アラバマ州にあるバーバー・モータースポーツパークで開催されたインディカー・シリーズ第4戦。24日に行われた決勝レースは、ポイントリーダーのサイモン・ペジナウ(チーム・ペンスキー)がポール・トゥ・ウインで2連勝を飾った。佐藤琢磨(AJフォイト)は、13位でレースを終えている。
サイモン・ペジナウ(チーム・ペンスキー)の勢いが止まらない。
名門入り2年目の彼は、開幕戦でこそ先輩チームメイトに勝利をさらわれたが、2位フィニッシュ。第2戦フェニックスでも同じく2位となってポイントリーダーに躍り出る。そして、第3戦ロングビーチでシーズン1勝目を記録。ペンスキーでの記念すべき初勝利でポイントリードを広げると、今回は第4戦でポールポジションから2勝目を飾った。
これでポイントリードはまた広がり、4戦を終えて48点もの差を2番手のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)につけている。開幕からの4レースで優勝2回、2位2回。まさにノリノリで手のつけられない状態だ。
アラバマの快晴の下でペジナウは完璧なレースを戦い、楽勝を飾るかと見えていた。チームメイトのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)を寄せ付けず、彼をパスしてきたグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン)にも4秒の差をつけてレース終盤を迎えていたからだ。しかし、ルーキーのコナー・デイリー(デイル・コイン・レーシング)を抜きあぐねている間にレイホールが急接近。攻撃的な走りが身上の二世ドライバーのやや無謀なアタックによって弾き飛ばされて2番手に後退した。もうゴールまで10周という時点だった。
逃げるレイホールはフロント・ウィングを壊しており、彼もまたジャック・ホークスワース(AJフォイト)にスピードダウンを強いられた。そして、レイホールはバックマーカーのホイールガードをヒットしてしまい、その直後にトップを明け渡した。
フロントウィングの左右両側にダメージを負ったレイホールは、2位でゴールするのが瀬一杯となった。幸いにも、3位争いを繰り広げるパワーとジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)との間には大差がすでについていた。
パワーはゴール目前でニューガーデンにパスを許した。ニューガーデンは今季初の表彰台だ。
今日、衝撃的だったのは、最後尾21番手スタートだったファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)のレースだ。スタート直後の混乱をスルスルと潜り抜け、1回目のピットストップを早めに行う作戦でコースの空いたところにレッドタイヤで出て一気にペースアップ。トップ10入りでも喜べるレースのはずだったが、5位でゴールしてみせ、ポイントダメージを最小限に抑えたのだった。
レイホールの2位によりシボレーの3戦連続表彰台独占は阻まれた。しかし、ホンダ勢の苦戦は続いており、今回レイホール以外でトップ10入りできたのはジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)だけだった。彼は8番手スタートから6位でゴールした。
「最後のバトルはエキサイティングだった。ファンが楽しんでくれたことと思う。今日のレースではトラフィックの処理が鍵を握っていた。デイリーは速く、ラップタイムの差は0.8秒ぐらいしかなかったと思う。それぐらいの差では、抜くのはほとんど不可能」
「そうこうしているうちにレイホールに追いつかれ、強引なアタックをされ、接触してコースを外れ、トップを奪われた。あの時の彼のアタックは、仕掛けるタイミングが遅かった。パスが不可能なコーナーでのアタックでもあった。2番手に落ちてアタマにきた僕は、“絶対に抜き返してやる!”と言い聞かせた。そして、その通りにトップを奪い返した。2戦連続優勝とは本当に素晴らしい結果。これもチームのおかげだ。そして、次は僕が大好きなインディアナポリスのロードコースだ」とペジナウは喜んでいた。
レイホールは全力を出し切っての戦いに満足気だったが、悔しさもにじませていた。今シーズン初の表彰台で彼は、「勝てていたレースだった。トップを奪い返されたのが悔しいね。あのままゴールまでいけると思ってたから……」とレースを振り返った。
「ホークスワースにぶつかったのは自分のミス。瞬間的な判断を誤った。彼はターン5でアウト側にいった。あのままアウトにいてくれるんだと思ったんだが、彼はコースの反対側へとラインを変えた。あの接触がなかったら……。きっと、これから後悔すると思う。2位フィニッシュは悪くない結果。ホンダも僕らも全力で実力アップを目指してきており、それが着々と実現されている、と今日のレースでは感じた」とも彼は話した。
佐藤琢磨(AJフォイト)は予選16位から決勝は13位でゴールした。最初のスタートで目の前、左側のカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)がミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)に追突。アレシンのマシンはスピンしてホークスワースを押し出すことに。この混乱で彼ら3人は最後尾まで後退したが、その後のスタート直後、ターン2でアウトにラインを採った琢磨は、汚れた路面に足を掬われてコースを外れ、今度は彼が最後尾へ。
ターン5でスピンをさせられたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)こそパスでき、その後も好ペースで走り続けた。しかし、結局は最初に大きく順位を落としたことが響き、13番手までの挽回が精一杯となった。
Report by Masahiko Amano / Amano e Associati