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NEWSの勢いはどこまで加速する? 新番組『変ラボ』に見るタレントとしての力量

2016年04月19日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 いま、NEWSが勢いづいている。この4月から『変ラボ』(日本テレビ系)と『NEWSな2人』(TBSテレビ系)の二番組がレギュラー化、さらに今年の「24時間テレビ」メインパーソナリティへの就任も発表された。それに伴い、各メンバーがさまざまな番組でフィーチャーされる機会も増えている印象だ。


 レギュラー番組のうち、『変ラボ』はすでに始まっている。小山慶一郎と加藤シゲアキの2人が出演の『NEWSな2人』に対し、こちらはメンバー全員の出演だ。単発時代の第2弾で増田貴久と手越祐也が加わり4人の出演になったが、それがそのまま引き継がれた格好である。


 この番組、他のジャニーズグループの番組と一味違うのは、科学をモチーフにしている点だ。番組の公式サイトに映る4人も白衣にネクタイ姿、手にはメスシリンダーやビーカーを持つといった研究者スタイル。内容も、突拍子もなくはあるが実現可能と思われる仮説を立て、それを実験によって検証するというものだ。専門家の助言を受けつつ、各メンバーが体当たりで調査し、最後にその結果を評価する。


 レギュラー化初回は、いざと言うときに非常食がすぐ手近にない場合を想定し、小山慶一郎が「食べられる服は作れるのか?」というテーマで服飾専門学校の学生たちと協力して昆布やかんぴょうなど保存食材だけを素材に洋服を作った。結果は、デザインのファッション性も高く、予想以上の仕上がりだった。だが昆布などは乾燥すると縮んでしまい、保存性に疑問符が付いたため評価は「ダメ」ということに終わった。


 バラエティ色を加味した科学的実験番組の歴史は意外と古い。1978年、NHKで始まった『ウルトラアイ』あたりがひとつの原点だろうか。


 この番組の話題は、『NHK紅白歌合戦』の司会を何度も務め、NHKの看板アナウンサーだった山川静夫が自ら体当たり取材のリポーター役になったことだった。時間感覚の変化を実験するために真っ暗な洞窟で二日間過ごしたり、プロボクサーのパンチ力を体感するために現役日本チャンピオンのスパーリングの相手となったり(読売新聞芸能部編『テレビ番組の40年』)。いまなら若手芸人がやるようなことである。しかもそれをいまよりははるかにお堅いイメージの強かったNHKの局アナがやってみせたのだから、評判を呼びたちまち人気番組になった。


 同じ科学バラエティという意味では、その山川のポジションをアイドルのNEWSが引き受けたのが『変ラボ』ということになるだろう。ただし、アイドルが体を張ってロケをするというだけではインパクトを残すことはいまや難しいだろう。他にもそのような番組は数多くある。局アナが体当たりリポートをする意外性だけで十分だった数十年前とは時代も変わった。


 そこで必要になるのが、出演者のキャラクターである。過酷な実験を進めるなかでふと覗く個性や素の部分の魅力が、現在のテレビには欠かせない。だが、そうしたキャラクターは、放っておけば自然に固まるものでもないだろう。一方で、それを番組がうまく引き出すことも必要になってくる。その分、企画や演出側の力量もより重要になる。


 実際、いま放送されているバラエティ番組では、スタッフによるさまざまなかたちでの出演者いじりが工夫されている。ナレーションやテロップを使ってのいじりもあれば、ロケに同行しているディレクターが直接いじることもある。同じジャニーズグループの番組で言えば、先日まで放送されていた『KAT-TUNの世界一タメになる旅』(TBSテレビ系)などが好例だ。


 その点は、『変ラボ』も抜かりがない。そう思わせてくれたのは、同じく初回に放送された「放課後研究室」のコーナーである。これは単発時代にはなかった企画であり、レギュラー化にあたってNEWSのキャラクターをいっそう際立たせようとするためのものである。


 この時の放送では、「NEWSには何が足りないのか? 」というテーマのもと、NEWSのイメージを一般人100人に街頭調査した結果をランキングで発表していた。「仲がいい」とか「かっこいい」といったポジティブな意見も多かったが、1位は「知らない」という対照的な結果に。そして個々のメンバーのイメージについても、小山がキャスター、加藤が作家、手越がバラエティと3人については出たが、増田については「わからない」という回答があった。


 一歩扱いを間違えれば空気が淀んでしまいかねない結果である。だが番組では、グループの知名度の問題にしても、増田のキャラの問題にしても、バカリズムの巧みなMCぶりもあってうまく笑いにつなげられていた。


 例えば、増田貴久は、「テゴマス」での活動や『水曜歌謡祭』への単独出演など、歌やダンスといったアイドル本来のパフォーマンスで評価されてきたメンバーである。それがこの調査ではバラエティ的なキャラの薄さという結果にもなったわけだが、それを隠すことなくほどよい「毒」のあるいじりによって、逆に増田貴久という存在を印象づけることに成功していた。そこには、『世界の果てまでイッテQ!』や『嵐にしやがれ』のスタッフでもある企画・演出の前川瞳美の優れた手腕が感じられた。


 もちろん、そうしたいじりが成立するのも、受け止める側のNEWSにタレントとしての確かな力量があるからだ。


 以前、この連載でも書いたが、NEWSは知性とアイドル性を兼ね備えたグループである。小山や加藤のようにキャスター業や作家業をこなすメンバーがいて、同時に増田や手越のようにアイドル性の高いメンバーがいる。このイメージ調査の結果を見たときも、小山などが冷静な大人の対応を見せる一方で、増田は素直な少年のようなリアクションであった。両者は対照的ではある。だがどちらも、ただ反発するのではなく、結果を受け入れたうえでそれぞれのらしさが伝わる表現方法で返していた。


 このように、NEWSというグループには独特の柔軟性がある。多少の「毒」もすべて中和してその場の空気を和らげてしまうようなところがある。この“中和力”は、彼らの持つグループとしての大きな武器であるように思う。


 そこには、2003年のデビュー以来の経験の積み重ねも生かされているのかもしれない。当初、9人体制で結成されたNEWSは、さまざまな過程を経て2011年に現在の4人体制になった。その間に彼らが得た経験値には、他のジャニーズグループにもあまりない、おそらく想像以上のものがあるだろう。


 今回の『変ラボ』は、その4人体制になってから初のレギュラー番組ということになる。その意味では、まさにNEWSの再出発を期する番組であり、それゆえイメージ調査の結果も彼らにとってはその思いを改めて強くするものだったに違いない。


 いまはまだ番組も始まったばかり、NEWSとともにこれから成長していく緒についたところだ。とは言え、これからの展開が期待できる快調な滑り出しだったことをぜひここに記しておきたい。(太田省一)