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アウディ、WEC開幕戦に新型R18を2台投入。史上もっともパワフルかつ効率に優れたマシン

2016年04月13日 17:01  AUTOSPORT web

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2016年3月25日 FIA WECプロローグ 7号車アウディR18
Audi、2016年世界耐久選手権(WEC)シルバーストーンシーズン開幕参戦
● 新型Audi R18がレースデビュー。アウディスポーツ チームヨーストは2台体制で参戦

4月11日 インゴルシュタット:アウディのFIA世界耐久選手権(WEC)への参戦5年目となるシーズンが、来る4月17日から始まります。英国ノーザンプトンに位置する全長5.891kmのシルバーストーンに、アウディは2台の新型LMP1マシンで臨みます。

シルバーストーン6時間耐久レースは、歴史と伝統を併せ持つ一戦で、2012年からFIA世界耐久選手権(WEC)の一戦として開催されています。このレースでアウディは、LMPマシンで3回、ツーリングカーで1回の優勝獲得経験があります。アウディは昨年の大会で、ライバル達と非常にスリリングなレース展開を経て優勝を飾りました。2位との差がわずか4.6秒という壮絶な戦いを制したのは、マルセル ファスラー / アンドレ ロッテラー / ブノワ トレルイエ(スイス/ドイツ/フランス)組でした。4月17日日曜日、アウディ、ポルシェ、トヨタのハイブリッドレースカーを含む総勢33台のマシンが、再びシルバーストーンで闘いの火蓋を切ります。

今シーズン開幕にあたり、アウディモータースポーツ代表のDr. ウォルフガング ウルリッヒは「今年からレースの状況は完全に一新されました。ワークスチームのすべてが新型マシンを投入してきます。我々の新型Audi R18も、ボルト一本にいたるまで、従来マシンとは異なるものに生まれ変わっています。どのチームが優勢なのか、現時点では誰にも予想がつきません。全チームが一堂に会するのは、シルバーストーンでの開幕戦が初めてとなるからです」とコメントしています。アウディは大部分を見直し、LMP1マシンを生み出しました。新型 Audi R18 に搭載されるV6 TDIエンジンの燃費は、従来比で約10%も向上しています。この優れた効率の良さは、並み居る強豪に対して非常に有利となる部分です。システム全体で約1000hpという出力を発揮する新しいハイブリッドシステムを搭載した新型Audi R18は、これまででもっともパワフルな1台となっています。エアロダイナミクス、モノコック、そしてサスペンションなどが、統合油圧システムなどと共に一新されています。これらは、レースのレギュレーションが求めるハイパフォーマンスと低燃費を高度な次元で両立することに狙いをしぼって開発されています。そうして生み出された新型Audi R18は、従来比50%以上の電力をバッテリーに蓄積できるようになりました。

開幕戦にエントリーするアウディスポーツ チームヨーストのメンバーは、昨年の覇者、ファスラー / ロッテラー / トレルイエ組がゼッケン7号車、ルーカス ディ グラッシ / ロイック デュバル / オリバー ジャービス(ブラジル/フランス/イギリス)組がゼッケン8号車で参戦します。シルバーストーンは、サーキットから130kmほどのバーウェルに住むオリバー ジャービスにとってはホームグラウンドです。

アウディはイギリス市場と良好な関係を築いています。これまでの10年間で、イギリスにおけるアウディの販売台数は2倍以上に成長し、前年比5%増を達成した昨年は、166,817台と、過去最大の販売台数となりました。

全9大会行われるFIA世界耐久手権(WEC)の第一戦は、4月17日の現地時刻12:00(欧州中央時間13:00)にスタート。レースの模様は、欧州中央時刻の17:00から、ユーロスポーツにおいて130分間のライブにて放映されます。さらにアウディは、Facebook(AudiSport)、Twitter(@Audi_Sport)、そしてアウディスポーツのアプリから多くの情報を発信します。

Audi R18 革新的進化を遂げた新しいハイブリッドスポーツカー

2016年シーズンのFIA世界耐久選手権(WEC)およびルマン24時間レースに向けて、アウディは戦闘力の徹底強化を図っています。Audi R18は、スケッチの段階から再設計され、従来モデルとの共通点はほとんど存在しません。新しいセーフティセルを含め、より洗練されたエアロダイナミクスコンセプト、バッテリーを用いた初のハイブリッドシステム、改良が施されたV6 TDIエンジンを搭載した2016年型R18は、他にも様々な新しいシステムが採用されています。その結果、アウディのLMP1レースカーは、昨シーズンのモデルからパワーを向上させながらも、大幅に効率を高めることに再び成功しています。最新のAudi R18は、アウディ史上もっともパワフルなレースカーでありながら、過去のどのスポーツプロトタイプよりも少ない燃料しか消費しません。

TDIエンジンとハイブリッドのパワートレインからは1,000hpを超えるパワーを発揮する一方で、燃料消費量は従来比で10%削減することに成功しています。これによって、アウディは、高い燃費効率を求めるレギュレーションのもとで、最高の成果を達成しようとしています。2014年以来、FIA WECのレギュレーションは、自動車メーカーに、よりエネルギー効率に優れたレースカーを開発するよう促してきました。2016年以降、ルマンでの燃料消費の上限が、1ラップあたり10メガジュールも減らされたことで、戦いはより激しいものになるでしょう。「厳しいレギュレーションによって、従来にも増してエネルギー効率に優れたレースカーが誕生することになりました。我々は公道を走る市販モデルについても、同じテーマで開発に臨んでいます」とアウディのモータースポーツ部門の最高責任者であるDr. ウォルフガング ウルリッヒは述べています。「この種のモータースポーツは、今後も自動車エンジニアリングの目標となる実例を設定し続けるでしょう。アウディにとって、市販モデルとの関連性は、過去35年間、レース活動の主要なテーマであり続けてきました。」

Audi Sportに在籍する全ての開発エンジニアは、Audi R18のエネルギー効率を向上させるために努力を重ねています。今年から6メガジュールクラスに切り替えたことで、レギュレーションにより、ハイブリッドシステムのエネルギー回生量が50%増大することになりました。エアロダイナミクス面のコンセプトは、全面的に新しくなっています。ほとんどすべての車両システムが、改良されるか、再設計されています。結果として、エネルギー消費が抑制され、車重は軽くなり、各種コンポーネントのパッケージングもより理想的になりました。新しいR18は、視覚的にも従来のモデルとは明確に異なっています。

エアロダイナミクスを最適化するための新しい基本構造

未来的な印象を与えるLMP1レースカーは、他のどのレーシングカーよりも、エアロダイナミクスの最適化というテーマを徹底して体現しています。新しいR18を見れば、エクステリアが従来から大幅に変更されていることがわかります。車両の全長のなかで、フロントエンドとキャビンの割合が変更されており、特徴的なノーズ部分も、従来よりも明らかにスリムになっています。

「新しいプロポーションは、車両の重量配分とエアロダイナミクスに影響を与えています」とAudi Sportの技術開発を統括するヨルグ ザンダーは説明しています。「我々の最も重要な目的は空気の流れを改善することでした。」フロントエンドでは、空気の流れは、左右のホイールアーチのあいだの車両上面に向けられ、その一部をボディシェルのクーリングダクトに入れる一方で、適量をアンダーフロアに回さなければなりません。「その過程で渦が起きるのは避けがたく、その結果としてエネルギー消費が増えることになります。」 望ましくない空気の流れは、エアフローによるエネルギーを減らし、走行抵抗を増やす原因となります。一般的には、モノコック(レースカーの中央の応力を受けセーフティセルを形成する部分)が占める空間が小さくなるほど、車両の空気抵抗を減らす余地は大きくなります。新しいプロポーションのおかげで、最新のAudi R18は、さらに効率的にエアフローの方向を制御して、適量をアンダーフロアに送り込むことができるようになりました。リヤにおいて、空気はディフューザーを介して外部に導き出されます。そのとき、大きなダウンフォースが生み出されて、車両のコーナリング性能を高めます。アウディは今回、モノコックを再設計し、規定された4,650mmの全長のなかでプロポーションを変更し、その新しいボディに適合するよう、すべてのコンポーネントアッセンブリーを設計し直しました。

また、レギュレーションで規定されたフロントホイールアーチの開口部についても、サイズと位置を変更しています。それらは、横風を受けたときの好ましくないリフト効果を抑制するよう設計されています。2015シーズンのモデルと比べると、開口部の面積は45%拡大されました。

シャシーに採用された創造的工夫

この新しいコンセプトにより、他の多くの部分にも、革新的な機能が採用されることになりました。サスペンションもその一例です。モノコックが新しくなったことで、フロントサスペンションのマウント位置も大きく変更されています。ハイブリッドシステムのドライブシャフト位置とより適合するように、マウント位置が再設定されました。サスペンション自体の仕組みも、大幅に変更されました。ホイールを位置決めするウィッシュボーンの設計が新しくなっています。フロントサスペンションの上下動を制御するスプリング/ダンパーユニットは、プッシュロッドを介して作動します。リヤサスペンションの働きも、さらなる最適化が図られています。スプリング/ダンパーユニットは、先代モデル同様、プルロッドを使用して制御されます。シャシーのリンクドサスペンションシステム(LSS)のバランサーにより、すべての速度域で、最適なバランスが得られるようになっています。

トランスミッションもまた、今回設計が新しくなっています。アウディが行なったシミュレーションにより、エンジンを最適化すれば、従来型の7速の代わりに6速のユニットを用いても、シフト時にエンジン回転数の変動が少なく、好ましいギア比が得られることが判明しました。6速ユニットに切り替えたことで、トランスミッションの重量はさらに削減されています。車両の構造面でも軽量化は徹底して追求されており、その一方で、シャシーの捩じり剛性は高いレベルに維持されています。

さらに、Audi R18の各システムのアクチュエーターの設計を変更したことでも重量の削減が実現しています。先代モデルでは、電気式のアクチュエーターが、ブレーキ、トランスミッション、エンジンシステムなどで使われていましたが、新しいR18は、それらを新開発した一括制御のハイプレッシャー油圧制御タイプに切り替えています。レギュレーションでは、LMP1ハイブリッドレースカーの最低重量は875kgと定められています。従来よりもパワフルで必然的に重いハイブリッドシステムを搭載しながらも、R18の重量はその制限値に収まっています。

ハイブリッドドライブへの新しいアプローチ

エネルギー回生システムを用いた車両で初めてルマン24レースを制覇した自動車メーカーであり、ハイブリッドドライブのパイオニアであるアウディは、2012~2015年のシーズンに、フライホイールを用いたエネルギー貯蔵システムを使ってきました。しかし今や、次世代のシステムに移行する機は熟しています。今後はバッテリーが、エネルギー貯蔵の役割を果たすことになるでしょう。従来の動電学的メカニズムは、電気化学的な貯蔵システムに取って代われることになります。「フライホイール型のアキュムレーターは、低いエネルギークラスでは、有効であることが証明されました」とAudi Sportで電気、エレクトロニクス、エネルギーシステムの開発を統括するトーマス ラウデンバッハは説明しています。「しかしながら、我々は今後、より大きなエネルギーを扱っていかなければなりません。必然的に新たなテクノロジーを求めることになりました。」従来型のフライホイール型アキュムレーターは、高いパワー密度を保証してくれましたが、アウディは、ハイブリッドのエネルギークラスを上げたために、今後はエネルギー密度に関しても、高いレベルが要求されます。2016年シーズンから、エネルギーの総量は50%増えて6メガジュールになります。2014年シーズンのモデルと比べると、わずか2年間で、回生エネルギーの総量は3倍にもなっています。

そこで今回初めてアウディは、ハイブリッドドライブシステムのためのエネルギー貯蔵システムとして、リチウムイオンタイプのアキュムレーター(電池)を採用することにしました。2009年以来、アウディのLMPレースカーのバッテリーは、すでにリチウムイオンタイプになっていました。市販モデルのものをベースにしたこのハイブリッド用エネルギー貯蔵システムは、先進的で高出力な化学的セルを用い、数多くのセルが一体となってひとつのシステムを形成しています。このシステムは、モノコックの強度の高い安全な構造のなかに収められており、個々にカプセル化されて外部から遮断されています。また、電気的および電子的安全システムにより、様々なパラメーターで、個々のバッテリーセルから全体の高圧システムまで常時監視されており、必要に応じて介入を受ける仕組みになっています。車両がクラッシュした場合などは、当然システム停止の対象となります。

システムに蓄えられるエネルギーは、フロントアクスルのMGU(モータージェネレーターユニット)によって生み出される電力です。コーナーの手前でドライバーがブレーキを踏んだときに、前輪の回転運動を電力に変換し、それをいったんリチウムイオンの貯蔵システムに蓄えます。それによりAudi R18は、通常のモデルでは失われていたエネルギーを利用できることになります。コーナーの出口でドライバーがクルマを加速させると、電気が反対方向に流れて、MGUを駆動させます。それにより、R18のフロントアクスルは、クルマの加速をサポートする働きをします。エンジンの冷却システムとは別体の低温冷却回路が、バッテリーセルとMGU、およびパワーエレクトロニクスの冷却を行っています。

2016年シーズン以降、従来のエネルギークラスに加えて、コース毎に独自の出力制限が課されることになりました。MGUは、より大きなエネルギー回生を行うこともできますが、今年のルマンではエネルギーの最大供給量が300kW(408hp)に制限されています。アウディは、可能な限り多くのエネルギーを回収するために、出力が350kW(476hp)以上に達するようAudi R18用のMGUを設計しました。例えどんなに高速であっても、LMP1レースカーがブレーキングを続ける時間はせいぜい3秒から5秒であり、システムの出力を高く設定しておけば、それだけ効率的にエネルギーを回生できます。ルマンにおいては、その後の加速プロセスにおいて、ハイブリッドシステムは最大でも300kWのパワーしか供給できませんが、そのぶん、長時間にわたって、パワーブーストを利用できることになります。ちなみに、このパワー制限は、FIA WECの他のレースでは適用されません。

6メガジュールクラスに切り替えたことで、アウディはこれまででもっともパワフルなMGUをAudi R18に搭載することができました。2012年に最初に搭載した電動システムのパワーは約150kW(204hp)でしたので、今やその2倍のレベルになったことになります。コンセプト面では、新しいMGUは従来型のものと類似しています。その一方で、パワーエレクトロニクス、スターター、ローターは、完全に新開発されています。新世代のハイブリッドドライブシステムは、高い出力とトルクを発揮するため、それをフロントアクスルに伝える各コンポーネントの負荷も、そのぶん高くなっています。大きなトルクを最小のロスで伝えるために、フロントアクスルにはリミッティドスリップディファレンシャルが採用されています。

より燃料消費を抑えたV6 TDIエンジン

ハイブリッドドライブシステムの開発陣が、2016年シーズンに向けて、パワーアップを容認された一方で、ウルリッヒ バレツキー率いるエンジン開発チームは、真逆の課題に直面することになりました。4リッターV6エンジンが使用できる燃料はかなり削減され、その結果パワーを落とす必要が生じたのです。この点に関して、2つの要素を考慮する必要が生じました。アウディがより高いハイブリッドのエネルギークラスに切り替えた結果、より多くのエネルギーを回生できるようになったレースカーに対し、レギュレーションでは使用燃料の削減を求められたのです。それは数字にして3%というものでしたが、同時に、もうひとつの変化が生まれることになりました。LMP1レースカーのスピードが年を追うごとに高くなった結果、速度をコントロールするために、FIA、WEC、およびルマンのオーガナイザーであるACOの関係者は、ハイブリッドのレースカーの使用燃料を削減する措置を採用したのです。「ラップタイムが速くなりすぎないように、自動車メーカーとして、この措置は基本的に支持しています」とDr. ヴォルフガンク ウルリッヒはコメントしています。

Audi R18に搭載されるV6 TDIエンジンの基本コンセプトは、2011年までさかのぼります。ダブルフローVTG単一ターボチャージャー、120度のシリンダーバンク角度、Vバンクの内側にレイアウトされた排気系、および様々な革新機能を採用したV6 TDIは、非常に独創的なエンジンと評価されてきました。排気量は当初3.7リッターでしたが、2014年からは4リッターに増加されています。「エンジンの基本設計は6年間変わっておりません。それは、基本コンセプトが依然として有効であることの証明です」とウルフィッヒ バレツキーは語っています。「エネルギー効率が向上したおかげで、少ない燃料でも性能を発揮できるようになりました。」

とりわけ2016年モデルにおいては、ターボチャージャーがより軽量で効率的なものに換えられています。また、V6 TDIの外観も変わっています。個々のコンポーネントの配置を変えることで、新しいエアロダイナミクス コンセプトに対応するためのスペースを生み出しています。過給圧はレギュレーションにより制限を受けていますが、850Nm以上という最大トルクは変わっていません。エンジンの効率が向上したことで、燃料タンクの容量は従来比8%削減されて49.9リットルとなっています。

車両全体として大幅に効率的に

過去のモデルと比べると、最新のAudi R18の効率の高さは、注目に値します。2011年の第1世代のモデルと比べると、最新のV6 TDIの燃料消費量は32.4%も削減されています。2006年の最初のディーゼルエンジンモデルと比較すると、その改善はさらに劇的といえます。その年、アウディは初めてTDIテクノロジーをレースカーに適用しました。そしてこのテクノロジーにより、以来アウディは、ルマンで8度の優勝と、1度の距離記録更新を実現しただけでなく、2度の世界選手権タイトルも獲得することができました。最新のTDIエンジンを搭載したアウディLMP1レースカーは、ルマンにおいて初期と比べ燃焼消費量を46.4%も削減しています。その一方で、ラップタイムは、10年前と比べて10~15秒も速くなっています。それはすべて、エアロダイナミクス、軽量設計、パワートレインの各分野でなされた技術革新の賜物なのです。

卓越した安全性

安全性の面でも、アウディのLMP1は、将来にわたってひとつの基準であり続けるでしょう。アウディは、レギュレーションに定められた厳格な要求を満たすだけでなく、独自の研究により、ルールを大きく超えた高い安全性を実現しました。アクティブセーフティ、すなわち緊急事態の検知と事故防止の分野では、ドライバーには数多くのツールが提供されています。FIA WECの規定では、コクピットにレースのコントロールフラッグシグナルを表示するドライバーインフォメーションモニターの設置が義務付けられていますが、アウディの場合さらに、ドライバーのために数多くのソリューションが用意されています。そのひとつがアウディレーザーライトを内蔵したマトリクスLEDヘッドライトで、最高速が340km/hに達するレースカーの照射性能を大幅に高めています。2015年以降、アウディのお客様は、第2世代のAudi R8において、レーザーライトを購入できるようになりました。マトリクスLEDヘッドライトは、いまや多くのアウディ市販モデルに搭載されています。

また、先進的なアクティブマトリクス式有機EL(AMOLED)スクリーンを採用した軽量でエネルギー効率に優れたカメラシステムによるデジタル式リヤビューミラーにより、R18はきわめて良好な後方視界を確保しています。2001年シーズン以来、アウディチームのドライバーとピットクルーは、先進的なモニタリングシステムを使って、タイヤ空気圧をチェックしてきました。さらに、Audi R18においては、走行条件に応じて自動的に、ハイブリッドシステムを連動したブレーキ力の分配制御を行う仕組みになっています。

事故が避けがたい場合には、受動安全装置の各システムが作動します。車両のモノコックは、アルミのハニカムを主とした炭素繊維強化プラスティック(CFRP)の強固な構造体になっており、フロントノーズがエネルギーを吸収する役割を果たします。2011年にアウディは、他の自動車メーカーに先駆けて、シングルピースのモノコックを初めて採用しました。そのセルには側面からの衝撃を吸収する工夫がなされており、コクピットの壁に内蔵されたザイロン(防弾チョッキなどにも使われている強力な合成繊維)の層により、外部からの侵入を防いでいます。リヤから衝撃を受けた場合には、トランスミッション部分のCFRP構造より衝撃エネルギーを吸収します。2014年シーズンから使われているダブルホイールテザーにより、アクシデント時にホイールがクルマから外れる危険も減少しました。回転運動をするホイールには、走行時、高い慣性力が働いているため、ホイールが離脱すると大きな危険が伴います。高電圧プロテクションシステムにより、ハイブリッドシステムの電流も安全に制御することが可能になっています。モータースポーツにおいて、事故防止、および事故後の安全対策のために、これほどのテクノロジーが投入されている例は、他にないでしょう。

走行性能においても安全性の面でも、またエネルギー効率や技術革新といった分野でも、LMP1レースカーは、類まれな存在であり続けており、ここで開発された先進テクノロジーの多くは、未来の自動車のために活用されていくことになります。