楽曲のような伸びや、シネマティックな展開を含むものが多く、どこか高貴な印象を受ける。この日披露された新曲のなかで、その系譜にあるのは「バタード・ラム」といえるだろう。4月19日に放送したニコ生では沖井のギターとTR-606というシンプルな編成だったが、フルバンドセットになるとその印象は一変。お酒を題材とした歌だけに、洋酒のCMにでも決まりそうなラグジュアリーさから、激しい展開へと切り替わる楽曲だった。


 その後、TWEEDEESはMCでメンバー紹介をしたのち、2ndアルバムのリリースを発表。沖井は2ndアルバムについて「バンドにとっては鬼門で、1stだけが良いっていうのあるでしょ? どうやらそうならなくて済みそうです」と宣言し、すでにワンマンライブ『Happy Birthday TWEEDEES』などで披露されている、軽やかなビートと跳ねるような鍵盤と歌が印象的な「BABY,BABY」をパフォーマンスした。


 アンコールでは、iOSアプリ『Video Clipper』を使い、観客が撮影した映像をライブ配信するという企画が行なわれ、TWEEDEESは『Happy Birthday TWEEDEES』で披露したもうひとつの新曲「PHILLIP」を演奏。山之内のアーバンなバッキングギターと、清浦による音数の多いボーカルが疾走感を生むダンスナンバーで会場を盛り上げ、最後は人気曲「KLING! KLANG!!」でライブを締めくくった。


 2年目に突入し、2ndアルバムの発売も決定するなど、“第二章”へと歩みを進めたTWEEDEES。1年という時間をかけて育んだ“TWEEDEESらしさ”が、次作においてはどのように花開くのかを楽しみにしたい。(取材・文=中村拓海)