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『デアデビル』制作陣が明かす、Netflixドラマが描くヒーロー像「デアデビルは身近な場所を救うためにいる」

2016年04月22日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『Marvel デアデビル』(c) Netflix. All Rights Reserved.

 マーベルヒーローの作品群の中で、Netflixオリジナルドラマ『デアデビル』は極めて異色の作品だ。主人公のデアデビルことマシュー・マードック(通称:マット)は盲目の弁護士で、それゆえに“レーダーセンス”と呼ばれる超人的な聴覚や嗅覚、反射神経などを持つものの、空を飛んだり、手からビームを放ったりといった超自然的な能力はない。あくまでひとりの人間として、ヘルズキッチンというひとつの街で犯罪者相手に戦う自警ヒーローだ。悪との戦いはスタントを使わない肉弾戦になり、だからこそ生々しい迫力に満ちている。マットが抱える悩みも、一個人としての正義を問うもので、決して人々の日常から乖離したものではない。製作総指揮を務めるジェフ・ローブによると、彼の人間味こそが、ドラマというスタイルで作品化することの意義であるという。


参考:『デアデビル』主演チャーリー・コックスが語る、スーパーヒーローの葛藤 「人間くささは、演じるときの醍醐味でもある」


「もしアベンジャーズが世界を救うためにいるとしたら、デアデビルは身近な場所を救うためにここにいるんだ。多くの意味で、それが人々が没頭できるストーリーなんだよ。映画はエピック・アドベンチャーで、ローラーコースターだ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の中で宇宙の彼方に連れて行ってくれたり、『アントマン』でミクロの世界に行ったりという風にね。僕らは映画よりもテレビでやった方が優れているストーリーを語っているんだ。それに、(テレビの方が)エモーショナルなインパクトを与えてくれる」


 1シーズン13話というNetflixドラマの構成も、テレビドラマ独自の魅力を際立たせている。Netflixドラマは、通常のテレビドラマと違い、オンエア前に全話を完成させ、一気に13時間分のエピソードを提供するスタイル。映画と比べ、物語を語る上での時間的優位はもちろんだが、配信のスタイルについても、他のブロードキャスト作品に比べて大きなアドバンテージがあると言える。それはジェフも実感しているようで、「一週間に一度ストーリーを語る方法だと、来週も人々が戻ってくるようにするのが目的になってしまうこともあるんだ。それに対して、Netflixで物語を語る場合は、最初から最後まで滑らかなストーリーにすることできる。鑑賞者も見始めたら、13時間後にはそのストーリーを完結させることが出来るってわけ。それはストーリーテリングにおけるダイナミクスを変化させるんだ」とコメントしている。


 長い尺があるからこそ、スーパーヒーロー作品の醍醐味であるアクションシーンだけではなく、人間ドラマもしっかりと描き切ることができる。シーズン1では、マットの内面の葛藤を主軸に描き、シーズン2ではスーパーヒーローのあるべき姿や善悪の境界を問う、より高度な問題が用意されている。主演のチャーリー・コックスはマットの心の葛藤について次のように語る。


「マットが自分自身に抱くコンスタントな葛藤は、1シーズンでかなり掘り下げている。彼の行いや自警主義の正義に従事することへの疑問、それに彼の信念からくる葛藤についてね。それはシーズン2でもずっと目にするものだよ。フランク・キャッスルが出てくることで、それは少し影に隠れるけど。フランクはデアデビルに、違う種類のジレンマをもたらすんだ。シーズン1とは違う種類のアイデンティティ・クライシスを与える」


 フランク・キャッスル(ジョン・バーンサル)は、別名パニッシャーと言い、シーズン2に登場するヴィラン(悪役)である。ヴィランといっても、彼は彼なりの正義を掲げ、デアデビルとは対照的な手段で街に根付いている悪を殲滅していく。アンチヒーロー、といったイメージに近いだろう。ジョン・バーンサルは二人の関係について「マットとフランクは両方とも正義のためにそこにいるが、彼らの正義の種類は明らかに違う。それを達成する手段も異なっているし、最終的にお互いが望むものも違う。そんな二つの力がぶつかった時にとても面白いドラマが生まれるんだ」と語っている。不殺を貫くマットと、悪人には死を与えるフランク。正義感を持つ者同士であるにも関わらず、相容れないふたりの関係が、本作のテーマをより複雑なものにし、さらに味わい深いドラマを生み出していくのだ。


 フランクと同じく、シーズン2から登場するのがマットの元恋人エレクトラ(エロディ・ユン)だ。ミステリアスで怪しげな雰囲気を纏う彼女だが、マットがデアデビルであることを肯定してくれる唯一の理解者でもある。エレクトラを演じるエロディ・ユンは、マーベルへの参加を「エキサイティングな経験だった」と語っている。


「この作品に関わることが出来て、とても興奮したわ。私たちはマット・マードックと彼のジャーニーを語っているの…正義を求めている人のジャーニーをね。彼が弁護士であろうと、夜の自警主義者であろうと関係ないわ。エレクトラにとってもそれは同じで、私はそれを「エレクトラは誰? この女の子は誰なの? 彼女はなにを望んでいるの? 彼女はいいの? 悪いの?」というふうにアプローチしたの。ストーリーの途中や最後に、彼女の真実を見つけられるのを期待しているわ」


 善と悪では割り切れないグレーゾーンがあると説き、フランクの存在に苦悩するマットを支えるエレクトラ。しかし、彼女自身も重大な秘密を抱えている様子から察するに、今後の展開を左右する存在であることは間違いない。


 アイアンマンがアベンジャーズに所属しているように、デアデビルもザ・ディフェンダーズというチームに所属している。デアデビルをはじめ、チームにはジェシカ・ジョーンズ、アイアンフィスト、ルーク・ケイジといったヒーローたちが所属している。制作総指揮のジェフは、そんなディフェンダーズについても、すでにプランは準備していると明かす。


「今僕らはルーク・ケイジのプロダクションをやっていて、アイアン・フィストにも取り掛かっている。最終的にどうなるかというと、彼ら全員がお互いに「ザ・ディフェンダーズ」として出会うことになる。僕らが最初にNetflixとした話では、『デアデビル』も『ジェシカ・ジョーンズ』もシーズン2はなかった。つまり、僕らはこの4つのストーリーを語って、「ザ・ディフェンダーズ」を語り、その後は家に帰る予定だったんだ」


 『デアデビル』のシーズン3が制作されているという話はまだ発表されていないようだが、シーズン2の最終話には続編を予感させるラストシーンが用意されていた。『デアデビル』の続編に加え、現在制作中である他のヒーロー作品も気になるところだが、なにより『ザ・ディフェンダーズ』として全員集結する日を多くのファンは待ち望んでいるだろう。(泉夏音)