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ニッサンGT-R 2017年モデルにみる、モータースポーツ直系の空力デザイン

2016年04月14日 16:11  AUTOSPORT web

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横浜で公開されたニッサンGT-Rの2017年モデル
日産自動車は、4月1日に神奈川県横浜市のグローバル本社ギャラリーで、ニッサンGT-Rの2017年モデルを先行披露した。3月23日~4月3日のニューヨークショーでの公開に合わせたイベントで、発売は今夏を予定している。そんなGT-Rは、モータースポーツからの直系とも言える数多くの空力フィードバックを得て開発されている。

ニッサンGT-R 17年モデルのハイライトのひとつはパワートレーンの進化で、エンジンの最高出力/最大トルクは15年モデルの545hp/463lb-ftから、17年モデルは565hp/467lb-ft(北米仕様)に向上している。出力が高くなれば要求される冷却性能も高くなり、たくさん空気が必要だ。だが、たくさん空気を入れると空力性能の悪化につながってしまう。

そこでGT-Rの空力開発チームは、空気抵抗を増やさずに冷却性能を最大化することに取り組んだ。GT-R 17年モデルは日産の最近のフロントマスクの共通意匠であるVモーショングリルを取り入れたのが特徴である。


そのVモーショングリルの外側も、ラジエター冷却用の空気取り入れ口として使用。「Vモーションでできる負圧(矢印の領域)を使って風を取り込んでいます」と空力開発担当者は説明してくれた。開口部面積は、15年モデルより大きくなっているという。




くだんの空力開発担当者は説明をつづける。「それだけだと空気抵抗は増えるので、ボンネットフード、バンパー、サイドシル、リヤバンパーなど、細部まで全面的に見直すことで、空気抵抗を増やさずに冷却性能を最大化させています。その方策のなかで、GT-R NISMO(2014年発売)のテクノロジーを基準車(すなわち17年モデル)に取り込んでいます」




前後とも、サイドのエッジが立っているのは空力性能由来で、GT-R NISMOが先に取り入れた手法を17年モデルに取り入れた格好だ。もとをたどればGT500車両の09規定終盤、13年モデルのソリューションに近い。

「GT-Rは基準車もNISMOも、日産本体で開発していますが、鶴見のニスモとは人の交流も情報の交流も頻繁に行っています。GT-Rの空力開発チームのなかには、スーパーGTで空力開発に携わった者もいます。形に落とし込んでしかも性能向上に使えるところは、どんどん取り込む考えです」

フロントバンパー下端のリップ部はGT-R NISMOをしのぐ張り出しに見える。


実は、上から見える張り出しよりも、裏面の処理の方が空力的には重要。段差状に処理してあるが(丸囲み)、「車両姿勢が変化する状況で安定してダウンフォースを発生させるための工夫」である。



サイドシルはフロントホイールハウスからリヤバンパーにかけての流れを整流する役割を担う。乱れた空気が床下に入り込まないように制御する考えは、レーシングカーと同じだ。





リヤバンパーはサイドの形状を変更。横からの空気流をリヤに回り込ませず剥離させ、エネルギーロスを抑制する考え。これも、レーシングカーの空力と同じ。

また、GT-R NISMOでは横基調だったスロットは、縦基調になっている(矢印)。細かなことを伝えておくと、テールパイプフィニッシャーまわりのメッシュは新デザイン。ディフューザーは11年モデル以来不変。


15年モデルまでのGT-Rは、Cピラーに明確なキャラクターラインが走っていた。これは、Cピラーに沿って向きを変えた空気を、リヤウイングの上と下に分流するのが狙い。だが、この小さなエッジが微少な剥離を起こしていた。17年モデルでは、微少な剥離によって生じる流体のエネルギーロスを最小化しようと、分流させる機能はそのままにエッジをなくした造形に変更している。当然、プレス型は作り替え。





丸形テールランプ周辺の立体的な造形など、性能が同じなら格好いい方がいい、あるいは、性能に影響を与えないなら格好いい方がいい──とする思想を反映したディテールも随所に認めることができる。「格好いい方がいい」は、GT500のエクステリアデザインにも通じる思想だ。

ニッサンGT-R 2017年モデルは、エクステリアに関してだけでもモータースポーツ直系の興味深いアイデアが満載である。