2016年04月25日 11:02 弁護士ドットコム
高校生の娘が「頭髪検査」で引っかかり、学校から前髪を作るよう指示された。そんな書き込みがネットの掲示板に投稿されました。
投稿者によると、娘は「髪がモジャモジャ」で、本人も気にしてドライヤーで髪を伸ばし、前髪部分も含めて全て後ろで束ねていたそうです。ところが今回、頭髪検査で、学校から「前髪」を作るよう指示されたとのこと。
投稿者は、「高校ってとんでもない校則があるよな」「体毛の事で真面目で大人しい娘が嫌な思いをする事に申し訳ないわ」と学校の対応に不満を隠せません。ちなみに、縮毛矯正やパーマをかけることも校則違反で、整髪料も禁止されているようです。
天然パーマなどの生徒に対して、学校が「前髪を作ること」を強制することに問題はないのでしょうか。大久保誠弁護士に聞きました。
A. 髪形は憲法の保障する「自己決定権」のひとつです
頭髪は身体の一部であり、しかも衣服と違って学校内外で変えることができません。そこで、頭髪をどうするかは、憲法13条によって保障される自己決定権のひとつととらえられています。
なぜ、髪型が憲法で認められた「権利」としてとらえられているのでしょうか。これは、どんな頭髪をするかは、服装以上に文化の選択という側面が強いからです。したがって、校則によって頭髪を規制する場合は、次のような点を慎重に検討しなければなりません。
まずは、何のために規制をしなければならないのか、つまり目的は何かをハッキリさせることです。さらには、その目的と、頭髪を規制するという手段の関連性が、どこまであるのかという点が重要になります。
今回のケースで、「前髪を作る」ということが、どういう目的から規制されているのかが不明ですので明確な回答は難しいですが、私立学校の場合には、建学の精神に基づく伝統・校風・教育方針などに重きがおく裁判例が多いです。裁判で争ったとしても、違法という判決にならない可能性が高いのではないでしょうか。
なお、学校が生徒に対して、髪を染めることやパーマを禁止することについては、「修徳高校パーマ退学訴訟」の最高裁平成8年7月18日判決があります。
この訴訟では、校則により「パーマをかけることを禁止しているのも、高校生にふさわしい髪型を維持し、非行を防止するためである」と判断されました。
この判決に対しては、非行防止目的とパーマ禁止の手段とのあいだに関連性があるのか疑問の余地があるとの批判もありますが、その後の裁判例では、私立・公立を問わずパーマ禁止や茶髪禁止の校則による指導に問題はないという判決もあります。したがって、学校が生徒に対して、髪を染めることやパーマを禁止することは違法とは言えないでしょう。
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【取材協力弁護士】
大久保 誠(おおくぼ・まこと)弁護士
ホームページのトップページに写真を掲載しているように、野球が趣味です。
事務所名:大久保法律事務所
事務所URL:http://www.ookubolaw.com/