FIAのF1レースディレクター、チャーリー・ホワイティングは、中国GP予選中に作業車両が不適切な位置に停車していた件について、「受け入れがたい」ことではあるが「小さなミス」だったと語った。
予選Q1セッション中、ピットレーン入口付近に停められていたサーキットの作業車両について、ジェンソン・バトンは「あのセッションで一番危険な出来事」だったと述べた。彼によるとその車両は、マシンがコースオフした場合にはまともに衝突しかねない場所にいたという。
バトンのコメントに応えて、ホワイティングは次のように語っている。「あの作業車両の運転手が、ピット入口のランオフエリアにクルマを停めたのは、確かにちょっとまずかった。だが、彼はすぐに車両を移動させた」
「彼はコース清掃用のピックアップトラックの運転手として、臨時で雇われた男だった。皮肉なことに、このトラックはコース清掃の能力を改善して安全性を高めるために、今年から新たに取り入れられたもののひとつで、本来の目的にはたいへん役に立った」
「あの運転手は経験不足だっただけで、二度と同じ間違いはしないだろう。そして、強調しておく必要があるのは、あの場所が通常のランオフエリアではなく、クルマを停めたこと自体は受け入れがたいものの、危険性は低かったということだ」
またバトンは、ニコ・ヒュルケンベルグのマシンのホイールが脱落し、コース脇に止まったときには赤旗が出されたのに、作業車両の件ではなぜ赤旗にならなかったのかと疑問を投げかけている。
ホワイティングの答えは、「赤旗に限らず、どんな旗も出されなかったのは、あの場所がコースの一部ではないからだ」というものだ。
「ヒュルケンベルグの件と同じ次元で話をすることはできない。確かに彼のクルマはコース脇に停まったが、外れたホイールが転がり続けていて、危険な状況だった」
中国GPの予選では、マノーのパスカル・ウェーレインがピットストレートでアクアプレーニングを起こし、クラッシュするという場面もあった。彼にはバンプの向こう側にあった水たまりが見えなかったためで、この水たまりを取り除く作業で予選は20分間中断した。
「あそこに溜まった水を取り除くことにしたのは、結果として生じる路面のグリップの変化が、ドライバーにとっては無視できるレベルにとどまると考えたからだ」と、ホワイティングは言う(注:人工的な手段で路面のグリップを変化させてはならないというルールがある)。
「コース全体の半分がウェットで半分がドライのとき、濡れた半分を乾かすかと言えば、それはありえない。作業に少し時間がかかったのは、彼らが水を乾かすのではなく、掃き出そうとしていたからだ」
Q2とQ3の間には、もうひとつめずらしい出来事があった。サポートレースで使われるタイヤバンドル(タイヤを重ねて束ねたもの。縁石のカットを防ぐために置かれることがある)を積んだフォークリフトが、コース上に現れたのだ。
「ターン14のエイペックスにタイヤバンドルが置かれたのは、マーシャルが予選は終わったと勘違いしたためのミスだった。おそらく、私たちが(ヒュルケンベルグのアクシデントの後)Q2は再開せずに打ち切るとすると言ったのが、予選全体の打ち切りと誤解されたのだろう。いずれにしても、クルマが再びコースに出る前に撤去されたので、実害はなかった」
「おかしかったのは、チームマネージャーたちから一斉に『なぜタイヤバンドルを置く?』と問い合わせがきたことだ。この際だから白状すると、私はそのうちのひとりをからかった。『ドライバーによる縁石のカットが目に余るので、阻止するためにドラスティックな手段を講じることにした』と言ってね」