2016年04月19日 11:22 弁護士ドットコム
「奥さんや職場にバラされたくなかったら、誠意をみせてよ」。ドラマのような話ですが、別れ話がもつれて「手切れ金」を求められた人からの相談は、弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも寄せられています。
ある女性は、「(夫は手切れ金を)本当に支払う必要があるのか」と投稿しました。女性の夫が、2年にわたって関係を続けた不倫相手に別れを告げると「バラされたくなかったら、150万円を3カ月以内に支払うよう」に求められたそうです。
夫からすべてを打ち明けられた女性は、呆れ果てながらも、冷静に「そもそも手切れ金支払う必要があるのか」と、疑問を抱いています。相手女性は、既婚者と知って不倫関係を続けていたようです。そのため、慰謝料を請求するのは本来、妻である自分の方ではないかと考えています。ただ、離婚する気はありません。
相談者が心配しているように、不倫相手に「手切れ金」を支払わないといけないのでしょうか。畑中優宏弁護士に聞きました。
● 手切れ金を支払う法的義務はない
まず、既婚者であることを承知したうえで不倫交際していた場合、夫は、相手の女性に「手切れ金」を支払う法的な義務はありません。ですから、相談者は心配する必要はありません。
さらに、「払わなければ、職場にバラすぞ」などと言われているとしたら、支払い義務がないのに脅しているということになります。その女性は、刑法の「恐喝未遂」にあたる可能性があるでしょう。
一方で、夫が「未婚である」とだまして交際し、相手の女性に何らかの損害を与えた場合、夫はその損害を賠償する責任が生じる可能性があります。
いずれにしても、妻は判例上、不貞相手の女性に慰謝料の請求ができます。
しかし、夫と離婚しない場合、離婚した場合に比べて、慰謝料は低い金額になります。妻が与えられた損害は少ないといえるからです。
あくまで一般的な話ですが、離婚も別居もしない場合は50万~100万円、別居に至った場合は100万~200万円、離婚に至った場合は200万~300万円が相場になります。
そうはいっても、もし夫の不倫相手が、そのような請求をしてくる女性でしたら、話がこじれずに別れるというのは非常に難しいでしょう。相手に応じて対処方法を考えるしかありません。
【取材協力弁護士】
畑中 優宏(はたなか・まさひろ)弁護士
公立小学校の教員を8年間勤めた後、弁護士をめざして司法試験に合格しました。学校現場の問題には詳しく、相談も多く受けています。
事務所名:弁護士法人湘南よこすか法律事務所 逗子事務所
事務所URL:http://www.sy-law.jp