スーパーGT500クラス、そしてDTMドイツツーリングカー選手権で使用されている共通規定『クラス1』。現在、まだエンジンなどの部分で完全な統一には至っていないが、将来の統一に向け、5月に東京でSGT、DTMに参戦する日欧6社とGTA、ITRによる会議『ステアリング・コミッティ』が開催される予定など、まだ今後に向けた話し合いは続いている。
ファンにとってもぜひ見てみたいのが、GT500とDTMによる交流戦。これまでも何度か話は出ているが、もしエンジン規定が統一されたとしても、残る課題としてタイヤという問題が残っている。スーパーGTではマルチメイク、DTMではハンコックのワンメイクであり、当然競争があるマルチメイクであるスーパーGTの方が、高い性能を発揮している。
では、DTMにタイヤを供給しているハンコックの視点から見て、クラス1規定の統一についてどんな考えをもっているのだろうか。DTMでハンコックの広報代表を担当している、フェリックス・キンツァー代表に話を聞くことができた。
Q:DTMとスーパーGTとのレギュレーションの統一化に向け、両国間のイベントレースの計画もありますが、それにともなったタイヤの現状況について、ハンコックとしての見解をお聞かせください。
フェリックス・キンツァー(以下FK):DTMに参戦する3メーカーが、スーパーGTで使用されているタイヤをすでに取り寄せているだろうという情報は耳にしている。ただ、おそらくタイヤのサイズが違うので、DTMの実車走行テストはできないうえに、DTMではテストの機会がかなり厳格に決められているので、実質的にベンチ上でのデータ収集しかできていないと予想している。
Q:逆に、日本の自動車メーカーからDTMについての問い合わせはありましたか?
FK:現時点ではないよ。しかし、共通のイベントレースが開催されるとなれば、おそらく日本ではタイヤはフリー、ドイツではワンメイクで開催されるのではと思っている。ドイツでイベント開催が決定したら、日本の自動車メーカーから問い合わせが入るだろうね。
Q:スーパーGTにおいてのタイヤコンペティションの重要さや、役割についてはどう思われますか? また、DTMにも将来採用されるべきシステムなのでしょうか?
FK:DTMではコスト面から、日本のようにタイヤを自由化せず、あえてワンメイクを採用しているんだ。全24台が同じタイヤを装着し、平等な条件で戦うことに面白さは充分あると思っている。私はハンコックへ移籍する前にブリヂストンに長らく勤務していたこともあるから、日本のスーパーGTにおける“タイヤ開発戦争”のこともよく知っている。タイヤによってレースがかなり左右され、エキサイティングな展開になることもよく理解しているんだ。もちろん、日本で使用されているタイヤの情報は得ており、素晴らしいクオリティのものだということも知っているけど、DTMではタイヤレギュレーションを日本と同じ規定にすることは難しいだろう。
Q:ドイツの自動車メーカーが、今後スーパーGTへシリーズ参戦することは予想できますか?
FK:難しいだろう。ドイツメーカーはDTMのレギュレーションに対応するマシンを作ることや、数多くの会議で手いっぱいの状況で、サプライヤーの立場から見てもその多忙さが良く分かるくらいなんだ。ただ、もしも日本へ行くとするならば、現在DTMに参戦しているチームではなく、スーパーGT専用の別部隊を作り、DTMよりも縮小したチーム体制になるのではないかと予想している。
Q:今シーズンのDTM用タイヤについておうかがいします。昨年とコンパウンドなどの変更がありましたか?
FK:タイヤについてのさまざまな意見は、ドライバーはもちろんのこと、チームやワークスからも入ってきているけど、DTMではレギュレーション上で非常に厳格にタイヤについての規定が決められているので、昨年のタイヤと何ひとつ変更はできない。したがって昨年とまったく同じコンパウンドのタイヤで、改良も禁止されているんだ。
Q:今後のクラス1規定について、どうお考えでしょうか?
FK:DTMでもGT500でも2017年は全車が新しいモノコックを使い、来季からDTMではさらにホイールもワンメイクとなる。それにともないタイヤのコンパウンドやサイズも変更される可能性があるので、各メーカー、サプライヤーは、それに向けて今季のレースをしながら開発が始まることになる。今よりさらに多忙になるだろうね。以前はハンコックもGT300クラスにタイヤを供給していたこともあるけど、諸事情で撤退せざるを得なかった。もしも日独両国が本格的に交流戦を行うようになれば、ハンコックがGT500にタイヤを提供する日がくるのかもしれないね。