トップへ

山田孝之×小栗旬×三池崇史『テラフォーマーズ』鼎談 三池「この作品は僕にとって“史上最強の敵”」

2016年04月26日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(左から)三池崇史監督、小栗旬、山田孝之

 累計発行部数1,500万部を超える人気コミックを実写化した映画『テラフォーマーズ』が、4月29日より公開される。人口爆発を迎えた人類が火星を地球化させようと、コケと“ある生物”を火星に送り込んだ火星移住計画。その仕上げのために火星に送り込まれた15人の隊員たちが、ヒト型に異常進化した“ある生物”に対し、昆虫のDNAによって虫の姿に“変異”する超人的なパワーをもって挑む模様を描く。実写映画化にあたり、『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』や『クローズZERO』など、過去にも人気コミックの映画化を手がけてきた三池崇史監督のもと、伊藤英明、武井咲、山下智久、山田孝之、ケイン・コスギ、菊地凛子、小栗旬らが集結した。リアルサウンド映画部では、本作で蛭間一郎役を演じた山田孝之、本多晃役を演じた小栗旬、そしてメガホンを取った三池監督にインタビューを実施。彼らは人気コミックの映画化にどう挑もうとしたのか、撮影時のエピソードなどとともに語ってもらった。


参考:視聴者はいつしか共犯者の心理にーー『ハウス・オブ・カード』の“悪の魅力”


■小栗「映画はいい意味で“クレイジー”でした」


ーー作品が完成したのはつい最近だったそうですね。山田さんと小栗さんは作品をご覧になっていかがでしたか?


山田孝之(以下、山田):やり切っていて面白かったですね。原作にもかなり忠実で、“実写アニメ”だなと思いました。ケイン(・コスギ)さん演じるゴッド・リーの「ハーッ!」は、僕も「やりてー!」という感じで羨ましかったです。


小栗旬(以下、小栗):ゴッド・リーはいいよね。超期待してたんだけど、アッという間にいなくなっちゃって(笑)。映画はいい意味で“クレイジー”でしたね。設定が2599年という、かなり先の未来のお話ですけど、原作には近未来描写はあまり出てこないんですよね。今回は実写映画ということもあり、いろんなテクノロジーがちゃんと描かれているので、そこも見どころです。


山田:500年以上も先の話だけど、そういう世界観だからこそああいうことをやってもOKというのは、観ていてすごく気持ちがよかったですね。みんなでとことんやっている感じが伝わってきて。


ーーお2人とも出演が決まる前から原作は好きで読まれていたそうですね。


山田:火星を地球化させようとする“テラフォーミング計画”で、まず日本が力を得ようとする。それがバレて、世界中が動き出すというのが面白いなと思いました。そういう話は現実世界でも起きていることじゃないですか。それを正面から描いているところに惹かれましたね。


小栗:読み始めた当初は、「この人はきっと主役なんだろうな」とか「この人はメインキャラクターなんだろうな」と思う人が、かなり簡単にあっさり殺されていくのが、面白いなと思っていました。中盤からの、国同士の醜い争いになっていく展開もすごく面白くて、いま現在も読んでいます。


ーー三池監督はいかがですか?


三池崇史監督(以下、三池):僕は役者たちが「『テラフォーマーズ』が面白い」と言うのを聞いて読んでみたんです。そしたら、綺麗ごとじゃなくて、本音をぶつける作品で。いま、そういう作品ってなかなかないじゃないですか。当たり障りのない人間の役を演じなきゃいけないという作品が多い中で、役者たちが声を揃えて「面白い」と言うのにはすごく納得できましたね。


■三池監督「学校か火星かの違いだけで、あとは『クローズZERO』とほとんど同じ」


ーー原作ものを映画化する際、特に人気コミックともなれば、原作ファンからの期待はもちろん、不安も大きくなると思います。そのようなことは気にしましたか?


三池:気にしようとしても、どうすればいいかわからないですから(笑)。それに、自分や役者たちもファンの一部だし、一言で“原作ファン”と言っても、それぞれ尺度もまったく異なりますからね。ざっくりひとかたまりで、“原作ファン”として気にすること自体が、逆に失礼じゃないかと考えています。


ーー原作がこうだからこうする、みたいなことはあまり考えなかったわけですね。


三池:僕は昔ちょっとだけ空手を習っていたことがあるんです。その先生がめちゃくちゃな人で、「本当の愛情っていうのは、奪うことなんだよ。殴ってでもなんでもいいから、欲しいものは奪え」って言っていて。つまり、“相手の気持ちを考えるのは、愛じゃない”ということなんです。だから、自分が作品をリスペクトしていればそれでいい。あと、原作モノを実写化する際のこだわりの中身って、意外と大したことないんですよ。予算や時間的な問題を含め、与えられた条件の中で、最大限の可能性を表現するだけなので。日本でこういう作品を作っているキャストやスタッフに、ハリウッド並みの予算や時間を与えたら、すごい作品ができるんじゃないか。そういう可能性を僕らが掲示するべきというか、そういうことを楽しむべきと思いながらやりました。でも、この作品は僕にとって“史上最強の敵”でしたね。


ーー“史上最強の敵”ですか?


三池:だって、火星で殴りあうわけですから(笑)。


ーー(笑)。本作は、“火星で『クローズ』をやる”がコンセプトになっているんですよね。


三池:というのは、原作の1巻目を読んだ時にそう感じたんですよ。「あれ!? これ、なんかやったことあるぞ…」って(笑)。


山田・小栗:ははは!(笑)


三池:学校か火星かの違いだけで、あとはほとんど同じ。


ーー小栗さんと山田さんはその『クローズZERO』にも出演されていましたね。


小栗:『クローズZERO』とは違って、僕は『テラフォーマーズ』では一切戦っていませんが(笑)。今回、三池監督から、本田の役は僕にあてがきをしたと言われたのでやらせていただいたんですけど、最後の最後までいったい何が当て書きだったんだろう……って(笑)。


三池:いや、そうとでも言わないと出てくれないなと思って。


一同:(爆笑)


三池:まあそれは半分冗談で(笑)。でも、観てもらうとわかると思うんですけど、あれだけキャラが立っている存在だと、ただお芝居や役作りがうまいというだけでは、ああいうふうにはならないんですよ。本田は、行動で見せるというよりも、要所要所に出てきて状況を説明する、語り部みたいな存在。それを、いわばキャラクターとして小栗旬がスーッと演じているけど、そういうことができる役者はそういないですよ。本人はどちらかというと、戦いたかったみたいですけど(笑)。


小栗:でも今回、火星組のみんなの撮影現場と僕の違う作品の撮影現場が一緒だったので、ときどき撮影の様子を覗きにも行ったんですけれど、火星組のみんなが本当にしんどそうで。あのスーツって、たぶんすごい動きにくいと思うんですよ。スーツを着たみんなの疲れ果てた姿を見て、「この人たちはこれをこの先1ヶ月とか続けていくのか……」と。そういう意味で、僕は本当に役得だなと思いましたね。


■山田「変異後のスーツは本当に硬くて、マジでキツかった」


ーー小栗さんと山田さんが三池監督の作品で共演するのは2009年の『クローズ ZERO II』以来ですが、『テラフォーマーズ』では共演シーンがまったくないんですよね。


小栗:そうなんですよ。僕は撮影現場も別だったので、福島(リラ)さん以外のみんなとは会ってもいない(笑)。撮影も淡々と進めていく感じで。


山田:だって撮影期間4日とか5日でしょ?


小栗:5日ですね。この間、山下(智久)くんに「本当に羨ましい」って言われました(笑)。「こっちは息もできないぐらいの状態になるほど苦しい撮影だったのに、僕と旬くん、出てる時間はあまり変わらなかったです」って(笑)。すごく得な役をやらせていただきました(笑)。


山田:僕ら2人はラクしてるよね。 僕も火星に行く部隊の中では、一番ラクできた人間なので。もちろんスーツは動きづらいですけど、旬くんとその前に一緒にやっていた時代劇の甲冑に比べたらまだマシでした。変異後のスーツはマジでキツかったですけど。


ーーそうなんですか?


山田:変異後のスーツは自立するぐらいの硬さで、本当に硬いんですよ。映画の中でよく丸まった体勢をとっていますけど、普通にやっていたらあんな体勢はとれないので、思いっきり力を入れて丸まっています。


小栗:じゃあ丸まっている状態の時は、戻ろうとする反動を自分で抑えていた?


山田:そう。だから撮影の時は、「よーい」って声がかかった瞬間に、一気に力を入れて我慢している。けど、耐えきれずにちょっとずつ開いちゃったりもして(笑)。


ーー山田さん演じる蛭間一郎は原作では体が大きく、山田さん自身も「1カ月で30kgほどウエイトを上げようと思ったんですが、下手したら死ぬのでやめました」というコメントも出していましたね。


山田:あれはギャグですよ。日本でそこまでやれるのは鈴木亮平くらいです(笑)。ビジュアルは確かに大事ですが、最も重要なのは内面なので。だから“蛭間一郎”として生きていました。


小栗:30kg増量して役に臨んでほしいってなると、孝之にオファーいってないよね。


山田:そうそう(笑)。だから僕にオファーがくるということは、僕にできる一郎をどうやるか。そういうことを意識しながら演じましたね。


ーー出演者の皆さんの変異後のメイクや衣装、セットやCGなども含めて、かなり大規模な撮影ですよね。大変だったことも多かったのでは?


三池:まあ、苦労してみんなで一生懸命……というのが理想なのかもしれないですけど、そうなってしまったら作れない作品でもありましたから。ただ、何を作らなきゃいけないか、セットはどうするか、CGは予算内に収まるか……というようなことを最初にハッキリさせる必要があったので、まずは1回、ほとんどを絵コンテに起こしました。なので、映画が完成する前に、もう自分の頭の中では作品ができあがっていたわけです。その自分の頭の中にできあがったイメージを基にしつつ、実際の現場では変化していくんですね。“撮る”という行為が、映画を生んでいくことなので。だから、実際に役者たちを撮っていると、やっぱりすごく面白いんですよ。それぞれのフィールドで自分の城を築いている人たちが集まって、お互いを尊重しながら、芝居でぶつかり合っていく。彼らのそういう姿を見てワクワクしながら僕も撮影をしていましね。


小栗:さっき三池さんも言われていましたけど、この人たちに任せたらすごいものができるんじゃないかというのが伝わるような、和製『マッドマックス』みたいな部分もあるので、喜んでもらえる作品になっていると思います。


三池:子どもに観てもらいたいよね。原作の『テラフォーマーズ』を読むにはまだちょっと早い小学生とか中学生ぐらいの年齢の人たちにも、すごく面白いと思ってもらえる作品になってる。ちょっと悪いことをしているみたいな感じもあってね。なんだこれ? 大人はいったい何を作ってるんだ? っていう。


山田:そうですね。観るにあたっては、本当に何も考えなくていいと思うんですよ。「すごいものがあるから観に来なよ!」ぐらいの感覚なので、それで観てもらって、「うわーすげぇ! 終わった! でもまだちょっと飯はいけないかな……」というような感じになってもらえればと思います。(取材・文=宮川翔)