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最下位からの“逆転”優勝、山本独走劇のキーポイント

2016年04月25日 00:21  AUTOSPORT web

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2016年スーパーフォーミュラ第1戦鈴鹿 山本尚貴(TEAM 無限)
2016年の全日本スーパーフォーミュラ開幕戦。ヨコハマタイヤに変わって最初のレースを制したのは山本尚貴だった。

 ここ鈴鹿での彼の相性は非常によく、決勝の結果だけを見れば少し当たり前のように感じる部分もあるかもしれないが、今回はこれまでにないほど浮き沈みの激しい週末だった。

 今年から設けられた金曜日の専有走行。予選までの貴重な走行時間が増えたが、いきなり電気系のトラブルが発生。セッション中には解決できず、思うようなテストができなかった。そこで出遅れたことが土曜日のフリー走行にも響き、トップから1.7秒遅れの16番手と低迷。今週末は苦戦を強いられるのかと思われた。

 ところが、予選が始まりQ1で2回目の新品タイヤを履くと、それまでの苦戦が嘘だったたかように好タイムを連発した。Q1、Q2、Q3の全てでトップタイムをマーク、特にQ3の最後は2位以下に0.3秒以上の差をつけ、ライバルを圧倒した。

 ただ、決勝日のフリー走行2回目では再び下位に沈み、なんとトップから2.8秒差の19番手。ひとつ上のマシンから0.7秒も離された最下位だった。フリー走行とはいえ、このタイムでは決勝も苦しい展開になるのではないかと思われたが、直前の8分間のウォームアップで手応えを掴み、スタートから後続を圧倒する独走劇を披露した。

 これだけ浮き沈みの激しかった週末。山本と手塚長孝監督、そして阿部和也エンジニアは、どん底から浮上できたポイントを次のように明かした。

 「今週はとにかく我慢できたことがキーポイントだったと思います」と山本。「特に予選でポールをとることが必要だったし、もし2番手3番手だったとしたら決勝で逆転できなかったかもしれない。そこで予選に向けて良い意味で慌てなかったです。チームも含め、僕自身も土曜の朝で調子が良くなくてセッティングを変にイジらなかったことが良かったです。決勝日の朝も、何かがおかしかったのは確かですし、思い当たる節はいっぱいありました。その中で、前夜に雨が降ったのでコンディションに合っていないのかを見極めて、コンディションが出来上がるのを我慢できたのが、決勝につながったと思います」

 また阿部エンジニアは、最後の最後まで最良のセッティングを求め、考え続けたことが勝利につながったという。

「キーポイントは諦めなかったことだと思います。金曜の走り出しからトラブルで後手にまわってしまい、フリー走行でもセッティングをまとめきれなかった。そこでも予選前まで、ひたすら良いセッティングがないかと考え続けたのが本当に良かったですね。メカニックの皆もギリギリまで作業を待ってくれて対応できるようにしてくれていたことにも感謝しています。もしあそこで諦めていたら、今週末は本当にダメだった。分からない中でも色々得たことも多かったので、本当に諦めないでよかったです」

 そしてチームをまとめる立場の手塚監督は、金曜のトラブルが最終的に良い意味での起爆剤になったという。

「金曜日にトラブルが出て、出遅れてしまったのが大きかったですね。ただ良い方向に考えたら最初の間に不運を出し切ったと思って、もう一度土曜日から仕切り直しという気持ちでチーム全員で臨みました。メカニックの皆もトラブルが起きても顔色変えずに作業にあたってくれました。ドライバーとエンジニアばかりが注目されがちだけど、我々のメカニックも精神は強いですから、心強かったです」と、メカニックたちの頑張りも讃えた。

 3人のコメントに共通して感じられたことは、トップをとるために最後まで出せる手を尽くし切ったというところ。今のスーパーフォーミュラは非常にレベルが高く、100パーセントのセッティングを完成させたとしても、トップをとれるという保証はない。その点で今週末のTEAM 無限は金曜のトラブルから歯車がかみ合っていなかったと言えるだろう。

 ただ、そこで完璧に歯車を噛み合わせるため、トップをとるために予選の直前、決勝の直前までチームの誰一人として諦めなかったことが、スタートから他を圧倒する独走劇につながったのだ。