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そなえよつねに―熊本地震で素早く93億支援表明した「日本財団」の備え

2016年04月21日 17:41  おたくま経済新聞

おたくま経済新聞

そなえよつねに―熊本地震で素早く93億支援表明した「日本財団」の備え

4月19日、熊本県を中心とする九州地方の地震災害に対し、日本財団が総額93億円の「緊急支援策・第1弾」を発表しましたが、あまりの額と聞き慣れない名称から「一体何者なのか」とネット上でささやかれていました。


【元の記事はこちら】


ちなみに発表された支援の内訳は


・障害者・高齢者・乳幼児など要援護者に対する支援、非常用トイレの配備:3億円
・100万円を上限としたNPO、ボランティア活動の支援:10億円
・家屋損壊(全半壊)等に対する見舞金の支給:20億円
・住宅・事業再建資金のための融資制度の創設:30億円
・熊本城再建のための支援:30億円


これに合わせて、熊本地震のボランティア活動資金への募金も受付開始しています。この「熊本地震ボランティア活動資金」として募金された資金は、


・現地で活動するNPOの活動費に全額活用。日本財団側での間接経費は差し引かない
・NPOからの申請をメール・FAXなどで受け付け。被災者ニーズとの整合性、資金の必要性を審査のうえ、即断で支援を決定。活動費を素早く届ける
・募金により支援した団体の名称・活動内容・具体的な資金の使途・活動報告は全て公式サイト上で公開
・現地にはすでに日本財団の災害専門家チームを派遣済み。被災者ニーズを把握を進めており、NPO活動の必要性を判断する


という、非常に機動的で透明性の高い活用を約束しています。


東日本大震災でも素早い対応を見せたこの「日本財団」、どういう団体なのでしょう。


■旧称は「日本船舶振興会」 一休さん世代にはCMでおなじみ


日本財団は国土交通大臣からボートレース売上金の2.5%を交付金として受け入れ、国内外の公益事業を行う団体に向けての事業支援を行う公益財団法人です。簡単に表現するなら、全国のボートレース場や場外発売場(ボートピア)でファンが購入した舟券代が有効活用される団体、ということですね。


旧称は「日本船舶振興会」。30代後半以上の方なら、テレビアニメ『一休さん』などで流れていた「一日一善」という、高見山関(当時。東関親方を経て日本相撲協会を退職した渡辺大五郎さん)の出演しているCMが印象に残っているかもしれません。


1962(昭和37)年の設立以来、国内では老人ホームや障害者施設の送迎車や車いす、入浴介助車などの寄付、ハンセン病に対する支援などを行っています。海外では海上の主要交通路であるマラッカ海峡の航路整備事業をはじめとした、船に関する事業や、難民救済事業などを行っています。


災害に対する資金援助については、1971(昭和46)年に発生したトルコ地震の被害に対して行ったのが最初。以降、国内外で発生した災害に資金援助を行い続けています。


さて、なぜ日本財団はこれほどまで素早く、93億円もの支援を申し出ることができたのでしょう。そのきっかけは2011年に発生した東日本大震災にありました。


■東日本をきかっけに「真っ先に動くための資金」を蓄えていた


東日本大震災での災害復興支援活動の経験から、日本財団は「災害対策は起きてからでは遅い」という教訓を得たといいます。大災害が起きてから活動支援金の金策をするのではなく、それ以前から「真っ先に動くための資金」を蓄えておく仕組みが必要だと考え、2014年3月に目標額300億円の「災害復興支援特別基金」を立ち上げていました。今回の93億円は、事前に積み立てていたこの基金から拠出されます。


ボーイスカウトには「そなえよつねに」という言葉がありますが、日本財団はそれを忠実に実行していたからこそ、素早い資金提供の申し出ができた、ということですね。まだこれは「第1弾」ということなので、また次の支援策が発表されることと思います。


▼参考
平成28年熊本地震への支援(日本財団)


(文:咲村珠樹)