2016年04月26日 11:42 弁護士ドットコム
鳥取県米子市で4月13日、大型トレーラーが住宅に突っ込む事故が起き、運転手が「ネコが横切ってハンドル操作を誤った」などと話していることから、ネット上で「これは仕方ない」と話題になった。
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報道によると、13日の午前6時45分ごろ、大型トレーラーが道路右側へはみ出し、沿道の住宅に止めてあった軽乗用車を押しつぶしたあと、そのまま、住宅に突っ込んだという。事故当時、住宅には2人がいたが、別の部屋にいたためケガはなかった。大型トレーラーを運転していた54歳の男性は軽傷。現場は、片側1車線の直線道路だった。運転手は「トレーラーの前をネコが横切ってハンドル操作を誤った」と話しているという。
このニュースについてネット上では「これは仕方ない」「難しい判断だと思う」といったコメントが見られた。急に飛び出してきた動物を避けようとしてハンドル操作を誤り、事故を起こした場合、運転手は罪に問われるのだろうか。山田訓敬弁護士に聞いた。
「道路交通法第116条は、『車両等の運転者が業務上必要な注意を怠り、又は重大な過失により他人の建造物を損壊したときは、6月以下の禁固又は10万円以下の罰金に処する』と規定しています。
つまり、運転手の重大な過失により、自動車が住宅に突っ込んでしまったような場合には、道路交通法第116条違反の罪の問われると考えられます。シフトレバー操作の誤りについて、運転手の責任を認めた判例もあります(大分地判平成23年1月17日)」
山田弁護士はこのように述べる。今回のケースはどのように考えられるのか。
「上記の事例のように、突然飛び出してきた動物を避けようとしてハンドル操作を誤ったような場合(つまり、運転手に予想が困難な場合)にまで、『重大な過失』としてこの116条違反の罪に問われるかは疑問があります。
『動物注意!』などの標識があり、動物の飛び出しを十分予想できるような場合で、運転者がかなりのスピードを出していたといった特殊なケース等でない限り、『重大な過失』とは認定されないと思われます。
なお、今回のように物を壊しただけにとどまらず、もし人を死傷させたような場合には『重大な過失』ではなく『運転上必要な注意』を怠ったとして、過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)に問われる可能性はあるでしょう。なお、これら刑事上の責任とは別に、民事上の責任(賠償責任)も別途考慮する必要はあります」
仮に、飛び出してきた動物が誰かのペットだった場合、飼い主の責任も問われるのか。
「人に怪我をさせてしまったような場合には、飼い主が過失傷害罪等の罪に問われることが考えられます。しかし上記の事例のように、住宅を壊したにとどまる場合には、刑事責任を問うことは難しいでしょう。もっとも、民事上の責任については、運転手の場合と同様に、別途考慮する必要があります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山田 訓敬(やまだ・くにたか)弁護士
企業法務を中心に企業のトラブル解決に尽力する一方で,個人の交通事故や遺産相続の分野にも力をいれている。特に交通事故事案では,一人でも多くの被害者のお力になりたいとの思いで有志の弁護士らで福岡交通事故相談ダイヤル(無料)を立ち上げその代表を務めています。交通事故相談ダイヤルはhttp://jikosoudan.info/
事務所名:弁護士山田訓敬法律事務所
事務所URL:http://www.yamaben.com/