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『デアデビル』主演チャーリー・コックスが語る、スーパーヒーローの葛藤 「人間くささは、演じるときの醍醐味でもある」

2016年04月16日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

チャーリー・コックス

 アベンジャーズに並び、マーベルコミックスを代表するヒーローとして愛されるデアデビルは、悪を裁く存在でありつつも、“不殺”をモットーにする異色のヒーローだ。Netflixオリジナルドラマとして配信されている『デアデビル』は、NYに実在する街“ヘルズキッチン”を舞台に、昼は盲目の弁護士、夜は悪人を一掃するデアデビルとして街を守る主人公、マット・マードックの活躍を描く。登場人物たちの心の葛藤を浮き彫りにする濃厚な人間ドラマや、CGを使わないリアルアクションで人気を呼んでいる。さらに、2016年の3月から配信されているシーズン2では、多くのファンを持つ新キャラ、フランク・キャッスル(パニッシャー)やエレクトラが登場し、ますます盛り上がりを見せていく。今回は、主人公のマット・マードックを演じ、初来日を果たしたチャーリー・コックスに、本作の見どころや主人公マットの魅力を聞いてみた。


参考:異色マーベル作品『デアデビル』はなぜ驚異の高評価を得たか? “不殺の自警ヒーロー”の革新性


ーー主人公のマット・マードックは、シーズン1の最終話に本当の意味でデアデビルになりましたね。シーズン1とシーズン2では、同一人物でありながらも、マットの内面は大きく変化していると感じました。


チャーリー・コックス(以下、チャーリー):シーズン1のマットは、カトリック教徒であることや弁護士という職業から、デアデビルになることが正しいのか、その活動が本当に人のためになっているのか、ずっと心の中で問い続けているんだ。シーズン1の最終局面でウィルソン・フィスクが逮捕された時、ようやくマットは自分の行いが間違っていなかったと思えるようになるんだ。けど、シーズン2の冒頭を見ると、マットが傲慢さを持ち始めていることがわかる。彼は自分の行動に誇りを感じるようになり、スーパーヒーローとしてのエゴを見せるようになるんだ。でも、すぐにその考えは間違いだったと打ちのめされることになる。マットとは異なる正義感や信念を持つフランクと出会い、彼の中に再び疑問が芽生えることになるからね。


ーー手段は違いますが、フランクはデアデビルと同じく正義の心を持っているキャラだと思います。


チャーリー:「悪人はすべて殺してしまえばいい」という考えを持つパニッシャーと邂逅したことで、マットはデアデビルとして行ってきた活動が正しかったのか、再び自問自答するようになるんだ。もしかすると自分の行動が引き金になり、他のヴィジランテ(自警団)が過激な活動を行いやすい環境を作ってしまったのではないか、と。ただ、シーズン2で彼は気付くんだ。正しいとも、間違いとも言えない、グレーのエリアが存在するのではないかって。フィスコやパニッシャー、そしてマットも、みんなやり方は違うけど根本は人や街を良くしたいという願いがあるからね。スーパーヒーローでありながら、そういう心の中で葛藤してしまう人間くささは、演じるときの醍醐味でもあるんだ。


ーーシーズン2では、新しいヒロインとしてマットの元恋人・エレクトラが登場します。カレンとエレクトラ、タイプが正反対のヒロインの間で揺れ動くマットの心理描写も見どころのひとつだと感じました。


チャーリー:僕が面白いと感じるのは、マットがどっちの女性に対してもありのままの姿を見せているところだ。それぞれ見せている面は違うけどね。例えば、カレンといる時のマットは、自分が理想に思っている姿でいることができる。あるいは、彼女がそれを引き出してくれていると言える。親切で自分よりも他人を大切にすることができて、それを法律に則った形で叶えようとしていくんだ。問題があるとすれば、彼女がマットのダークな側面を知らないことだろうね。一方、エレクトラはカレンとは真逆で、マットがデアデビルでいることを肯定してくれる。白黒決めることを押し付けないから、そのことに対して葛藤してきたマットにとってはすごく安らぎになっているんだ。マットが抱える闇を理解してくれる存在だと言えるね。タイプが相反するものを同時に求めてしまうことで、マットの気持ちは引き裂かれるような状態にあるんじゃないかな。


ーーフランクとエレクトラの登場によって、シーズン1以上にマットの二面性が強調されているようですね。マットとの共通点や演じる際に意識したことはありますか?


チャーリー:僕はどんなキャラクターを演じる時も、自身と役の共通している特徴と共通していない特徴を、あらかじめ確認するようにしているんだ。ただ、どんな特徴でも人生のある局面で一度は触れているものだと思っている。その中で長く触れ続けたものが、その人のキャラクターになっていく、と僕は考えているんだ。例えば、僕が過去に演じた『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』のオーウェンと、今回のマットも共通する特徴はあると思うし、もちろん僕とマットにも似ている部分もあると思う。まぁ、僕はマットほどイケてないけどね(笑)。でも、日常生活において僕の方が彼よりも感情を抑制できると思うよ。


ーーほかのアメコミヒーローと比較して、デアデビルはより人間味のあるヒーローだと思います。マットという役を演じることで影響を受けた部分はありますか?


チャーリー:他のスーパーヒーローたちと比べて、デアデビルは演じやすいキャラクターだと思っている。何かを救うために緑色のモンスターになる必要もないし(笑)、特殊な能力も持っていないからね。アベンジャーズが世界や宇宙を守るのに対して、マットが守るのはヘルズキッチンという町のストリートだ。限定された地域の中で悪人とも一人ずつ戦っていく。戦いの中で生まれる葛藤に苦しみながら少しずつヒーローとして覚醒していく姿は、すごく人間的で身近に感じられるんだ。なにより、社会という名の抗い難い巨大なシステムの中で、自分の無力さを感じながらも、町を良くするためにできることをひとつずつ行動していくところは尊敬しているよ。背負っているものに押しつぶされることなく、毎日に希望を持ちながら、一歩ずつ前進していくところは、僕自身がマットという役を通して学んだところだね。(泉夏音)