トップへ

布袋寅泰、35周年を迎え『GUITARHYTHM』を“コンプリート” 熱狂の再現ライブレポート

2016年04月12日 16:51  リアルサウンド

リアルサウンド

布袋寅泰(写真=外山繁)

 2016年、アーティスト活動35周年を迎えた布袋寅泰。[BEAT]をキーワードに、「8 BEATのシルエット」という名の年間プロジェクトがすでに始動している。


最新MVはこちら


 3月に[BEAT1]として全国ライブハウス・ツアーを行い、4月7日に国立代々木第一体育館、10日には大阪城ホールで、[BEAT2]として『~GUITARHYTHM伝説’88~ソロデビュー再現GIGS』が行われた。タイトルが意味するように、彼の記念すべきファーストソロアルバム『GUITARHYTHM』を曲順どおりに再現するライブ。ここでは、代々木第一体育館のライブをレポートしよう。


 開演前には今年1月に亡くなった偉大なアーティスト、デヴィッド・ボウイの曲がずっと会場に流され、以前からリスペクトを捧げていた布袋らしい演出がすでに始まっている。


 ライブがスタートすると、オープニングSEに合わせて始まる、擬人化された薔薇がギターを抱え砂漠を彷徨うアニメーションも当時のまま。その映像を映したスクリーンが落ちると、大きなウネリを持ったビートに導かれ、「POWER」が始まった。ダンサブルなサウンドに乗せてソウルフルな女性コーラスが響くなか、鋭いギターカッティングを奏でながら、ステージ中央からせり上がりで布袋が登場した。


 わき上がる歓声と高まる期待感を「C’MON EVERYBODY」へと繋げ、鳥肌が立つようなスリリングなイントロから、デジタルとロックンロールが融合したサウンドで圧倒していく。ギターの硬質なリフ、興奮度を高めるビート、会場に突き刺さるワイルドなボーカル。“野生”と“洗練”が混ざり合った極上の空間が生み出され、そのクリエイティブな姿勢はソロ活動を始めた時から全くブレていないことを実感させる。続くメロディアスな「GLORIOUS DAYS」も、彼の持つ抜きん出たポップセンスを再認識させてくれた。


「1988年、僕が『GUITARHYTHM』という作品でソロデビューしてから28年という長い年月が過ぎました。そして、この代々木体育館で僕は初めてのソロコンサートを開きました。その88年『GUITARHYTHM』ライブを再現しようというアイデアで、今日はみんなに集まってもらいました。あの時のライブを忠実に再現しようと最初は思ったんですけど、僕がなぜGUITARHYTHMというコンセプトでソロワークをスタートさせたかというと…。


 BOØWYが解散し、BOØWYというフォーマットに別れを告げ、自分をコピーしないところから新しい布袋寅泰の音楽を作っていこう、そう思ってGUITARHYTHMというコンセプトを立てました。だから、再現という言葉に縛られず、『GUITARHYTHM』の完全化、コンプリート版、と思ってください。今日は思う存分楽しんでもらいたいと思います」


 今回のライブの位置づけを高らかに告げた後、メタリックなビートの「MATERIALS」が続く。飛び交うレーザー光線とともに、バックの映像にはメッセージ性の強い歌詞の一部が映し出され、緊張感が高まっていく。さらに、引き締まったバンドアンサンブルに熱いボーカルと歌心あふれるギターソロで魅了する「CLIMB」も、ライブの熱気を上昇させていった。


 ここで、妖しげなメロディと女性コーラスのオペラボイスが印象的な「STRANGE VOICE」。さらには、ドイツ語の詩の朗読やオペラボイスを挟みつつ途中からジャジーなセッションへと展開する「WIND BLOWS INSIDE OF EYES」といった、独特のムードを持った楽曲が並ぶ。先のMCにあったように、チャレンジを恐れず貪欲に新なアプローチに挑み出した頃の布袋の足跡が刻まれた楽曲たちだ。


 そこから、明るくはじけたロックンロール・ナンバー「WAITING FOR YOU」、キャッチーで疾走感のある「DANCING WITH THE MOONIGHT」と、解放感のある曲へと移っていく。特に「DANCING~」ではステージを左右に移動しながら、カラフルなギターソロで観客に迫っていた。


 そして、サポートギターの黒田晃年とギターソロバトルを繰り広げ、「GUITARHYTHM」に突入。間奏でも2人が激しいギターソロの応酬で火花を散らすなど、この日一番のハイテンションな演奏を見せつけてくれた。


 本編最後は「A DAY IN AUTUMN」。弾き語り調で静かに始まりながらも曲の中で場面が次々に変化する緻密で複雑なナンバーだ。全員のユニゾンで生まれる高揚感、聴き手の鼓動に直接訴えかけるハラハラするような展開、そして最後は優しいスローテンポのパートへと移行し、エモーショナルなギターフレーズで締めくくった。


 まるで映画音楽のように、多彩でありながらもストーリー性を感じさせる楽曲群。28年を経た布袋寅泰と素晴らしいサポートメンバーたちの手によって、2016年版の『GUITARHYTHM』が完成した。


 大きな“布袋!”コールにこたえ、再びステージに登場。アンコール1曲目に選ばれたのは「STARMAN」だ。冒頭でも触れたデヴィッド・ボウイのカバーであり、布袋自身が以前から何度も取り上げているのでファンにはお馴染みの曲だが、今回は追悼の意味を込めての選曲。映像に現れた「★FOREVER」と書かれたメッセージも胸を打つものだった。


 続けて「サイバーシティーは眠らない」「DIVING WITH MY CAR」と、スピーディーなロックンロールを届け、爽快な表情でステージを去る。


 そして、ダブルアンコールに登場した布袋は、心地よさそうに今回のライブの手ごたえと今後を語った。


「今年は35周年なので、自分の辿ってきた道を見直すいい機会だなと思って。こうしてみんなと『GUITARHYTHM』ライブを一緒にやれたことをとても嬉しく思っています。思えば、26歳の布袋君はずいぶん思い切った作品を作ったものだなと(笑)。当時はコンピュータはフロッピーディスクだったし、今のようにインターネットも携帯電話もなかった。あれから世の中も変わったし、僕もいろいろな経験をしました。今年はライブハウスもやったし、こうして久しぶりの代々木でも奏でることができて。大きく変わったこともあるけれど、何も変わっていない自分がいることも誇らしく思います。35年目に新しいシングルを出しました。今後、俺たちのテーマソングとして、胸を熱くできる曲になればと思います」


 前日に当たる4月6日にリリースされたばかりの曲「8 BEATのシルエット」を披露。耳を引きつけるギターリフ、キャッチーなメロディ、これまで歩んできた道のりを心情として描いた歌詞、そのどれもが現在の等身大の布袋寅泰の姿だ。


 ビートもギターも言葉もとてつもない切れ味の「バンビーナ」。そして、“夢を諦めていないか?”と自らに問いかけイギリスに渡ったことを語り、「この世に夢という言葉がある限り、俺はこの曲を刻み続けようと思います」と力強く宣言し、BOØWY時代の名曲「DREAMIN’」を会場全体と大合唱。「また会いましょう!」と笑顔で去っていった。


 6月22日にはキャリアを総括した究極のベストアルバムが予定されているほか、アニバーサリープロジェクト「8BEATのシルエット」シリーズは今後も続いていく。2016年は、これ以上ないほど精力的に活動する布袋の姿見られそうだ。(岡本明)