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外食各社が軽減税率を見据え「持ち帰り専用商品」を拡充、運用はうまくいくのか?

2016年04月16日 09:21  弁護士ドットコム

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消費税増税を見すえて、ファーストフード店を展開する外食各社がテイクアウト商品の強化に乗り出した。増税後は、店舗で食べると消費税10%をとられる商品も、軽減税率の対象となるテイクアウトや宅配で購入すると現行の8%で済み、消費者ニーズが高まると予想されるためだ。


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例えば、ロッテリアは軽減税率の導入を見据え、4月から首都圏のオフィス街数店舗でテイクアウト専用商品の販売を試験的に始めた。ハンバーガーとハッシュドポテトのセット商品を作り置きで販売して、忙しい昼食時間帯にも対応できるようにする。報道によると、他の企業でも同様の動きが起きている。



今後、税率の低いテイクアウト商品に注目が集まりそうだが、同じような商品であっても、販売形態の違いで税率に差が出てくることになる。軽減税率の運用はうまくいくのだろうか。李顕史税理士に聞いた。



●消費者への心理的効果大だが、店側に混乱を招く可能性


「今までは、店舗で食べてもテイクアウトでも同じ価格でした。これをテイクアウトの場合に限って消費税率を8%にして、国民の理解を得るのが軽減税率導入の趣旨です。



会社員がお昼に毎日税抜きで500円かけるとしましょう。消費税込みの金額は店舗で食事をとると540円、テイクアウトだと532円です。1日わずか8円の差です。この8円の差を年間勤務日数240日で計算とすると、1年で1200円の差となります。この差を大きいとみるかどうかは、個人差によると思います。



しかし、金額の多い少ないはともかく、心理的効果としては十分でしょう。つまり、1日わずか8円の差でも少しでも安くなるならという心理が働き、テイクアウトの需要増が見込まれます。そうなると、テイクアウトのお得さを意識した店舗や商品が出てくるでしょう。ですから、消費者としては軽減税率導入は歓迎すべきことかもしれません」



店側への影響はどうだろう。



「店舗側は大変です。まずは、増税と軽減税率に対応したレジを導入しなければなりません。中小の飲食店にとっては、新規のレジ導入費用は負担となるでしょう。



会計時にテイクアウトと申告したのに、実際に店舗で食べる客も出てくるはず。そうなれば、最初から店舗で食べる人との不平等感は残ります。制度では、お客が実際にどこで食べるかまでは、店舗側で把握するところまでは求めていませんが、店舗に落ち度は全く無くても、店舗にクレームがはいるかもしれません。



今後、国は軽減税率導入に向けガイドラインを作成するでしょう。現につい最近『消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)』を作成しました。このQ&Aには例えばミネラルウォータは軽減税率の対象になるが、水道水は軽減税率の対象にはならない旨が記載されています。国税庁の理屈は、水道水はお風呂や選択などに使われることもあり、必ずしも飲料として利用されるわけではないからだそうです。理屈は理解できますが、国民感情の理解を得るのは難しいと思います。



いずれにしろ、様々なケースが想定され、混乱は避けられません。個人的には、混乱する上に、不平等感がぬぐえないことから、軽減税率導入に反対です。周りの税理士に聞いても軽減税率導入に反対する人がほとんどでした。本来、国民の理解を得るために導入する軽減税率導入が、国民の理解を得られないとなると、本末転倒になるかもしれません」



李税理士はこのように話していた。


【取材協力税理士】


李 顕史(り・けんじ)税理士


李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会副委員長。東京都大学等委託訓練講座講師。あらた監査法人金融部勤務等を経て、2010年に独立。金融部出身経歴を活かし、経営者にとって、難しいと感じる数字を分かりやすく伝えることに定評がある。また銀行等にもアドバイスを行っている。


事務所名   : 李総合会計事務所


事務所URL:http://lee-kaikei.jp/


(税理士ドットコムトピックス)