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Mrs. GREEN APPLEのライブはなぜ人気に? さまざまな表情みせたツアー最終公演から考察

2016年04月13日 13:21  リアルサウンド

リアルサウンド

Mrs. GREEN APPLE(写真=後藤壮太郎)

 Mrs. GREEN APPLEが4月10日、『Mrs. GREEN APPLE presents TWELVE TOUR ~春宵一刻とモノテトラ~』ツアーファイナル公演を赤坂BLITZにて行った。


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 着実にライブの動員を伸ばし、10代から20代前半を中心に多くの支持を集めている彼ら。同ツアーもトータル約5000キャパに対し、約40000件の応募があったそうだ。2015年のメジャーデビュー以降さらにペースをあげて活躍の場を広げ、最近彼らに興味を持ちはじめたリスナーも多い。そんなタイミングで行われた今回の公演は、Mrs. GREEN APPLEがどのようなバンドであるかということを、改めて感じることができたライブだった。


 まず、ツアータイトルに冠した「モノテトラ」というワードに彼ららしさが表れていた。これは、ギリシャ語のモノ(1)とテトラ(4)からなる言葉で、ツアーが14公演・41日間に渡って行われたことを示している、とMC中に藤澤涼架(Kb.)から紹介があった。「春宵一刻」については、若井滉斗(Gt.)のアイデア。その言葉が意味する「春の夜のひとときは何よりも風情があり、とても大きな価値がある」、そんな夜を過ごしたいという思いがこめられているという。1stフルアルバム『TWELVE』リリース時に「12」という数字にこだわり、楽曲ごとに明確なテーマ性を持って表現した彼ららしいネーミングセンスである。


 ステージ上に設置された大きなスクリーンも、彼らのバンド性を理解する上ではとても重要なものだった。Mrs. GREEN APPLEの魅力のひとつに「楽しそうな姿」や「メンバーの仲の良さ」を挙げる人も多い。この日も、大森元貴(Gt./Vo.)が藤澤をはじめとする各メンバーにアドリブでちょっかいを出したり、前方のお立ち台に代わる代わるメンバーが立って観客を煽ったり、また大森、藤澤、若井、高野清宗(Bs.)の4人がぴたりと揃えた振りつきで演奏したりと、微笑ましいパフォーマンスを披露した。彼らのステージは「自分たちが全力で楽しむことで、観客を楽しませる」ことが徹底されている。映像では、1曲目の「愛情の矛先」から全力でライブを楽しむそれぞれの表情や各々のパフォーマンスが映し出され、会場全体に笑顔が伝播していった。「この会場では手狭なのでは」と感じてしまうほど、堂々としたスケールの大きいパフォーマンスは見ていて頼もしい。


 一方、そのような「見せる」パフォーマンスとは対照的に、バンドのグルーヴや楽曲の良さ、大森の歌を「聴かせる」見せ場も印象的だった。筆者が前回参加した、2015年12月LIQUIDROOMのワンマンライブからはや4カ月。もともと高い水準にあった彼らの演奏や表現のクオリティは、全国ツアーを経てさらに向上していた。紅一点のメンバー・山中綾華(Ds.)による力強いドラミングと高野のベースから始まる「ミスカサズ」では、バンドの激しい演奏にのせて大森が心の叫びを歌い、それまでの雰囲気から一変、バンドのシリアスな一面を見せた。そのほかにも「私」「パブリック」「我逢人」など、シンプルに歌や演奏を届ける楽曲が、音色の多い楽曲群の中で埋もれることなく輝きを放った。特に結成初期からの曲「パブリック」では、「見せる」「聴かせる」というパフォーマンスから離れ、ロックを純粋に鳴らすバンド然とした彼らの姿を見ることもできた。


 このようにさまざまな表情を持つ彼らだが、Mrs. GREEN APPLEはどんなバンドかと問われると、総じて“音楽隊”という表現がしっくりくる。それは楽曲の音色やメロディーラインに依る印象が大きいかもしれない。しかし、メンバーが足取り軽く楽器を奏で、観客が楽しそうに合唱するさまは、まるで大森が指揮をとる音楽隊のようだ。ライブで観客とともに鳴らすサウンドこそが、彼らの音楽の完成形であるとすれば、彼らのライブがここまで人気となったことも頷ける。また、生楽器の音色を多く取り入れていたことも、そのように感じた理由のひとつだろう。この日は『TWELVE』収録曲「NO.7」で、男子メンバー4人が横一列に並んで和太鼓を使ったパフォーマンスを披露、アンコール2曲目の「庶幾の唄」では、藤澤が華麗にフルートを演奏した。


 アンコールラストには、6月15日リリースの新曲「サママ・フェスティバル!」の披露も。同曲は「StaRt」「Speaking」に続き、キラキラしたサウンドとキャッチーなフレーズを継承した今夏の勝負曲。初披露にもかかわらず、あっという間に観客へ浸透し、この日も大きな盛り上がりをみせていた。これから出演するイベントやフェスでも、おそらく同じような光景が見られることだろう。各会場の観客とともに、彼らは今後どのような音楽を奏でていくのか。さらに大きな会場で彼らのパフォーマンスを見ることがますます楽しみになる夜となった。(久蔵千恵)