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GP topic:アロンソ出場可否の鍵を握る「気胸」その危険度と過去の実例を医師が語る

2016年04月14日 01:01  AUTOSPORT web

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バーレーンGPを欠場したフェルナンド・アロンソ
「バーレーンGPを欠場したことは、とても残念だったけど、FIAの医療スタッフが下した決定を尊重する気持ちは、いまも変わりない。だから中国GPでも彼らの判断を待ちたい。もちろんコクピットに戻ることを願っているが、医師からレースへの出場を許可されるまでは安心はできない」

 これはバーレーンGPを欠場したフェルナンド・アロンソが、中国GPに向けて語った胸中である。開幕戦で激しいクラッシュに見舞われたアロンソは、幸い大きな怪我はなかったものの、帰国後に異変を感じ、地元の病院で精密検査を受けた結果、気胸の症状と肋骨の骨折が判明。そのためバーレーンGPの木曜日にFIAと地元のメディカルスタッフによる診断を受け、「バーレーンGPに出場できる積極的な理由がない」と判断され、欠場を余儀なくされた。

 その際、FIAは「中国GPでも、あらためて胸部スキャンをチェックして、彼のレース出場が妥当かどうかを検討することになる」と語っていた。つまり、アロンソは中国GPの木曜日にメディカルセンターを訪れ、最新のCTスキャンの結果を見ながら、判断を仰ぐことになる。

 そもそも気胸や肋骨の骨折は治癒するまでに、どれくらいの時間を要するのだろうか。

 F1で長年、医師としてミナルディ、トヨタ、ルノーなどで仕事をしてきた経験があるリカルド・チェッカレリは、次のように説明する。

「今回、私はフェルナンドを直接診察していないし、彼のカルテやCTスキャンデータも見ていないので、フェルナンドのケースは、まったくわからないし、語るべきではない。ただ症状がどんなものなのか、あくまで一般論として話すことはできる。まず気胸だが、これは今回のフェルナンドのように事故によって発生することもあれば、突然、自然に発生することもある。肺と肋骨の間に空気が入り込むため、呼吸が効率的に行えず、激しく運動をすることが難しくなるんだ」



 チェッカレリは過去にも気胸に悩まされたドライバーをふたり診ている。ミナルディ時代のピエルルイジ・マルティニとトヨタ時代のミカ・サロだ。

「サロのときは、開幕戦の直前のことで焦ったよ。時間がなかったので胸腔内手術を行って、なんとかトヨタの晴れのデビューレースに2台そろって参加することができた」

 このときチェッカレリは、サロに治療を行った日本の医師から治療前と治療後のCTスキャンデータを持参するように指示、アルバートパークのメディカルセンターでデータを見せて、出場にこぎつけたという。

「肋骨の骨折であれば全治約3週間だから、フェルナンドの場合そろそろ完治しているころだ。しかも痛みは自覚できるし、たとえ痛くても我慢してコントロールすることもできる。しかし、気胸の症状を本人が自覚することは難しく、医師による客観的な診断が必要になる。気胸が胸のどの部分にあり、大きさがどれくらいのもので、どのように変化するかは人によって違うため、一概に言い難い」

 ルノー時代にはアロンソとも仕事をした経験があるチェッカレリ。かつての戦友として中国GP出場を願うよりも、無理はしてほしくないという医師としての気持ちのほうが強いようだ。

 なお、上海へやってきたスペイン人記者によれば「バーレーンGP後、フェルナンドはイタリアでフィジオとともにトレーニングを行っていたというから、気胸も骨折も、ほぼ完治しているのではないか」という。果たして4月14日に上海国際サーキットのメディカルスタッフとFIAは、どんな決定を下すのだろうか。