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Hey! Say! JUMP・山田涼介の“会話”はなぜ説得力を持つ? 『暗殺教室~卒業編~』の演技を考察

2016年04月17日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 若手の脚本家・演出家として活躍する登米裕一が、気になる俳優やドラマ・映画について日常的な視点から考察する連載企画。第五回は、『暗殺教室~卒業編~』で主演を務めるHey! Say! JUMP・山田涼介の会話劇を軸に、そのリアクションとアクションの上手さに迫る。(編集部)


 『暗殺教室~卒業編~』を鑑賞し、Hey! Say! JUMPの山田涼介君は“会話”が上手な俳優さんだなと感じ入ったので、その事について書きます。


 セリフの多い少ないで一喜一憂する俳優さんがいます。セリフが多いと俳優として仕事をしている実感が得られやすいからだと思います。でも、いい俳優さんはセリフがない時でもきちんと仕事をしています。誰かが起こしたアクションに対してどう感情が動いたのか、リアクションが求められている状態であり、セリフがないからこそ、それを丁寧に演じる必要があるのです。


 今回、山田涼介君演じる潮田渚はあまり多くを語りません。自分の話をするよりも殺せんせーや菅田将暉君演じる赤羽業の話を黙って聞いている時間の方が長かったりします。けれど何もしていない訳ではなく、何かを考え、迷い、葛藤しています。そう言った感情を、微妙な表情筋の硬直、呼吸のゆらめき、視線の変化などでしっかり表現をしています。


 山田君の芝居は本当に“聞き上手”です。だからこそセリフがなくても見事に会話が成立しているのだと感じ入りました。


 日常生活でときどき、相手がどう反応しようが関係なく話が出来る人に会いますよね。相手がうんざりしているのに、気づかず喋り続けているタイプの人です。会話ではなく演説に近いと言えるかもしれません。でも、スピークとスピーチは違います。会話をする場合、自分が喋るためには相手の言葉を聞かなければいけませんし、相手の感情を受け止めるから自分の感情も動き、相手に伝えたいことが発生します。本来、会話とはその繰り返しです。そういうルールが実は隠されています。


 カラオケに行っても誰かが歌うときは聴く。その代わり自分の歌も聴いてもらうという暗黙のルールがありますよね。自分が歌ってるときは聴いてもらったのに、人が歌ってるときはトイレに行ったりスマホをいじってると嫌われてしまいます。逆に人の歌を一生懸命聴いてくれる人が、最後に一曲だけ歌うとなったら、みんな一生懸命聴いてあげようと言う気になりますよね。


 誰よりも人の話を聞いて、リアクションを取る山田涼介君。みんなの感情を受け止める優しい潮田渚だからこそ、最後の最後で殺せんせーに対して自らアクションを起こすシーンで、観ている人をあれだけ惹きつけるのだと思います。


 もう1つ、山田涼介君は自分の“筋肉”を分かっている人だなと思いました。表情筋や、ちょっとした手の仕草もきれいですが、とくに菅田将暉君が演じる赤羽業との決闘シーンはキレッキレでした。肉体が説得力を持つ役者さんは、それだけで魅力的です。リアクション上手と書きましたが、見事なアクションが出来る俳優さんでもあると思いました。もっともっと山田君のポテンシャルを活かす作品に出て欲しいと願うばかりです。(登米裕一)