F1デビューから2戦連続でポイントを獲得したハースは、3戦目の中国GPに新しいフロントウイングを持ち込んだ。新ウイングはメインフラップの上に立つ垂直フィンに、水平フィンが追加されている(写真:赤の矢印)。ちなみに水平フィンには1本支柱が立っている(写真:黄の矢印)。
中国GPの舞台である上海国際サーキットは1~2コーナーと7~8コーナー、そして12~13コーナーと高速コーナーがあり、現在のF1サーキットでは珍しくフロントのダウンフォースが重要な「フロント・リミテッド」のサーキットである。ハースはフロントのダウンフォースを安定させることを狙って、新しいフロントウイングを投入した。
ところが金曜日のフリー走行で使ってみると、あまり機能していないことが発覚。新しいフロントウイングは速さが十分ではなく、フロントタイヤのデグラデーションも悪かった。
そのため土曜日以降、ハースはフロントウイングを旧バージョンに戻した。しかし、レースではスタート直後の1コーナーでロマン・グロージャンがザウバーのマーカス・エリクソンと接触してしまう。
「僕たちは旧型のフロントウイングでスタートしたんだけど、新ウイングに問題があったときのスペア用に持ってきたものだから、十分な数がなかった。スタート直後にクラッシュしたために、結局は今回採用を見送った新型のフロントウイングを装着して、再スタートしなければならなくなった。だから、レースは僕にとって難しいものになってしまったよ」と、グロージャンは嘆いている。
新型フロントウイングに追加されていた「r」のような形状のウイングレットは従来のカスケードの改良というよりも、また別の新しいアイデアに基づいたパーツのようだ。このベーンの内側の先端は、ルールで許されるギリギリのところまで伸ばされており、気流をフロントホイール後方へ回り込ませる効果を狙っているように見える。これによってフロントホイール後方の乱れた気流を、できるだけボディワークから離れた方向へ導き、リヤエンドの空力を改善しようというという考え方だ。フロントエンドの空力に新たな可能性を見出したデザインとして、今後、他チームも研究してくるかもしれない。
幸先の良いスタートを切ったハースだが、連続入賞記録は「2」でストップ。今後の課題は、いかに正しい方向へとマシンを進化させていけるか。実戦を戦いながらの開発力が問われることになるだろう。