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溝口健二監督『雨月物語』、4Kデジタル復元版をカンヌ国際映画祭で スコセッシ監督からコメントも

2016年04月14日 21:52  リアルサウンド

リアルサウンド

『雨月物語』(c)KADOKAWA 1953

 溝口健二監督の『雨月物語』が、マーティン・スコセッシ監督主導により4Kデジタル復元を施され、第69カンヌ国際映画祭カンヌ クラシック部門でワールドプレミア上映されることが決定した。


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 『雨月物語』は、1953年に溝口監督が発表した時代劇。陶器の名工・源十郎、源十郎の弟・藤兵衛、源十郎の妻・宮木、源十郎が都で出会う女性・若狭ら、戦乱と欲望に翻弄される人々を描く。第14回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞に輝いたほか、2005年に米タイム誌が発表した「ベスト映画100本」にも選出されている。


 カンヌ クラシック部門は、映画史に残る世界中の名作を修復・紹介するなどの目的で2004年に創設された一部門。これまで、フランソワ・トリュフォー監督の『終電車』、セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』、市川崑監督の『東京オリンピック』、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』などが同部門で上映されている。溝口監督作品が上映されるのは、昨年度の『残菊物語』デジタル修復版に続き、2年連続となる。


 今回の4Kデジタル復元は、過去にルキノ・ヴィスコンティ監督の『山猫』の復元などにも携わったスコセッシ監督が主導で行った。スコセッシ監督は、米クライテリオンが主催する「クライテリオンコレクション ベスト10」で、2014年度のベスト10第4位に『雨月物語』を選出している。選出理由についてスコセッシ監督は、「ミゾグチの芸術性は、極限のシンプルさにあります。好きなシーンを3つ挙げると、霧の中からゆっくりと小舟が現れるシーン、魅力的な若狭に迫られた源十郎が草原で倒れこむシーン、息子が母親の墓前に食べ物をお供えするラストシーン、これらのシーンは何度観てもはっとさせられ、ミゾグチへの畏敬と驚異の念を抱かせます」とコメントしている。


 復元にあたっては、本作で撮影を担当したカメラマン・宮川一夫の助手を長きにわたって務めた、撮影監督の宮島正弘が、ニューヨークにある老舗ラボ「シネリック」でマスターポジを4K高解像度スキャンをし、デジタル技術を駆使してネガフィルムを作成。宮島撮影監督からは、『雨月物語』のカンヌ国際映画祭上映について、コメントが寄せられている。


【撮影監督・宮島正弘(『雨月物語』復元監修)】
師匠である宮川さんの『雨月物語』が60年の時を超えてカンヌ国際映画祭で上映されることを聞いてうれしい限りです。宮川さんが撮影監督をつとめた『用心棒』がこの世界に入るキッカケで、その後、数多くの作品でご一緒させて頂き、今回『雨月物語』の復元に携われたことで少しは恩返しができたかなと思います。


(リアルサウンド編集部)